2009年9月29日火曜日

「華栄の丘」 宮城谷昌光 2003 ★★★

相変わらずなんともマイナーな主人公である。

春秋時代という孔子を始め多くの才能を世に送り出したカラフルな時代にも関わらず著者がスポットライトを当てるのは、歴史の中で舞台の中心にいた人物の隣に立って歴史が作られるのを手助けしてきた人々。なんとも謙虚なその姿。

今回も急にスポットライトを当てられたのは春秋時代の決して大国ではない、「宋」の宰相として活躍した「華元」。出目が特徴ななんとも可愛らしい姿の主人公は飄々と時代の中を駆け抜け、北の晋に南の楚という大国に囲まれながらも「負けることで最終的に勝つ」ことに国の存続を成し遂げた逸材。

現在の河南省を中心とし、商丘を首都として斉・晋・秦・魯などとともに、春秋時代の重要な役割を与えれれた国・宋。

「沙中の回廊」で描かれた同時代の隣国・晋。その国で名君・重耳に見出され、同じく宰相まで上り詰め、カラフルな春秋時代の1ページを描き出した士会同様、約3000年もの前の時代に生きた人々の息遣いが聞こえてきそうな著者の力量に圧倒される一冊である。