2013年6月2日日曜日

シドニー Sydney Day 1


カンファレンスだからといって、ついでに何日も休めるほど世の中甘くは無く、せいぜい今進めているオペラハウスの設計の参考になるようにという大義名分を持って世界遺産にも登録されているシドニーのオペラハウスを見に行くために二日間だけシドニーに足を運ぶくらいがいいところ。

という訳で、少しでも時間を有効活用しようと南半球にまで来て相変わらず忙しなくし、早朝7時の飛行機に乗るために前日から5時半にと頼んでおいたタクシーを待たせながらチェックアウト。

完全に残念な空模様の下、「大きな国だからシドニーあたりまで行けば青空が覗いているかも・・・」などと甘い思いを抱きながら機内に入って即睡眠。

到着したシドニー空港だが、やはり雨模様。タクシーの運転手にも「メルボルンから雨空を連れてきちゃったねぇ」と言われながら、なんとか晴れろと祈りながらホテルに向かう。

オーストラリアに着いてから、その驚愕の物価の高さにつねにビビリながら行動していたが、着々と上がるメーターの数字を横目に捉えながら、カンファレンス出席者に配られたタクシー・チケットがこのシドニーの地でも使えますようにと願うばかり。

そして着いたホテル。アーリーチェックインをお願いしてなかったので荷物を預けて近くで朝食でも・・・と思っていたが「東京好き」とやたらと東京での体験談を話してくるホテルのスタッフがあまりに気さくで、「部屋を空けたので先に入って休んでいいよ」というので、ここまでの疲れもどっとでて、昼の約束までつかの間の睡眠。

半端ない物価の為に値段とグレードのバランスをとって、それでも他の国なら相当高いと思えるが「一晩だから・・・」と予約したこのホテル。良かったのは最初のスタッフの対応のみで、「一体どれだけ古いのか?」と思うような内装で、もちろんそのサービスも褒めれたものではない。

「朝食は後で部屋の冷蔵庫にパンなどいれて置くので、自分で焼いて食べて下さい」。始めての経験でそれなら素泊まりで安くする方が潔いのに、これで「朝食付きだとうたうのか・・・」と唖然とする。

まさかと思うが部屋に歯ブラシが無いので、忘れたのかと思って電話すると「レセプションで売っていると・・・」。唖然とするほかしょうがない。悔しいので、近くのコンビニに買いにいくと4.5ドル。またまた唖然とする。なぜ歯ブラシが450円?ホテルに戻って値段を確認しようとすると、3ドルだと。しかし一つしかないと。がっくりと肩を落としながら購入。歯磨き粉も合わせて購入。計5ドル。日本のデフレが懐かしい・・・。これで今夜は人生でいちばん贅沢な歯磨きになりそうだとがっくりと肩を落とす。

そんなことがありながら、数時間の睡眠で少し体力を回復し、ティムに紹介されたシドニー在住の若手建築家とランチの約束に向けてホテルを出発。なんでも555番のバスは無料で市の中心部を回っていて、それに乗ればオペラハウス近くの駅までいけるという。

「流石は観光都市シドニーじゃないか。」と思いながらバス停に行ってまってみるが、待てども待てどもやってこない555。その間に999でもやってきて、メーテルと一緒に宇宙旅行にいけるんじゃないかと思うくらい待たされ、約束の時間に遅れるわけには行かないので近くの人に聞いてみると、間違いなくそのバス停で合っていると。

と、思っているとやってくるのが世の常。冷たい雨から逃れて乗り込むと、路線図などはまったく無く、どこで降りていいのかもつかめない為に、「なんて観光客フレンドリーでない都市なんだ・・・」と思いながら運転手にオペラハウスに行くにはどこで降りたらいいのかを聞いてスタンバイ。

よくよく聞くとこの555。平日は朝の9時から15時まで。週末はそれが17時までになるのだという。「一体誰が乗るというのだろうか?」。この都市に住み、まともな生活をしている人はその時間は間違いなく仕事をしているだろう。では、観光客用かと思えば、15時に観光を終えるような人がどこにいるだろうか?

