宋都御街を北に抜けると大きな湖が広がる風景に出くわす。これがこの開封の北側を形作る二つの湖、杨家湖と潘家湖という二つの湖である、その真ん中の橋でつながれ、北側に位置するのがこの地に居をおいた歴代王朝の宮殿があった場所であり、その歴代王朝は?と眺めていくと最初は明代の1378年にこの地に周王府が建てられ、その後清の時代の1692年にここに万寿亭が作られ後に名称も「龍亭」と改められたという。
南から二つの湖にはさまれた南北に伸びる直線の橋である玉帯橋を渡り切ると見えてくるのがこの龍亭。そしてその前に聳える巨大な石階段。なんでも高さが13mで全部で72段の階段だという。これだけ長い直線の階段を見るとやはり東京の愛宕神社の「出世の石段」を思い出してしまう。あちらは86段だというから、この龍亭のほうがやや短いということだが、山を頂上に位置する愛宕神社に対してこちらは純粋な人工の建造物。周囲に視界を防ぐものが無いだけにその姿はむしろマヤの神殿を思い出させる。
1日移動を続け、歩き続けた挙句にこの長い直線の石畳を歩いてきたのこの気の遠くなるような石階段。せめて夕陽を浴びて輝くこの開封の街の姿を上から眺めおろし、かつて「東京」と呼ばれたこの街に想いを馳せようと心に鞭打って階段を一段一段と上っていくことにする。
頂上に立ち南を振り返ると眼下には汗をかきながら上った石階段とその先にまっすぐと伸びる橋。穏やかな水面の向こうにかすむ街並みの景色はこの石階段を登ってくる価値があるものだと納得。手すりで切り取られた空の風景は恐らく東京と呼ばれた首都として君臨した北宋時代の開封の風景とそれほど変わるものでは無いだろうと想像力をたくましくし、そろそろ日が落ちてきたのを確認して階段を降り宿に向かうことにする。
橋を渡る途中東の空に落ちる太陽が空をなんともいえない美しい色に染め上げ始め、トワイライトの奇跡だとこの瞬間を逃さないようにカメラを構えながら刻一刻と変化するその空の表情を楽しみながら、日常の中では空を見上げる余裕すらない現代人の生活の虚しさに思いを馳せながら歩き回った1日を振り返る。
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