2015年12月19日土曜日

秋野不矩美術館 藤森照信 1998 ★★


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所在地  静岡県浜松市二俣町二俣
設計   藤森照信
竣工   1998
機能   美術館 
規模   地上2階
延床面積  999㎡
構造   鉄筋コンクリート造、一部木造
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天竜川に沿って南下し、「かなり街中まで出てきたな」と感じるくらいで到着する美術館。美術館の駐車場からはかなりの坂道を上っていくと、丘の上の開けた風景に、まるで時代を飛んで存在するかのような土壁と焼き杉の黒い屋根で覆われた建物が見えてくる。

建築史家であり、建築家でもある藤森照信(ふじもりてるのぶ)。赤瀬川原平、南伸坊らと結成した「路上観察学会」の様々な著書でも世間一般によく知られている。

建築史家としての知識と、数多くの建物を訪ね歩いた経験から、50歳を目の前にして設計活動も開始し、自然素材を多く使い手触りの感じられる建物を世に送り出している。

1991 神長官守矢史料館 長野県茅野市
1995 タンポポ・ハウス 東京都国分寺市
1997 ニラハウス・薪軒 東京都町田市
1997 浜松市秋野不矩美術館 静岡県浜松市
2000 熊本県立農業大学校学生寮 熊本県合志市
2000 赤瀬川家の墓 神奈川県鎌倉市
2003 矩庵 京都府京都市
2004 高過庵 長野県茅野市
2005 養老昆虫館 神奈川県足柄下郡
2005 ラムネ温泉館 大分県竹田市
2006 ヴェネツィア・ビエンナーレ 第10回国際建築展 日本館会場構成
2006 ねむの木こども美術館 どんぐり 静岡県掛川市
2009 ROOF HOUSE 滋賀県近江八幡市
2010 空飛ぶ泥舟 長野県茅野市
2012 はま松ハウス 静岡県浜松市
2014 トタンの家 東京都国分寺市

この秋野不矩美術館は、この浜松市出身の画家である秋野不矩(あきのふく)の業績を記念して作ることになった美術館であり、ご子息が藤森照信のデビュー作でもある神長官守矢史料館を見て気に入ったことから設計の依頼に発展したということらしい。

雑誌などでも非常に多く紹介されることの多い藤森建築であるが、しっかりと見ることは初めてで、代名詞でもある自然素材をふんだんに使った外観は自然の豊かな風景に溶け込むようであり、また肌触りを喚起する内部の仕上げは、足の裏や、手の平といった建築と直接に触れる身体の部位に直接に訴えかけてくる。

訪れた時は「外壁に土壁か・・・」とあっさり思ってしまったが、後ほど調べてみると、冬場の凍結の為に、外壁に土壁を使用するのは非常に難しく、ただしどうしても土壁の表情を出したかった建築家は白いセメントに土色をつけて、藁を入れて塗っているため、表面に少し藁が見え、表情としては土壁とほぼ変わらなく見えるということらしい。

内部は靴を脱いで展示室を素足で歩くように設定されており、そのお陰で床にも塗られた漆喰の素材感が足の裏を通じて感じられるようになっており、また「塗る」という仕上げ方により、床と壁、壁と天井の境目を取り除き、工業化されたパネルを「張る」というのではどうしても見えてきてしまう製品の寸法が消えて、漂白されたようなスケール感の無い空間になっている。

建築の隅々で、これぞ藤森建築という数々になるほどと納得していると、あちらの隅では妻と母がインドに魅せられたという秋野不矩氏の絵画の数々を楽しげに鑑賞している姿を見つけ、こういう一日も悪くないなと思いながら次の部屋へと進むことにする。
















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