レニングラードホテルやロシア連邦運輸機関建設省が立ち並ぶモスクワの東の玄関口から更に東に地下鉄に乗り数駅進んだ先にあるのが、ロシア構成主義の建築としてすぐにイメージされるこのルサコフ労働者クラブ(Rusakov's workers club)。
設計はロシア構成主義を引っ張ったコンスタンチン・メルニコフ(Konstantin Melnikov)。午前に見てきた住宅の設計者でもある。
ロシア構成主義の建物を調べると、何度も「労働者クラブ」という名称を見かけることになる。「なんだか物騒な企てをしていた秘密結社なのか?」と思っていたが、なんてことはなく、当時は文化施設を「労働者クラブ」と呼んでいたとのことである。
そんな訳でこのルサコフ労働者クラブも内部には1000人以上収容可能な大ホールとなっており、それが概観を特徴付ける大きく外に張り出した3つのキャンティレバー状のボリュームとなっている訳である。
建築の機能は、その外部に表現されるべきとしたメルニコフ。その考え方をダイレクトに現したのがこのルサコフ労働者クラブ。周囲の建物を比較してみると分かるが、明らかに新しい考え方をもとにして設計された建築であり、機能を直接表現とし、様式を採用していないだけに、現代においても決して古びれた感じを帯びていない。
これを見て思い出すのはやはり先日訪れた米子にある、村野藤吾設計の米子市公会堂。自らロシア構成主義建築への傾倒を言及する村野だけに大きな影響を受けているのが見て取れる。
どうやら現在は使用制限されているようすでフェンスで覆われて建物には近寄れなくなっている。建築の力を信じて疑わない時代の力強いそのフォルムを見上げ、そろそろ翳ってきた太陽を気にしながら駅へと向かうことにする。
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