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2016年3月5日土曜日

「中高年ブラック派遣 人材派遣業界の闇」 中沢彰吾 2015 ★


電車の中、20代後半と思わしきスーツ姿の若い男女。上司の男性に部下の女性という感じ。身に着けているものは年齢に比べたら少し上等なモノのようだが、なんだか少しチャラチャラした感じ。一体どんな職業なのかと想像を広げていたら、男性がおもむろに電話を取り出し、「終了報告のメールさせとけよ」と指示の電話。そして読んだこの本。なるほど、ああいう彼らが派遣会社の若い社員で、中高年に高圧的に指示を与えては高収入を得ているのかとピンとくる。

つい先日のNHKの「クローズアップ現代|増える“正社員ゼロ職場”~公共サービスを担う現場で何が」でも、この数年で、今までは「公」の機関としてかなり好待遇で正社員として働いていた京都の保育士が、業務を外部の運営会社に委託するに伴い、その運営会社との再契約という契約の切り替えが行われ、今までの半分ほどの給与になったり雇い止めとなったりした話を報じていたばかり。

どこまでが過剰な好待遇で、競争に晒される市場原理から隔離された利権と呼ばれるようなものなのかは難しいところであるが、できるだけ組織をスリム化し、経費を削減して利益を上げていくことを迫られた企業にとっては、固定費として毎月のしかかる人件費は最も手をつけたいところである。だが、同時に従業員の生活と、会社のサービスに直結するところでもあるので、細心の注意を払って精査して「仕分け」していくこと、これはグローバル化し、どんどんと効率という波が押し寄せる現代においては、どうしても避けては通れないことも事実。

そんな中でこの10年近く、長きにわたって問題とされてきた格差問題と非正規労働者の問題。その問題の中にも既に10年以上の時間が流れたためにある種の歴史が生まれており、その概要を知ることと、この問題の現在の状況を把握するために手にした一冊。


第3章 人材派遣の危険な落とし穴―「もう来るなよ。てめえみてえなじじい、いらねえから」の「人材派遣が急拡大した本当のワケ」によれば、1995年に日経連が発表した「新時代の日本的経営」で、今後は働き手を、「長期蓄積能力活用型グループ(正社員の終身雇用)」、「高度専門能力活用型グループ(専門的な能力を要する働き手を期間だけ雇う)」、「雇用柔軟型グループ(パート、派遣労働者などの低賃金不安定労働者)」の三種に分けて、労働力を効率的に使い企業収益を高めようと宣言。つまり、今までの大量に従業員を抱え、組織内部で重い負担を抱えつつやりくりをするのではなく、より効率的に外部の人材も借りながらやりくりをしていきますということである。

しかしそれには「40代以上の社員の削減」という長年の慣行である終身雇用が壁になり困難であった。そこに登場したのが人材派遣業界で、企業が受けていた契約社員やパート労働者の賃金差別訴訟の頻発した状況を受け、労働者を本来の職場から切り離して人材派遣会社が雇用すると言う形にすれば、面倒な訴訟は回避でき、人事責任も負わないという新しい理論を提示する。企業としては「使えない社員」や「お荷物となった社員」に対し、自分たちで会社を辞めてもらう話し合いをすることなく、企業に人減らし合理化を提案するコンサルタントにアウトソーシングし、同時に足りなくなった労働力は派遣会社を通して補充することになる。

リーマンショックによる年越し派遣村など、社会がその問題を現実問題として受け止めるきっかけになったのは2008年。その当時を含め、「2010年頃までの第二時代の人材派遣会社に食い物にされた犠牲者は20代、30代の若年労働者が多かった」という。「だが、2015年の今は違う。2000万人を超えた非正規労働者のうち、6割以上が40代以上の中高年だ」と、5年を経た現在はその様相が変わり、30代だった派遣労働者が正社員になることなく、そのまま派遣労働者として40代に突入したのと、今までは正社員として働いていたがその身分を失って派遣として働かざるを得なくなった40代から50代、そして退職後の生活の為に収入を得るために仕事を求めるがやはり派遣の仕事しか得られない高齢者。これらの人がこの5年の間に数字を伸ばしたのだと想像できる。

