2017年8月20日日曜日

月の絵 8月 ブドウ


馴染みのギャラリーでプレゼントにといただいたオーバルタイプのフォトフレーム。以前購入した円形のものには季節の花の絵を描いて一年の環をつなげたので、それとは少し違った、季節ごとの旬が感じられるものを入れていこうと頭を巡らせていたら、あっという間に一年も半分以上が過ぎてしまい、焦るようにして取り掛かったのは、瑞々しいブドウ。

絵を描くことのよいところは、描いている間は他の事を何も考えなくなること。ストレスに囲まれる現代社会における、相当有効な事項防衛策ではと思っている。

流石に円形の時よりは上達している様子で、同色の色鉛筆でも濃さを変えて濃淡をつけて一人悦にはいり、早速壁にかけて、今日の夕飯のおやつにとブドウを買出しに向かうことにする。




2017年8月12日土曜日

「ルーム」 レニー・アブラハムソン 2015 ★★


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スタッフ
監督: レニー・エイブラハムソン(Lenny Abrahamson)
原題: Room
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スタッフ
ジョイ・ニューサム(ママ) : ブリー・ラーソン(Brie Larson)
ジャック : ジェイコブ・トレンブレイ
ナンシー・ニューサム、ジャックの実の祖母 : ジョアン・アレン(Joan Allen)
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オーストリアで実際に起こった父と娘の間の監禁事件を元にしてかかれた小説の実写化。日本でも新潟で同様な事件が起こったことは記憶に新しいが、関わるすべての人を傷つけ、観るものにどうしようもない気持ちにさせる、何とも痛ましい事件である。

ある男の暴力によって天窓一つしかない外界と隔離された部屋の監禁され続ける一人の女性。その監禁生活の中で、妊娠をし産み落とした息子は、その部屋が世界のすべてとして成長していく。

部屋の中で行われる母と息子のつつましい生活。そこに時折訪れる男。シングルマザーと荒っぽいボーイフレンドなのかと思ってしまう前半部分。そこにひたひたと忍び寄るようにして感じられる違和感。それが監禁された部屋であること。そして息子が監禁生活の中で生まれ、世界を知らずに育つという事実が徐々に顔を出してくる。

監禁から脱出する部分でピークに達するのかと思えば、本質はその後。長期の監禁生活から生きて戻ってきた娘と新たに現れたその息子に対して、初めは喜びで迎える家族が徐々にどう接していいのかという戸惑いを感じだす。メディアや社会は、特殊な時間を過ごしてきた親子に対し、時に容赦のない言葉を投げかける。

そして親子自身もまた、平常な環境に戻ってきたにも関わらず、以上であったはずのあの「部屋」で過ごした時間が、如何に自分たちにとって日常となっていたのかを、徐々に認識し、そしてそれを乗り越えようと葛藤し、ぶつかりながらも二人で手をとりながら前えと向かっていく。

やるせないほどつらい映画であるからこそ、多くの人が観る事で二度とこのような事件が起こらないことを期待するだけである。






2017年8月8日火曜日

「沖縄の歴史と文化」 外間守善 1986 ★★


プロジェクトがきっかけで、今までまったく縁の無かった場所に関わることができることは建築というものを生業にしているものとしての喜びであると同時に、その土地の歴史や文化、そして現在の人々の生活を少しでも理解することが、少しでも場所に根付く建築を作るための基礎であり、建築家としての責任でもあるだろう。

そういう訳で縁ができそうな沖縄の地。米軍基地や観光地としての側面だけではなく、日本の最南端として独特の文化を培ってきたその歴史を文化を少しでも基礎知識として持っておくために何冊か手にとった中の一冊。

様々な場所の地名として残るグスクの意味や、琉球王国時代と明などの周辺諸国との関係、そして薩摩藩による侵攻と江戸幕府による取り込み政策、戦場となった近代と、戦後における統治時代と本土返還後。

本土における日本史という教育ではまったく捉えきれないその歴史は、やはり馴染みの無い言葉が多く、改めて日本人として知っておくべき事なのだと思わされる。

オモロや御嶽(ウタキ)など、信仰や世界観などもその起源や流れを説明し、如何に日本の中でも独特の文化を形成してきたのか、そして現在にどう残されているのかというのが見て取れると同時に、このような土地に染み付いた文化というのは、融合政策によって簡単に消し去られるものではなく、また多中心に移りつつある現代においてこそ、じっくりと見つけなおし、伝承していくことが大切なのだろうと思わされる。

ぜひともこの知識を元に、次回はより深く、沖縄の辿ってきた時間や歴史を感じられるような場所に足を運び、現地の人の話を聞くことができればと思わずにいられない。

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目次
序章 太平洋文化圏の中の沖縄
沖縄文化のマクロ的視野
従来の沖縄文化系統論

第一章 沖縄歴史のあゆみ
1.先史沖縄
 旧石器時代
 新石器時代(貝塚時代)
 グスク時代(前半)

2.古琉球
 グスク時代(後半)
 第一尚氏時代

3.海外交易の発展
 明
 南方
 日本
 朝鮮
 16c以降の貿易の衰退

4.近世琉球
 ・第二尚氏時代(後期)

5.近代沖縄
 琉球処分(明治12年)
 奈良原県政
 そてつ地獄(大正末~昭和初め)
 沖縄戦

6.戦後沖縄
 米軍統治時代

第二章 沖縄の言語と文化
1.日本語の中の沖縄語
 沖縄語の歴史
 沖縄語の特徴的音韻変化

2.沖縄文学の全体像
 古代文学
 近代文学
 古代文学の分類

3.オモロとウタの世界
 オモロ
 琉歌(ウタ)

4.神観念と世界観
 創世神話
 『おもろさうし』にみる神観念と世界観
   (1)ニライ・カナイ
   (2)アマミヤ・シネリヤ
   (3)オボツ・カグラ
 祭祀と年中行事
   (1)御嶽
   (2)年中行事
 各地の祭り
   (1)シヌグ
   (2)ウンジャミ
   (3)イザイホー
   (4)祖神祭り
   (5)プーリィ(豊年祭)
   (6)アカマタ・クロマタ
 民俗芸能
   (1)ウスデーク
   (2)エイサー
   (3)クイチャー
   (4)巻踊
   (5)アンガマ
   (6)京太郎

5.宮廷芸能
 古典音楽
 古典舞踊
 古典劇(組踊)

6.沖縄の美とかたち
 美学
 美術

第三章 神歌にみる宮古・八重山の歴史
1.宮古島の歴史と英雄たち
 開闢伝説
 先史時代~古代
 宮古の英雄たち
 14c末~15cの宮古と八重山
 王府の宮古支配と人頭税

2.八重山の歴史と英雄たち
 創世の説話~先史時代
 八重山の英雄たち
 八重山統治と人頭税
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外間守善

「さようなら、オレンジ」 岩城けい 2015 ★★★


第29回(2013年)太宰治賞受賞
第150回(2013年下半期)芥川賞候補作 (受賞小山田浩子「穴」)

ということで数年前に随分メディアで紹介されていた一冊。オーストラリア在住の専業主婦である著者の私小説的な物語の様であったが気になって購入し、少しずつ読み進めた一冊をやっと読みきる。

オーストリアの田舎町に住むアフリカからの難民である女性と、夫とともに移住してきた日本人女性を中心に、「母国語ではない言葉で生活が行われる場所で生きるとは」というテーマを主題に淡々と物語りは進んでいく。

恐らく、様々な理由で海外で生活をする日本人は現在世界中に数えられないほどいるだろう。望んでなのか、それともそうでなくとも、自分がその言葉以外で思考し教育を受けてきたことが、言葉という大きな壁のせいで自らのアイデンティティーを揺さぶるような経験は、誰もが必ず通ってくる道であろう。

外国に旅行に行った際に不自由なくやりとりができればいい。
語学留学などで、同じように第三国から来た人々と会話ができればいい。
仕事でやりとりができるくらい喋りたい。

求めるレベルと、そこに達するまでの厳しさは、人によってそれぞれだ。しかし、その言葉の環境で生活していれば、時間とともに上達するというのはまったくの希望的観測で、レベルを上げるためにはどうしても、学習と実践が必要だということも、外に出たすべての人が、どこかでぶち当たる事実。

