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2016年10月27日木曜日

「ミュージアム」 巴亮介 2013-2014 ★★★★★


「人気コミック実写化」として2016年秋の話題になっており、「ここ数年の面白い漫画とは何か?」と調べた際にもその名前が挙がってきていたので、「それならば」と手にしたみたが、「なるほど」となっとくしてしまうほどの衝撃作。

なかなかグロテスクなその内容から、恐らく一般的にうけているのかどうかは分からないが、物語の展開や人物像の作りこみは相当なものでありつつ、漫画だからこそできる常軌を逸した表現も助けて、もの凄いスピード感で読みきってしまう作品であり、3巻完結という潔さも非常に好感が持てる作品である。

「新世界より」「悪の教典」が描く様な、サイコパスという常識がまったく通じない異物が世界を壊していく中で起こるある種のカタルシス。ネットの登場によって欲望が拡張され、そして見えにくくなった現代だからこそ逆に不思議な現実味を帯びてしまうそんな世界を描いた見事な作品であろう。

2015年12月30日水曜日

PMQ元創方(Police Married Quarters) 2013 ★



MTRの上環駅からヴィクトリア・ピークに向かって歩いていくあたりは、かなり急勾配の坂に小さな建物がひしめく様にして建っている以下にも日本人が抱く香港のイメージが味わえる。

そんなエリアの中に、かつての警察宿舎を改修し、デザイナーの工房やショップ、レストランとして新たな商業施設として蘇った建物がかなり話題を呼んでいるということで、妻もいくつか店を見てみたいというので坂をトコトコ上って訪れることに。

PMQ元創方(Police Married Quarters) と呼ばれるこの建物は、坂に対して建つスラブタイプの建物の両端にトイレやキッチンなどの共有機能と階段が設置されており、その間は標準化された部屋となっていたようである。

地上とつながる下層部には洋食のレストランがはいっており、上階はアクセサリーやファッションのショップとなっているようである。東京でも良く見られるストックを利用し安い賃貸で若者に貸し出す中心部活性化運動の一部のようで、多くの若いデザイナーやショップ定員の姿が見える。

ざっと見ると、おしゃれっぽいかと気になって中に入ってみるが、よくよく見てみると結構似ている商品を置いていたり、それほどクオリティーが高いということではないようであるが、それでもかなりの値段をつけていながら、結構な人で賑わっているのに驚く。

それでもここが注目スポットとして海外の雑誌にも掲載されるところを見ても、「文化の砂漠」という言葉もあながち間違っていないのか・・・と思いながらここを後にする。







2013年8月15日木曜日

お世話になりたくない職業


世の中にはできることならお世話になりたくない人たちがいる。

その代表格は、警察、医者、やくざ、弁護士。

そういう職業の人は、世間が「できることなら関わりたくないな・・・」とあなたに対して思っているということを考慮にいれて、世の人と接するべきであると思う。

何気ない言葉一つでも、ネガティブなイメージを抱いている人にとっては、更に疑念が膨らむばかり。それを払拭すべく、余計なこともできるだけ丁寧に説明してあげることが相応しい。

では建築家はどうか?
世の中の建築家に対するイメージは一体どんなものか?

そう思って友人と話していると、「建築家で悪い人を見たことがない」という。
「では、悪かった人の職業はなんだった?」と聞くと。
「うーん、銀行員、金融関係、会計士」などと結構あがってくる。

確かに建築家になるためには、長い専門教育を受けることになる。その中で本当に実務に必要なことは教えればいいのだが、教えることなく、それよりも建築が社会の中でどういう意味を持つか?建築が社会を良くするにはどのようなことができるか?それでは、現在の社会の問題とは何か?なんていう社会性を嫌と言うほど聞かされるからであり、そういう考え方が建築をやっていく上で大切なんだと刷り込まれる。

そして社会にでたら、人生のある種の成功を空間と言う形に変換しようとするクライアントとバチバチやりながらも接していく。決して人生に疲れて、出口が見えなくてどうしようもなくなっている人と接することもなく、またお金という直接的な価値を追求するようなタイプの人間に接する機会も少ない。

ある意味温室育ちの職業人ということになるのだろうが、そこから培養されるのは、「都市空間を如何によくすることができるか?」
「この街が100年先も生き生きと人々をさせられるためにはどうしたらよいか?」
「世界的なエネルギーの問題に対して、建築が今何をすべきか?」
なんていう問題を日々考えながら生きていくことになる。

もちろんその中には、「如何に自分が有名になるために、お金を稼ぐために、どのように振舞ったらいいか?」を考えて狡賢く生きる建築家もいるが、比較的少数派であるだろうと思われる。

しかしそんな純朴な建築家は、狡猾な他の職業に比べたら社会的報酬は世のイメージに比べ遥かに少なくなるのも事実。それでも「お世話になりたい職業」としていられることを喜びと感じながら生きていくのが大切なのだと再認識することを経験する一日。

