2013年2月10日日曜日

石神井アパートメント SANAA ★


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所在地  東京都練馬区下石神井6
設計   SANAA
竣工   2010
機能   集合住宅
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できることなら藤本壮介の新しくできた住宅も見にいき、この石神井アパートメントと揃って、建築を要素に還元していき限りなく透明に近づけていく手法が、「住まう場所」として成立するのかどうか?写真では写らない生の生活の匂いを感じに、本当に人が、家族が豊かな空間として生きることができるのか?を感じるためにむかった本日の散策の一つのピークでもあったこの作品。

一つはこのような特殊性を持った空間は、集合住宅という標準形を繰り返すタイプの建築としてはなかなか矛盾をはらんでしまうことがよくよく理解できる。恐らく相当の心意気を持ったディベロッパーでなければ、このようなプロジェクトを実現させることはできないだろうし、彼らの建築に対する理解もかなり高いものだったはずである。がしかし、賃貸にしても分譲にしても、ある程度のスケールメリットの中でないと実現しない開発であったと思われるし、その為に数棟が連なってある程度の風景もしくは街並みを構成する必要があったのかと思われる。

ソリッドなボリューム部分は閉じられた壁面ではなく、すべてがガラス面で構成され、ブラインドが下りてなければプライバシーなど存在しない超透過性のある構成。恐らくペアガラスを使用していると思うが、それにしても室内熱環境はどうなっているのだろうと思わずにいられない。

ソリッドなボリュームの横に併設された細い柱と薄いデッキで作られるテラスと駐車場スペースは外に向かってこれでもかと開放されている。「暖かい日にはここで朝食を食べたり、椅子を持ってきて読書をしたり、友人が集まってパーティーやBBQをしたり」と、恐らく様々な想像があってのこのスペースだと思われる。

街自体が変わらない中、自分達だけが理念を持って新しいライフスタイルを実践するという、聞こえのよいマニフェストは建築家なら誰でも信じたいところだが、現実に東京の練馬というフィジカルな生活の場として、隣近所に住んでいる隣人がすべて知り合いではない東京の生活では、最初はその理念に賛同して越してきた人たちが、スケスケの空間でプライバシーを剥ぎ取られ、なおかつナルシシズムではなく、真の意味で自らの生活を外部に開放し、外部の東京を取り込みながら生活するということが、どれほど可能なのか?

それはすべて下ろされていたブラインドが十分に物語っていると思われるし、熱環境を考えるとその後ろにあると思われるカーテンなどの奥でひっそりと外部を歩く人の気配を感じながら生きる人々に思いを馳せる。










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