昨日の夜に、再度中心繁華街まで地下鉄で出て行って街を少し歩いてみるが、やはりこのモスクワ。観光客が地図を片手に歩くのはそうそう簡単ではないようである。
そうなると明日の建築巡礼も予定通りにスムースに巡れるという訳でははなさそうなので、食事をとってからさっさとホテルに戻り、グーグル・マップとIndesignを開いて、それぞれの出発地から目的地までどのように歩き、どのような交通手段を利用して、何個目のなんという頭文字の駅で降りて、それからどうやって歩いていけば到着できるかを地図に表示して項目ごとにまとめていく。
こちらで地図アプリが使えればいいが、ローミングに気を使いながら切ったり接続したりするのも忙しないので、朝から晩までの予定をびっしりPDFにして、それをiPadに入れてナビとすることにする。そんな訳でその作業に時間を取られ、就寝するのは午前3時。「明日も迷惑でなければ着いていこうかな」というオーストラリア人との予定も合わせなければいけないので、朝早くおきて一つ目のセブンシスターズポイントだけでも終わらせてしまおうと思っていたが、やはりそんなに早くは目覚めることができず、9時過ぎからモスクワ建築めぐりを開始する。
このプレゼン出張の前に、ロシア人のスタッフにモスクワで見ておいたほうが良い建築を教えてもらい、それを地図上で示してもらい、どのように巡ったほうがいいかを教えてもらうが、その後自分で調べるとやはりロシア構成主義の建築がかなり残っているらしく、それを見逃す手はないとグーグル・マップにマッピング。それをもとに、昨晩新たなるルートを作成したという訳である。
市内をぐるりと時計回りに巡っていくルートの最初の目的地は、セブンシスターズと呼ばれるスターリン・ゴシックの7つの建物の一つ、ロシア外務省。「青色から茶色へ・・・」、「乗り換えたら最後がEみたいな頭文字の方向へ・・・」となんとも原始的なナビゲーションをしながら、途中途中で進められていた地下鉄の駅の内装を写真に収めつつ目的地の駅へ到着。
地上に出たところで、今度は地図を眺めながら東西南北を確認して進む方向を決めていくのだが、こういうときにアイコンとなる建物や広場がある都市計画はありがたい。この時も駅をでたらすぐに明らかに異様な高さを誇る建物が見えて、それが目的地だと把握でき、その建物の位置関係から地図の方位を確認することができた。
このロシア外務所の建物。昨晩夜の赤の広場から周囲を見渡し、頭一つでている各地のセブンシスターズの中でも、シンデレラ城のように上に向かって上昇しながらも、次第に細くなっていく繊細な姿が一番印象的だった建物である。
建築家はゲルフレイクとミンクスで、1953年に完成している。27階建てで170mというその高さ。戦後すぐに立てられたというその時期を考えると、当時のソ連の国力を思わずにいられない。建物のに近づくと余りに高すぎその姿を十分に視界に納めるためには恐らく数百メートルは引きをとらないといけないが、都市の中にそれだけの引き空間をとることはできるはずもなく、全体像を感じることなく、面を捉えることになる。
ロシア外務省ということで、☆のモチーフがあちらこちらに掲げられている。ソビエト時代にはこの赤い星(レッドスター、 five-pointed red star)のモチーフは共産主義や社会主義などのシンボルとして使われ、五つの頂点は、労働者の手の五本の指また世界の五大陸を表すとされる。または五つの頂点がそれぞれ共産主義を指導する五つの社会集団(青年、兵士、産業労働者、農業労働者、インテリゲンチャ)を表すとも言われるという。
中国では同じ星でも「黄金の星」(ゴールドスター、Gold Star)と呼ばれる黄色の星をシンボルとして使っており、今回のロシアのコンペでも星型を採用したいたのだが、当初は5角の星型を採用していたのだが、中国人が「五角の星は社会主義国家において余りにも象徴性が強いので避けたほうがいいのでは・・・」ということで最終的に六角の星型に変えた経緯があったが、やはりこういうところで国の成り立ちが感じられるというものである。
その赤い星が掲げられた重厚な扉を入っていくと、床にも星がかたどられているのが見られる。上部に上昇するゴシックの教会建築の様な縦長の空間が見られるのかと期待していたが、どうやらロビーはせいぜい2層吹き抜け程度の空間のようである。セキュリティチェックがあり、パスを持っていないと入れないようなので、諦めて外へ。
横に回ってみてみるが、やはりここまでくると「塔」としての認識よりも、都市の中の量塊、マッスとしての認識に変わってしまうようである。そんなことを思いながら近くに位置する「プーシキンの家博物館」へと向かっていく。そこまでの通りは、なかなか活気がありつつ落ち着いていて、モスクワに到着して始めて歩いていて心地の良い道だと感じることができた。
案内が出ていないので少々苦労しながらやっと見つけたプーシキンの家博物館。ロシアで最も愛されるという詩人・作家であるアレクサンドル・プーシキンは、先日観に行ったオペラ「エフゲニー・オネーギン (Eugene Onegin)」 の作者でもある。
やっと自分の中でのロシア文学へのつながりが少しずつ出始めたので期待していたのだが、なんと今日は休館日。「ネットではそんなことは書いてなかったのに・・・」とジェスチャーで係のおじさんに伝えるが、「明日戻って来い」と言われ、ガックリ肩を落としながら、次の目的地である「メルニコフの自邸」へと歩を進めることにする。
アレクサンドル・プーシキン
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