「自己責任」だとか、「時代の流れだ」とか言ってしまうのは容易であるが、これが現在の日本の風景であり、多くの人が望んでその状況にいるのではなく、より安定し高収入な正社員として社会に関わりたいと望んでいるが、それがかなわない状況があること。それが「二極化」する世界の中で技能を持ってそれを正当に評価してもらえ、見合った報酬を払ってもらえる職場を見つけられる人はいいが、それ以外の人は生きていくためにこのような決して望ましいとは言えない労働状態に定常しなければいけない。これが今後も当たり前の風景として定着していくのが望ましいのか否か。それを考え、決めていかなければいけない時代に入ってきたのだと良く分かる一冊である。

以下本文より。

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―奴隷労働の現場
人材派遣は「使いたい人数を安価に、必要最低限の時間だけ単純労働に従事させ、人事責任を負わない」という派遣先企業にとって、すこぶる好都合な制度になっている

第1章 人材派遣という名の「人間キャッチボール」
特定労働者派遣と一般労働者派遣
一般派遣のうち労働期間が30日に満たない短期派遣を日雇い派遣という

/政府・財界による労働者の流動化政策
1985年に労働者派遣法が成立

/日雇い派遣でも有給休暇をもらえる
派遣社員は派遣先の福利厚生施設を利用できるのか否か
深夜食を食べようとしたら食堂を使わせてもらえず、外で食べろと追い出された。飲み物も自販機に格安の値段が設定されていたが、これは社員の為に会社が補助している者だから派遣は外のコンビニで買えと指示された

/人材派遣会社20代社員の異常な高収入
合理化を指南するコンサルタント
要するに企業に入り込んで組織改編と人減らしを促す事業

第2章 人材派遣が生んだ奴隷労働の職場
/未登録でも派遣する人材派遣会社がある
人材派遣の要でもあるマージン率の公開を義務付けた。かつては一部で50%にも達していたピンハネ率は30%程度に抑えられている
人材派遣会社にとってピンハネだけが問題だから、子供でも外国人でも誰でもいいのだろう

/就業規則で「おまえ、態度悪いからクビ」
派遣先で他の労働者と会話してはいけません
複数の人材派遣会社が一つの職場に労働者を派遣
派遣先との契約時期や派遣人数、ピンハネ率の違いなどで賃金に差
派遣先への移動に際しての交通費はお支払できません

/就業条件外の過酷負担
横浜市 問題の職権は市内を走る循環バスの乗客の誘導員
トリエンナーレ
/中高年は美術品が似合わない?
広域に広がったイベントであるにもかかわらず、該当に道案内のガイドが全く配置していなかった
頭を使うガイドとなると、自給は2000円に跳ね上がる

/二重帳簿ならぬ二重マニュアル
トリエンナーレのブラックバイトリポート

/ノロウイルス感染者に「食品工場に行け!」
大手製パン会社のクリスマスケーキ

/官公庁と自治体、外郭団体でも非正規労働が拡大
官庁のそれまでの随意契約方式による民間事業委託を否定し、競争入札制度を採用
図書館司書、役所の各窓口、公立学校の教職員、カウンセラー、消費生活相談員、博物館や大ホールの運営スタッフなどが続々と外部の民間業者に委託され、同時に人材派遣会社が低賃金労働者を送り込む仕組みができあがった
最低価格落札方式の場合、提案企業の業務の質、労働者の待遇など事業の中身が問われることは無い

/不正の温床になりかねない危うさ
人材派遣会社が提案する「コストダウン」
知恵が無い。単に派遣労働者の賃金と待遇を最低のレベルに設定するだけ

/恐怖をふりまく正規社員たち
正社員「感情を抑える」「相手の立場を思いやる」といった社会人として必要な節度が欠落している

第4章 悪質な人材派遣会社を一掃せよ
―「二度と仕事紹介してもらえないよ。かわいそう」
/拡大する一方の非正規労働者
雇用者数を押し上げたのは123万人増えた非正規雇用
アルバイト、パート、派遣社員などの日正規社員は2014年 2000万人を超えて2012万人
中高年は45-54歳 387万人
65歳以上141万人
/週5日終夜勤務/従順な派遣労働者
いったん正社員の座から落ちてしまったら、もう絶対に元には戻れないのが日本という国

/人材派遣を推進する識者たち
人材派遣を活用するのは、派遣スタッフの奴隷制、使い捨てに魅力があるから
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■目次
はじめに
―奴隷労働の現場

第1章 人材派遣という名の「人間キャッチボール」
―「いい年して、どうして人並みのことができないんだ!?」
/迷走する労働行政
/元祖はドヤ街の手配師
/政府・財界による労働者の流動化政策
/行政処分された第二世代人材派遣
/衰退と復活の第三世代
/労働内容の説明は虚偽
/派遣はエレベータ使用禁止
/監禁労働のタコ部屋
/悪意の果ての無駄
/人材派遣会社のシステム
/派遣労働者は保護されているか
/派遣元責任者と派遣先責任者
/日雇い派遣でも有給休暇をもらえる
/派遣労働者使い捨ての「待機」
/派遣先責任者によるひどい仕打ち
/一日中倉庫で重さ20キロのスーツケース運び
/人材派遣会社20代社員の異常な高収入
/求人サイトの矜持と責任
/ヤラセだった英会話通勤バス
/日雇い派遣の原則禁止問題
/近年稀に見る悪法
/中高年が職に就けない現実
/「年齢制限なし」の「裏メッセージ」
/「三種の辛技」
/いい加減な「人間キャッチボール」
/労働基準法に刃向う労働者派遣法

第2章 人材派遣が生んだ奴隷労働の職場
/極限まで単純化された派遣労働
/巨大ダンボール箱と格闘した中高年の「善意」
/人材派遣の定番「ピッキング」で実はトラブル続出
/派遣労働者に損害金を請求
/カゴテナーと接触して負傷
/出勤確認連絡
/マニュアルによる効率化は本当か
/予定調和のストーリー
/人材派遣会社が紀勢線を張ったワケ
/マニュアルは金科玉条
/未登録でも派遣する人材派遣会社がある
/就業規則で「おまえ、態度悪いからクビ」
/現代の派遣切り「お父さん、酒臭いよ」
/違法な人材派遣会社との二日間の攻防
/派遣労働者の差別待遇
/困難な業務でも派遣が担当
/就業条件外の過酷負担
/私たちは税金泥棒ではありません
/中高年は美術品が似合わない?
/二重帳簿ならぬ二重マニュアル
/テレビ局派遣で逆立ち強制
/ノロウイルス感染者に「食品工場に行け!」
/人材派遣会社の女性社員が必死なワケ
/東南被害も泣き寝入りの派遣労働者
/疑惑の「登録費」

第3章 人材派遣の危険な落とし穴
―「もう来るなよ。てめえみてえなじじい、いらねえから」
/人材派遣が急拡大した本当のワケ
/官公庁と自治体、外郭団体でも非正規労働が拡大
/時給2000円が900円に
/研修日当なし、交通費なし、最低賃金以下
/人材派遣会社の狡猾な手口
/人材派遣の安値受注が生んだトラブル
/人材を集められない人材派遣会社
/試験監督が逃亡しちゃった
/不正の温床になりかねない危うさ
/給与踏み倒し計画逃散?
/斜塔は元CAで名古屋財界のアイドル
/恐怖をふりまく正規社員たち
/事件の現場は巨大モール
/混乱する運営の尻拭い
/繰返される監視役の無意味な指導
/踏みにじられた買い物客の夢
/無知な派遣先責任者との攻防
/強要、脅迫、監禁
/労働者の救済要請を無視
/奴隷派遣は本当にお得なのか?
/熟練者と素人の差
/無責任体質
/人材派遣活用のリスク
/人材派遣会社に頼ったら事業が行き詰った
/カタカナ肩書き乱発のハレーション
/イベントでの日雇い派遣は業務上横領?
/除夜の鐘が鳴る頃、てんやわんやの大騒ぎ
/若者と中高年との格差
/意気消沈する派遣先責任者
/企業の稼ぐ力を削ぐ無責任人事

第4章 悪質な人材派遣会社を一掃せよ
―「二度と仕事紹介してもらえないよ。かわいそう」
/拡大する一方の非正規労働者
/週5日終夜勤務/従順な派遣労働者
/中高年を殺すな
/従順な派遣労働者
/権利意識に欠ける中高年労働者
/労働環境によるワナ
/現実を直視してほしい
/人材派遣を推進する識者たち
/重要な情報をネグレクト
/欠けている労働者保護の視点
/人材派遣と景気浮揚
/副社長が帰っちゃった!欧州の労働事情
/日本にスウェーデン流を持ち込んだ企業
/欧米先進国比較 ドイツ・米国・フランス

あとがき―すぐにできる改善策の提案
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中沢彰吾

2014年5月1日木曜日

クローズアップ現代 「極点社会~新たな人口減少クライシス~」

久々にゾッとするクローズアップ現代。やはりネットでもかなり話題になっているようであるが、一体何処に向かってしまうのかこの国の未来は・・・

縮小社会が叫ばれて久しい現代日本。地方では限界集落と呼ばれる高齢者だけが取り残された自立できない集落が大量に発生しているなか、この特集では更にその先を描き出す。

極点社会

今のところ日本の地方を支えているのは高齢者の経済力。それは実際に労働の対価として稼ぎ出す報酬ではなく、長年積み立ててきた年金。その年金を便りとして回っている多くの地方自治体。

これが一部での現象で、他の地方では若者が増加し、全体としてバランスが取れているならまだしも、現在の日本を襲うのは全体的な人口減少。そして地方を襲うのは若者だけでなく今や老人すら減ってきているという事実。

高齢者の年金で成立していた地方経済が縮小し、今までなんとか成立していた雇用の場が失われ、就職もできず、結婚も出来ない若年女性が増加する。彼女らの受け皿となるのは、東京などの数少ない勝ち組の大都市への流出。

一度彼女らが流出すると、残された地方は、限界集落を越えてただ消滅を待つだけの崩壊集落へと変容していく。いくら一度流出していった彼女達が何年後かに田舎に戻ろうと思っても、その時にかつての田舎の姿はもうそこには無い。また彼女達が戻ってこようと思えるような職・住環境もまた地方には用意されていない。

更に恐ろしいのは地方自治体が自らが首都圏で運営するケアハウスで働く人材を地元で採用し、そのまま首都圏に送り込むことによって、更に地元から若い女性の数が減っていくという負のループ。若い女性が減れば、子供を産む人も減り、必然的にその地域は消滅していくのみである。

縮小社会に入った国家の避けられない一現象であるのは間違いない。しかし問題なのは、現在の日本においては、機会や報酬など全てをとっても数少ない大都市の一人勝ちの状況になってしまっているということ。

国全体が同時に縮小するのではなく、全体が縮小する前に、崩壊していく地方から更に未来の可能性である若者を吸い上げる大都市がいて、それが地方の疲弊を加速させる。

都市に出てきた女性が、求める結婚相手を見つけるのにどれくらいの時間がかかるのか、激しい競争の中で十分な環境で子供を育てることができるのか。都市には都市の問題がある。

人が住まなくなった空家。しかしそれを取り壊して更地にすると更に税金を取られることになる。そんな時代錯誤のシステムが蔓延る中、事態は既に深刻な状況にと陥っている。

一時期待ち状態が何ヶ月にもなっているといわれたケアハウス。それも既に空き室が出てきているという。稼働率が低下することで、利益が無くなっていく。そうなると無駄な価格上昇で更に一般消費者を苦しめることになるのなら、行政の適正な判断で統廃合を繰り返し、適正価格へと持っていくのが妥当な線であろう。

ここで描かれているのはまさに巷に溢れる様々な縮小社会関連の書籍に書かれていることそのもの。マイルドヤンキーという地元に住み着いた若者がまだいる地方は良いということで、そんな彼らからも拒否をされた地方都市は今後更に崩壊社会へと突き進むであろう。

恐らく今後の20年。日本中の地方で見るも辛い本当の意味での都市間格差が明らかになってくるだろう。それはそこに住まう人がいいとか悪いとかの問題ではなく、都市として生き延びることが出来なかった、都市として今後を生きる若者を惹きつけることが出来なかった、つまりはそんな都市として放置してしまった行政の問題でしかないのだろうが、そうして誰に知られることも無くひっそりと消滅していく様々な都市があるはずである。

その消えていった都市を見過ごすのではなく、21世紀の日本の地方の風景を本気になって考えて、現実味のある街づくりへと着手していくことがこの時代に残された我々の役割なのだと思わずにいられない。

2014年4月22日火曜日

クローズアップ現代 「独立する富裕層 ~アメリカ 深まる社会の分断~」

社会人になりたての時に、大企業で働く友人と食事に行った時、「ここは会社の経費で落とせるから大丈夫」とおごってもらい、「ありがとう」となんだか凄いことの様に思っていた。

つまりサラリーマンであれば、どこかで使ってもそれが経費として認められるのであれば、後々同額が会社より手元に戻ってくる訳である。

しかし自営業になるとそういう訳にはいかない。サラリーマンの人がよくよく勘違いするのは、「自営業の人はなんでも経費として計上できるからいいな」ということ。経費としたって誰もお金を返してくれない訳である。これは様々な仕事に関する食事や購入したものを経費として利益から差し引いて、最終的に課税対象となる金額を圧縮する節税の一環であり、それをしないと売り上げがそのまま課税対象となり、本来ならその業務に必要となった様々な経費を無視しての計算がされることになり、不公平な税を課せられることになるという訳である。


自営業をしていると身にしみるのだが、この国では生きていく為に支払わなければならない税金はまさに多種多様であり、同時にかなりの負担となる。所得税、住民税、事業税、消費税、国民健康保険料、国民年金保険料、固定資産税、軽自動車税、などなど。

所得税に関しては、5%から40%の6段階で徴収され、妻が専業主婦の夫婦二人の家庭で貧困ラインといわれる年間所得300万とした場合で計算していくと、所得税、住民税、事業税、消費税、国民健康保険料、国民年金保険料とあわせていくと軽く100万を超える金額となっていく。


それだけ搾り取られ、経費として計上できない日常で必要な支出を考えると、この程度の収支では恐らく誰もやっていけない計算になってしまう。その時に頭に浮かぶのは、多くの税優遇が設けられているサラリーマンと専業主婦家庭への不公正さ。そしてこれだけ税負担が多いのであれば、負担の少ない人に比べてより優れた行政サービスを受けられるべきだろうという思い。

その思いの先にあるのが、今回のクローズアップ現代で取り上げられたアメリカの状況。圧倒的に豊かな家庭。年間何千万円もの収入を得るような層が、その収入に応じて莫大な税を行政に納めることになる。一つの家庭で収める税は、貧しい何千もの家庭で収める税よりも多くなる。

しかし、行政サービスは個別に対応する訳ではなく、湧き上がるのは不公正という思い。それであれば、豊かな人々が集まって、新しい行政、新しい市町村を作り、自分が支払った税金は自分達がしっかりと享受できるようにする独自のコミュニティを作っていこうという流れ。

つまりは、今まで市の行政サービスを支えていた高額納税者の税金ががっさり無くなり、既存の市は一気に財政破綻に陥り、まともな行政サービスを提供できなくなる。どころか行政関係の仕事についていた人の多くが職を失うことになる。

こうして見ると、一見弱いものを切り捨て、貧しいものを見返りもしない利己的な行動に移るのかもしれないが、累進課税というシステム自体に不公平さを含んでいる現行の徴税システムの乗るのであれば、これは避けられない事態であろう。

独立する富裕層。自分達の面倒は、自分達で見るから他もそうやってくれ。という社会。

資本主義は格差を容認するシステムである以上、どこかで向かい合わなければいけないこの問題。恐らく遠くない将来に日本にも同じ問題が起こり、不公平を叫ぶ貧しい人々と、同じく不公平を叫ぶ富裕層の分離が起こってくるのだろうと想像する。



2014年3月27日木曜日

風俗エコノミー

先日のクローズアップ現代ではないが、恐らく日本ほど街中にこれほど溢れるように風俗産業が見かけられる国はほかにないのではと思ってしまう。

一大産業として、職環境、流通、広告、人材などが完全に確立され、そこに関わる人の数、そしてその産業全体の規模から考えて、確実にこの国の経済の少なくない部分を担っているという事実にはふと驚かされることになる。

日本中どこに行っても見かけることができる町中に溢れるキャバクラの広告と呼び込みの姿。そのお店の数だけいるそこで働くキャバクラ嬢。同じように毎月新作が発売されるAV業界。一体どれだけ敷居が低くなったのかと思わずにいられないその出演女優の数。

そのほかにも、ファッションヘルスやデリバリーヘルスなどの性風俗から夜の街のクラブなども含めると、いったいどれくらいの女性がこの業界に関わっているのかと想像する。専業でなく、昼間は別の仕事をして夜だけバイトで働くなどの形も含めると、恐らくものすごい数になるのだろう。

そして産業を成り立たせるために従事している人、直接間接合わせその周辺で仕事に関係する人まで含めたら相当な数に上ることは間違いない。そこまで含めると風俗エコノミーで生活を支えている人は恐らく数十万から下手をすれば数百万人に上るであろう。