それが「英語」という、どこの国でも外国語として真っ先に習い、そして成長とともに教育課程の中で触れてきた言語ではなく、それ以外の言語であるならなおさらのこと。

恐らく、オーストラリアに移り住み、20年近い時間をそこで過ごしたという著者は、きっと外国語と母国語、いつになってもネイティブの様には言葉を使いこなせない現実、その国の言葉でその国の人と交流しても、母国語で思考する自分の感情との間で必ず発生するギャップなど、「言葉」に派生する様々な葛藤に丁寧に向き合って生きてきたのだろうと想像する。

村上春樹の「遠い太鼓」や「やがて哀しき外国語」もまた、日本語で育った人々が、海外で生活する上でどこまでいっても付き纏うどうしようもない感情をうまく表現した本であったが、グローバル化を終え、国境を越えて生活することが人類史上かつて無いほど活発に行われる現代。その中でオーストラリア、日本人、アフリカ難民を「言葉」で紡ぎ、人が生きるとはどういうことか、人と交流するために言葉は何を助けるのかを丁寧に描いた一冊ではないかと思う。

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第29回(2013年)太宰治賞受賞
第150回(2013年下半期)芥川賞候補作
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岩城けい

「ライフ」 ダニエル・エスピノーサ 2017 ★★★

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スタッフ
監督: ダニエル・エスピノーサ(Daniel Espinosa)
原題: Life
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スタッフ
デビッド・ジョーダン : ジェイク・ギレンホール(Jake Gyllenhaal)
ミランダ・ノース : レベッカ・ファーガソン(Rebecca Ferguson) 
ローリー・アダムス : ライアン・レイノルズ
ショウ・ムラカミ :  真田広之
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出発が遅れに遅れた飛行機の中。「少しでも睡眠を」と思いつつも、不安定な天候のせいで揺れが激しく、とてもじゃなく寝れないために折角だからと観た一本。

「遠い空の向こうに(October Sky)」や「ドニー・ダーコ(Donnie Darko)」で青年を演じていたジェイク・ギレンホールがすっかりいい歳の役が似合うようになったと思うと同時、自分もそれだけ歳をとったんだと理解する。

ミランダ演じるレベッカ・ファーガソン(Rebecca Ferguson) は「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション(Mission: Impossible – Rogue Nation)」や「マダム・フローレンス! 夢見るふたり(Florence Foster Jenkins)」で特徴的で妖艶な演技を見せていた女優かと改めて思い出す。


今年はエイリアン系映画が幾つかリリースされるので、どのような新しい世界観を見ることができるのかと思っていたが、ISSと呼ばれる国際宇宙ステーションで火星から持ち帰った土壌サンプルの中に、未知の生命体の細胞を発見する。

厳重に隔離されたラボ内にて様々な培養液や刺激を与えて何かしらの反応を示すか、地球外生命体への人類の希望を持ちながらけ研究を続ける6名の宇宙飛行士。その生命体があることをきっかけに成長をはじめ、驚異的な学習能力と運動能力を発揮し、次々と飛行士たちを圧倒的な力で襲い始める。

その生命体の描き方が、今までのSF映画で描かれたような既存の姿からはかなりかけ離れ、微生物と昆虫を足したような姿は、自分たちの世界観とはまったくことなりコミュニケーションが取れない圧倒的な敵。

「宇宙少年」でも描かれるISSの空間が、未知の生物に追われる閉鎖空間へと変貌する恐怖はなかなかのものであるが、何年にも渡る厳しい訓練を経て選ばれてきたエリート中のエリートである宇宙飛行士たちが、かなりパニックに陥って短絡的な行動を取るのはいかがなものかと思いつつも、タイトルどおり「ライフ(生命)」とは何かを突きつける。

つっこみどころは数々あるが、限られた出演者にCGを多用し、恐らく制作費としては他のSF映画に比べて圧倒的に少ないと思われる中、それでも地球外生命体の可能性として今までにない姿を描いたのは観る価値のある一本ではないだろうか。

ダニエル・エスピノーサ(Daniel Espinosa)

レベッカ・ファーガソン(Rebecca Ferguson) 








ジェイク・ギレンホール(Jake Gyllenhaal)