それにこの分かりにくいうか、そもそも情報が足りてないし、少ない情報も始めて訪れた人に分かる様に表記されていない。この街に来てくれる観光客がどういう思いでこの街を巡るのか?そういうことにまったく思いを馳せたことが無いのだと容易に想像がつく。

そんなことを思いながら着いたサーキュラー・キー。メルボルンと違って入り江の街だけあって、フェリー乗り場に並ぶ船の姿に少々気分も高まってくる。しかしそれと反比例するように強くなる風と雨を耐え凌ぎながら、岬の先のオペラハウスまで足を進める。

感動的なファースト・コンタクトとは行かなかったが、とにかく時間に遅れることはできないということでエントランスを探しながら中へ入る。レセプションあたりをうろうろしていると、「ヨースケ!」と声をかけられ、昨晩会ったガブリエルの姿が。

明日のコンペの締め切りにも拘らずランチの為に出てきてくれたことを感謝して、とりあえず彼のオススメのレストランへと場所を移動する。1階には床下にシドニー全体の建築模型が設置されていて、街の成り立ちや、今進んでいる再開発の動きなど詳しく説明してくれて、とりあえずシドニーの全体像を頭の中に入れる。

最上階に上がって、雰囲気の良い海鮮レストランでワインを空けてたらふく牡蠣を平らげる。「衛生面を気にせずに生ものが食べれるのもあと一日」だと思うと、一つ一つの牡蠣がよりジューシーに感じるから不思議である。

お酒も手伝って、オーストラリアのカソリックとプロテスタントの決して交わることの無い二つの世界のことや、自らもイタリア系というように、移民がどのようにこの国で受け入れられ社会を構成しているか。また今進めている建築の仕事から将来の夢や、学生時代に言った日本やヨーロッパの建築について、兎に角人が良さそうに喋る姿は非常に、きっとクライアントや年上の建築家にも可愛いがられるのだろうと勝手に想像を膨らませる。

どこに生まれたとか、何をしているかというよりも、こうして世界のどこにいても、同じようなことを楽しいと思い、同じようなことに情熱を傾け、同じような言葉で喋れる人たちがいるのは幸せだと話し合い、結局それは同じような教育を受けてきたかによるんだろうと話が飛ぶ。

そんな話をしてランチを終え、さっきからちらちらと見えている近くの建物がどうにも見覚えのある風貌で、どうしても気になるからと腹ごしらえついでに3人でそちらに歩いていくと、やはり出てきたのは「1 Bligh Street 」。

共同主宰するMAD Architects設計の「Absolute Tower」もノミネートされていたCTBUH2012年最優秀高層建築賞で見事に一等をかっさらっていった少々の因縁のある建物。

そんな経緯を妻とガブリエルに伝え、「なんとかあのロビー空間から上を見上げたいんだ」ということで、以前来た時は普通に中に入れたから、という彼の言葉を頼りに入り口まで行ってみるが週末ということで閉まっている。警備員さんを捕まえて事情を説明すると地下の警備室に連れて行かれ、明日改めて来てくれと言われるので、明日の再訪を誓い、更にコンペの締め切りに戻るというガブリエルと別れてオペラハウスのツアーに申し込みに行くことにする。

丁度雨も上がってきて、やっと青空バックに撮影できるオペラハウスに気分も高まり、本日最終の5時からのツアーに申し込みをして、周辺を撮影しつつ、折角だからとガブリエルからも進められた「ロイヤル植物園」まで足を伸ばすことにする。

入江なので波も高くなく、海面が大きな塊の様に感じながら、雨上がりで日の光に反射する様々な緑を楽しみながら、既に沈んで来た太陽から目を守りながら岬の先の絶景ポイントまで散歩する。

逆光ではあるが、ハーバー・ブリッジとオペラハウスを一緒に撮影できるというスポットで休憩をし、今度は広大な植物園を横断してフェリー・ターミナルを横切って現代美術館へ。こちらサイドからみるオペラハウスもいいなと思いながらも、入り口からいきなり大階段という大胆な現代美術館の拡張施設を横切りながら、そろそろツアーの時間だということで、サイド港をぐるりと回ってオペラハウスへ。