そして世の様々な場所で同じような会話が交わされているように、自分の周囲には風俗エコノミーに従事する人には出会わない。ということは、社会のある一定の層にかなり固まっているということであり、その層では相当に高い確率で風俗産業に関与している人がいるということであろう。

女性が風俗産業に足を踏み入れる一番大きな理由はやはり短期間で高収入を望めるということだろうが、他の産業に比べ確かに労働時間に対しての対価としては非常に高いもとになっているのは間違いない。となると産業全体としてどれだけのお金が動き、それが女性とお店にどのように分配され、さらにその後ろの大きな組織にどのように流れていくのかと想像をめぐらせずにはいられない。

ネットで簡単に調べてみても、やはりその全体像はなかなか掴みづらいようであり、結局はどの産業でもあるような後ろで手を引く搾取構造があるのは違いない。

あの業界の市場規模っていくら?

風俗産業と経済

「AVって数多過ぎないじゃない!?」という言葉が気になり調べてみたところ、ある面白い統計が…

そう考えると、ある種この産業があることが日本の経済にとっては通常であり、恐らくそんなことはないであろうが、万が一産業自体がなくなった場合は一体どれだけの人が職を失い、路頭に迷うことになるかと考えると恐ろしい。

そうなると、どれだけ健全に産業として働く環境を整えられるかという前向きな動きも様々なところで出てきているようであり、

ホワイトハンズ

風俗の安全化と活性化のための私案――セックスワーク・サミット2013 要友紀子 - SYNODOS JOURNAL(シノドス・ジャーナル)

性風俗という職 働く若い女性に聞く

なかなか難しいと思うがこの風俗エコノミーが日本経済の中でどのような位置づけを占め、そして産業内部がどのような構造になっているのか、そして産業としてどんな健全化が図れるのか、そんな突っ込んだ特集をぜひともクローズアップ現代に期待したいと思わずにいられない。

2014年2月10日月曜日

クローズアップ現代 「あしたが見えない ~深刻化する“若年女性”の貧困~」 ★★★

ネットでかなり話題になっているらしい先日放送された「クローズアップ現代」の特集。格差社会が叫ばれ、連鎖する格差の中で、生涯未婚率が20%を超えてきた現代日本。

少し前の日本の様に、自分で生活を支えるほど社会の中で稼ぐことをしなくても、ある年齢までは実家でやっかいにあり、出会いかもしくは誰かの世話によって結婚相手を見つけ、その後は専業主婦として男性に養ってもらう。そんな日本の女性の漠然とした生き方が変わってきた現代。

非正規雇用で働く人の数が増え、結婚相手どころか自分一人の生活すら支えるのが難しいという層が増加した時代には、もちろん結婚相手の女性にも家計を支える手助けをしてもらおうと期待する男性が増えるのは当然。

そうなると頭では分かっているが、やはり自分だけは自分の願うような生活を保障してくれるような男性と出会って結婚できるのでは・・・と理想の世界に行き続け、結局結婚せずに独身を守り続ける女性達。それらの女性はいくら収入が少ないといっても、いくら貧困だといっても、少なくとも実家にパラサイトし、自らもそれないの収入を得て、少なからず刹那的な欲望を満足させながら生きているだろう。

今回の特集で取り上げられたのは、それらの層ではなく、シングルマザーなど子供を育てながら、生活保護も受けられず、頼れる家族もなく、なんとか自分で生きていく糧を稼がなければいけない女性達。仕事をする時間に子供を預ける託児所も、日中の仕事をしている人にはまだ余地があるが、短時間で高収入を得ようとする彼女達の勤務時間に預けられる託児所の整備は進んでいない。

行政に縋ることもできず、血縁にも頼ることが出来ず、ましてやそんな境遇を助けてくれる強い絆で結ばれた友人がいるはずもなく、そんな彼女達に手を差し伸べるのは、風俗産業。若さと女性ということを、短時間の高収入に変換するその風俗店は、働き手である若い女性の実情を一番理解し、少しでも彼女達が働けるようにと手を尽くす。

それが、「寮あり、食事あり。託児所完備。シングルマザー歓迎。」という風俗店の求人広告。

仕事前には店の提携する託児所に子供を預けられるシステムを打ち出す店もあるという。

残念ながら風俗産業にとっては貧困に窮していようとも、若い女性であることがそのままビジネスでの価値となる現実。そしてその価値を最大限にする為に、店側の経営努力として、働き手の女性を確保する様々な特殊な福利厚生ではないが、働く環境を整えることが、頼ってくる人を精査して不正受給を防止しようとする行政側の生活保護ではシステム的に弾かれてしまい、何処にも行くあてが無く最終的に縋る場所になってしまっているという現代の一断面。

本当はこういう風になんとかその環境から抜け出そうと、子供の為に少しでも良い生活ができるようにと思いを持ってはいるが、それでも現状で自分の力だけではどうしようも抜け出せない多くの人にとって、本来的には力を発揮するべきの生活保護。

それが三親等まで扶助義務を拡張するとかよりも、多様なケースに多様な方法で対応できる、一定額支給から進歩した新しい形の生活保護の移行する必要があるのであろうと思わずにいられない。

この特集で取り上げられたシングルマザーの子供達は、恐らく十分な教育を得ることも出来ず、格差が再度連鎖していくことだろう。子供の教育の不公平を生んでしまう現状は、やはり社会の側に問題があると思われる。

ケースバイケースで現金を支給するのではなく、貧困者が無料で住まうことのできるソーシャル・ハウスを準備すること。もしくは似た環境の貧困者が集って住まい、互いに空いた時間で子供をみあったり、家事を分担したりと、新しいソーシャル・シェア・ハウスなんかも求める人は多そうである。

恐らくそういう政策は成果が見えにくいことと、その為に大きな手間がかかることが想像されるが、しかしこのまま現状の見えにくい貧困を社会に放置しておくことがこの国の未来に何かしら良い影響を与えるとは誰も思えない以上、やはり新しい動きが出てこないといけないのだろうと考えさせられる、素晴らしい内容のドキュメンタリーであった。

2012年9月11日火曜日

社長探し

先日のクローズアップ現代で、多くの日本企業が次世代の社長となる人材を探しているという。グローバル経済の波にのみこまれ、遠い国の関係ないような業種の事態が、自社の業績に影響を与えるかもしれないという、多様な関係性の中でしか存在しえないグローバル経済の中で、不測な事態を読み、臨機応変に対応できる人材。それが社内にいないという。

ある企業では、次世代の社長候補を育てる為に、人事のプロと呼ばれる人を招聘し、若い世代からリーダーの素質があるスタッフを選抜し、世界の様々な支社に勤務させ世界で通用する世界観を植え付け、さらに様々な業態を経験させることで、ジェネラリストとして大きな視点を養うという。

ほう、なるほど。

と思う反面、そんな温室のような環境で優しく守られて育てられるのは、この厳しい世界に対してあまりにも甘くないか?と思わずにいられない。

毎朝通っている語学学校では、沢山のスペイン人の姿を見かける。自国の経済が大変な状況で、自らの将来を生き抜くために、今何ができるのか、どう行動するのか、何を身につけるのが一番いいのか個人として必死に考えた結果ここにいるのだろうと想像する。

会社の経費で語学研修として1ー2年、十分な生活の保護を受けながら悠長に学ぶ人もいれば、世界の情勢を見ながら、自分のこれからの人生 キャリア チャンスを考え、どんな能力が必要か、自ら動いて身につけ、どんなチャンスを掴み、競争して戦って、傷ついて苦しんでも、必死生きていく。「大変だよ」といいながら、十分な給料が保証されている身と、自腹を切ってこれで結果を出さなければ生きていけないと思って過ごす時間の濃度の差は歴然。

バーで知り合ったフランス人は、精神科医の博士号を取得中に北京に移り、自分の好みのフランス料理レストランが無いから、それならと自らお店を開き、それと連動するように様々なイベントを企画しているという。その彼と一緒に席を囲むのは、ワイン会社を営む中国人で、ワイワイ話しながらもフランス料理にあうアイスワインがあるんだと売り込みをかける。

20人の部下をもつのと、20人の社員を抱えるのでは何が違うのか。それはその人の人生に責任を持つかどうかでしかない。その責任はその人の時間の過ごし方を必死にさせる。

生きるために必死に時間を過ごしてきた人材で無ければ、会社を生き残らせることができないのは当たり前で、必死に生きるだけの環境が日本にあったかどうか、これからあるのかどうか、それを考えることの方がよっぽど重要だと番組を見終わって思わずにいられない。