2014年2月5日水曜日

境港シンフォニーガーデン 高松伸 1994 ★★


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所在地  鳥取県境港市中野町
設計   高松伸
竣工   1994
機能   コンサートホール
構造   RC造、SRC造、一部S造
規模   地下1階 地上2階
敷地面積 15,604㎡
建築面積 2,227㎡
延床面積 2,469㎡
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本日予定していた目的地を終了し、余りの寒さにさっさと宿に帰って温泉で身体を温めたいと思っていたところ、右手になんだか雰囲気のよさげな建築が見えてくる。

リストに入っていないが、これは明らかに建築家が作った公共性のある建物に違いないと思いながらも、その寒さと天秤にかけながら、一瞬の躊躇の末にハンドルを右に切り、駐車場に車を入れて少し見学することに。

「このコンクリートの壁の使い方と円などの幾何学の使い方からすると安藤忠雄高松伸か・・・」と考えながらも、激しくなる一方の雪に足元を取られながら何とか中庭まで侵入。建物自体は閉まっていたので入れなかったが、規模も建物の佇まいもこのフラットな地形の敷地に非常にマッチしているように思える。

まさかとは思って調べると、やはり高松伸設計によるコンサートホールだという。内部には客席数400席を備えるクラシック専用のホールがあり、そのホールと同様に重視されて設計されたのがこのコンクリートの壁で囲われた庭園だという。

1995年と言うので、「失われた10年」に突入している日本経済であるが、どうしてこんな贅沢な施設がこの境港という小さな自治体にできているかというと、境港出身の奥田あき子氏が「故郷・境港市の文化振興に役立ててほしい」といことで10億円を寄付されたことで建設ができたと言う事だが、ネットで調べても、奥田あき子氏がどの様な方なのかは出てこなかったが、成功の暁に故郷に恩返しという素晴らしい理念である。

地方都市にオペラハウスが無いのは、その膨大な維持費用や運営費用を分担負担する多くの文化市民が必要となり、彼らが住み、そして費用を賄えるだけの人口に達するのは必然的に小数の大都市となるからである。

そう考えるとコンサートホールもしかり。立派な施設を建てても、それを維持し、レベルの高いイベントを続けていくには優秀な運営スタッフと十分な費用が必要となる。それを行政だけで維持していくのはもちろん無理なので、必然的にイベントに通い費用をチケット代として分担負担する文化性のある市民が必要になる。

400席という決して小さくは無いホールを一年間運営していくための費用を分担負担していくだけの、十分な文化性の高い人口がこの小さな境港市にどれだけいるのかどうか?そして閉まっている様子の施設を見ると、ひょっとしてかなり限定的にイベントが開催するなどの方式をとっているのかなどと思いながら、縮小する日本の地方都市における文化施設のあり方が今後どうなっていくのかと思いを馳せながら宿に向かう事にする。






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