このツアー。大体1時間くらいなものなのだが、大人一人で35ドル。「ディズニーランドに入れるな・・・」と思いながら、総勢30人近いグループに入り、一人のガイドのおじさんの説明を聞きながら建物を巡る。生憎また雨が降り始めるが、日も暮れて、岬の一番端に位置するホワイエ・スペースから美しいハーバー・ブリッジを眺めることができたり、構造的にも意匠的にも時代の先を行っていたウッツォンのデザインが実現され、素晴らしい内部空間を堪能し、一時間で終了。

たまたま開催されていたライティング・フェスティバルの為に、港周辺の建物がライトアップされ、様々なライティング・ショーが繰り広げられるのを目的に、夜のサーキュラー・キーは人だかり。流石に歩きつかれたので、高い値段ではあるがレストランに退避して早めの夕食を楽しむことにする。

少し体力が回復したところで、夜はフェリーに乗って、ライティングされたオペラハウスを見るのがオススメだと、主宰者のジョンから聞かされていたので、せっかくだからとフェリー乗り場へ。

夕食でもその物価の高さにかなりのダメージを与えられたので、何とか良い方法はないかと探していると、ガイドブックを見ていた妻が一日乗り放題券の存在を見つける。近くのキオスクで購入できるというので行ってみると、1日乗り放題チケットが一枚23ドル。やはり高い。しかしバスもフェリーも鉄道も乗れるという。今から買えば、24時間で明日の夜に空港に行く鉄道も乗ると考えるとこれが一番お得とそろばんをはじく。

そして売り場の若者に確認する。「1日は最初に使った時から24時間でカウントするのか、それとも夜中の24時を回ったらもう使えないのか。」

前者だというので次の質問。

「では、空港までこれで行けるか」確認する。

問題ないという。

ならばと二人分購入。そして近くのフェリー乗り場にいき、チケットを使う前に再度確認の為に係員に聞いてみると、「1日券はその日の夜12時を回ったら有効期限が切れる」という。その言葉に愕然・・・どうなっているんだ、この国は。「購入したところで返金してきてもらいな」というので、がっくりと肩を落として戻ることに。

しかし、二人に聞いて半々の意見なら、ひょっとしてフェリー乗り場の人が間違っている可能性もあるかというので、置いてある市の公共交通のパンフレットを手にしてみるが、どこにもその情報は書いてない。そこで別の人を捕まえて聞いてみるとやはりその日の夜で切れてしまうという。どういうシステムなんだ・・・と叫びたくなるがしょうがない。

キオスクまで歩いて戻るのも結構距離があるので、と思っていたら、妻がこのチケットを明日に使えばよくないかというので、既に何を信じていいのかわからなくなり始めていたので、再度フェリー乗り場に行って係員に「今日購入したチケットを明日から使用することは可能か?」と聞くと、それは大丈夫とのこと。

そんなこんなで体力と気力を消耗して、二人ともくたくたになり、今日は早くホテルに戻り、明日早くから行動しようとバス停に。そのバスに乗るためのチケットは、バスでは支払えず、またしてもキヨスク的なところで購入するシステムらしく、どこで購入できるのかを再度探すこと30分・・・「夜の7時を過ぎたらバスでも支払える」との情報を得てバス停に・・・

バス停には路線図も無いので、やってくるバスに乗り込んでは運転手に聞いて、どの番号のバスが行くのか確かめる。次は時刻表がまったく分かりにくい表記になっているので、いったいどれだけ待てばいいのか把握することなくただひたすら待つとやってくる333。ここは銀河鉄道999の世界か・・・と思いながら乗り込んで二人分を払おうとすると、「このバスはプリペイドだからバスでは払えない」との答え。

開いた口が塞がらない。というのはこのことだと思うが、なんのためのプリペイドだ?そんなことを観光客が分かると思うのか?などと頭の中からあふれ出てくる言葉を何とか胸の内に留め、次なるバスを待つことに。

やっとのことで、ホテルに戻ったときには二人ともぐったり。冷蔵庫の中を開けると、食パン2枚とカップのヨーグルトが申し訳無さそうに置かれている。「食べることは無いだろうな・・・」と思いながら、高価な歯ブラシで歯を磨いて床に就くシドニー一日目。



























0 件のコメント: