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スタッフ
監督 奥田瑛二
原案 奥田瑛二
脚本 山室有紀子
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安田松太郎:緒形拳
横山真由美:高岡早紀
横山幸(サチ):杉浦花菜
ワタル:松田翔太
安田節子:木内みどり
安田亜希子:原田貴和子
水口浩司:大橋智和
アパートの管理人:山田昌
医師:津川雅彦
刑事:奥田瑛二
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最近はその娘二人の活躍が非常に目立っている監督で俳優の奥田瑛二。決して派手な物語ではないが、主演の緒形拳の演技同様、ゆったりとしているが、じっくり染み込むような味のある時間を描く名作である。
東海地方を舞台とし主に岐阜県の多治見市、郡上市、美濃市、中津川市などでロケが行われたと言う作品は、全編に渡ってとても美しい自然が常に画面の中にあるつくりになっている。
名古屋の高校で校長として勤め上げ、定年退職した主人公の松太郎(緒形拳)は、亡くなった妻の葬式を済ませ、関係性のうまくいっていない娘と喧嘩別れするかのように家をでて、一人小さなアパートでささやかに新しい生活を開始する。
そのアパートで隣の部屋に住むシングルマザーの真由美(高岡早紀)に虐待を受けつづける小さな女の子幸(杉浦花菜)と出会う。居た堪れなくなり、彼女を守るために連れ出し、結果小さな女の子と二人、かつて見た風景を探す旅に出かけることになる。
小さな女の子を誘拐犯として警察から追われながら、今まで省みることの無かった妻や娘と言った家族に対しての懺悔の意味を持った旅であり、どうしても途中で終えることはできない松太郎。そしてその途中、ふらふらと放浪する大学生のワタル(松田翔太)と出会い、海外で生まれ育ち、生と死の考え方がどうも今の日本の社会ではしっくりこず、うまく歩調を合わせて生きられない悩みをもつワタルも加わり、三人は山の奥へと旅を続ける。
虐待によって感情や表現を失っていた幸が、徐々に松太郎に見せる歳相応の振る舞い。最後は笑顔で拳銃の引き金を引くワタル。旅を終え、警察に出頭する際に幸を抱きながら泣き崩れる松太郎の心の中の風景。
とても映画らしい時間の流れる映画であり、キャスティングもロケ地選びも非常に素晴らしい。タイトルの通り、全編に渡って非常に多く「歩く」シーンが描かれる。なんでも「効率」と「スピード」の求められる忙しない現代。その中に目的を持って、方向を失わず、自分のペースを理解して、決してそれを乱さず、一歩一歩進むことは、目的地に少しずつ近づくことであるのだと、改めて認識することになる名作であろう。
奥田瑛二
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