2013年7月27日土曜日

「闇の底」 薬丸岳 2009 ★★

人が生きる社会の秩序維持と当事者になった本人の感情との葛藤や矛盾を抉るように描きだす著者の作風。前作では、「天使のナイフ」で更正を目的とするか、大人同様に刑罰の対象にするかで揺れ動く「少年法」と少年犯罪に光を当てた。

そして本作で光が当てられたのは、ネットの普及に比例するように留まるところを知らない「小児性犯罪」。児童ポルノなどに対する規制は進められるが、それでも日常的に報道されるようになった子供に対する暴力や性的虐待。

子供への性犯罪が発生するたびに、その抑止策としてかつてのフランスの首切り処刑人の名前からとられた「サムソン」と自らを呼ぶ男が、かつて性犯罪を起こした人間を一人ずつ殺害し、その映像を警察やメディアに送りつけてくる。その恐怖による抑制。

私人が人を裁くという法治国家では許されない行為に関わらず、一定の抑止力を発揮し始めるサムソン効果。そしてそれが法的には悪だと分かりながらも、市民の心の中では、「それでもこれで醜悪な犯罪が減るのであれば、それはそれでいいのかも・・・」という葛藤。

それに対して置かれるのは、法治国家をならしめる警察組織。犯罪者を逮捕することはできても、警察は犯罪を止められないじゃないかという葛藤。そしてその警察の中でサムソンを追う立場に置かれるのは、自らもかつて妹を児童性犯罪の被害者として亡くしている長瀬。

前作同様、作者はこの一般論と感情論の操作が非常に巧み。画面の外から見ている立場なら迷うことなくいえる意見が、自らが本当にその立場に立たされたら、一体どんな感情に晒されるのか?

デスノートの「キラ」が行う裁き。一定の正義に乗っ取って行われているその行為によって、社会にある種の秩序がもたらされたとしても、それは私人である限りにおいて、大量殺人であることに変わりにはなく、それが今作同様に普遍の一般論と感情論を揺り動かすからこそあれほど受け入れられたというのは理解に難くない。

ネットの登場によって、私人による感情に突き動かされた裁きがより容易になっていく世界。それだからこそ、より守る方向に振れていくだろうと想像されるかつての犯罪者の人権。「更正」という決して外からは真実をみることができない人の心。

だからこそ、今後より難しい問題が出てくると想像されるこの問題。

人を殺したらなぜいけないのか?
では、あなたは愛する娘が殺されたらどうするか?
その根本的な答えを子供にどう教えていくのか?
自分は司法の捌きを受けると分かりつつも、それでもその犯人を殺害する
という人に対してどう向き合うのか?

うらみは恨みを生むだけであるのは間違いなく、それは社会に対してなんの利益を生み出さない。それならば被害者遺族が納得できる刑罰をいかに更新していくのか。深い深い人間の心の闇の底を見せられた気がする一冊である。

2013年6月12日水曜日

「素行調査官」 笹本稜平 2011 ★

ダブル主役かのような小松刑事の視点から物語が始まる。管轄内で発生した殺人事件。その現場に一番に到着し見つけた不審な名刺入れ。その裏に見え隠れする、警察トップの不祥事の臭い。

一方、勤めていた探偵事務所が倒産し、参加したクラス会で再会した警察官僚になっている入江よりリクルートされて警視庁監察係という、警察内部の不祥事を取り締まる部署への就職が決まった本郷。

日本でビジネスを展開する美人中国人経営者。殺されたその妹。中国人経営者と不倫の関係を続ける公安刑事。その裏の見え隠れする蛇頭の姿。そして警察官僚の出世争いと様々な謀略。

ハードボイルドを書かせたら横に出るものがいない大好きな作者だが、警察モノと言う使い古された枠組みの中で、更に期待に応えるような物語になったかといえば疑問符が残るような内容で、大きなトリックを無しにクライマックスを迎える一作。

やはり海か山という、自然の中で苦闘する男を書き続けてほしいと願わずにいれれない。

2012年11月10日土曜日

「銀座ブルース」 柴田哲孝 2009 ★



ワイルドな作者の作風が好きで、今まで何冊か読んできたが、どうにもこの一冊は過去の作品からの継ぎ接ぎだらけの印象で残念である。

「下山事件」をかすめながら、逞しくあった戦後の混乱期の日本に置いて、最も活気を呈していたであろう銀座。そこを我が物顔で闊歩するGHQの米兵達と、彼らに群がり生きていく女達。

街全体が持っていたエネルギーが目に見えるかのような時代。現代の日本からは羨ましく映るであろうその風景。

女・金・力。

生きることの目的が明確であった時代に生きる男と女。

それはいいのだが、昨今のワイルドな時代の波に流されて、UMAシリーズの様なブレない軸が見つからないうちに書いてしまったのだろうと想像せずにいられない一作。



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/Ⅰ 銀座ブルース
/Ⅱ 殺人鬼
/Ⅲ 青いダイヤモンド
/Ⅳ 帝銀事件
/Ⅴ 尾行
/Ⅵ 国鉄総裁変死事件
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