2013年5月1日水曜日

多宝阁 duō bǎo gé


中国の伝統的なお茶屋さんなどにいくと、棚が立体的になっていろんなところに茶器を置けるような家具を見かけることがある。大きいものもあれば、机の上におけるような小さなものもある。四角いものもあるが、やはりカッコいいのは丸いタイプのもの。

北京に来てから妻の趣味に「中国茶」が加わったことから、徐々に気に入る茶器などを集めていたのだが、いつかはその茶器を置けるような棚がほしいねということで、ついにこの五一休みのうちに見つけようということになる。

休み二日目にも関わらず、コンペの仕上げに出勤する羽目になり、ついでにということでオフィス近くの茶器のお店に足を運び探すがどうにも無い。そこで、店員の人に「こんなものを探しているのだが」と相談すると、「???」と暫く難しそうな顔をして、「それなら茶器の店よりも、古い家具を扱っている店に行った方が見つかるのでは?」とういことで、北京で古い伝統的家具を扱う店が集まっている「高碑店」に行ってみなということに。

これはいい情報を得たと、急遽その日の目的をこの家具を見つけることに修正し、妻と二人でこれまた行きつけの別のお茶屋さんで更に詳しい情報を得るために足を向ける。南锣鼓巷近くの胡同にあるそのお茶屋さんは日本で料理の修業をしていたという料理人の人がいて、日本語もかなり流暢。そんな訳で店に足を踏み入れると、「あ、おひさしぶりです」と日本語の挨拶。

「実は・・・」と、こんな家具を探しているんだと、スケッチを渡して、この家具の名前を知っているか?と聞いてみる。

「うーん、いい質問でうすね・・・」と言わんばかりに、眉間に皺を寄せ始める彼。恐らく中国人にとってもなかなか使わない単語なんだろうと想像していると、「ちょっと調べてみますね」と後ろで賄いを食べているコックさん達に聞いたり、パソコンを開いたりしてくれる。

「いい人たちだなぁ」と思っていると、「分かりました、多宝阁です。」と。「多い宝の金閣寺の閣です」とどれだけ日本語流暢なんだとつっこみたくなるような説明つきで教えてくれる。

これは助かったと思いながら、「高碑店に買いに行こうと思うんだけどどうでしょう?」と呼び水を向けてみると、「この店の家具も結構そこで買っているんですよ。きっとあるかもしれないですね。ただし五一なので、空いているかどうか確かめてから言ったほうがいいですよ」とアドバイス。

流石に「空いているか調べてほしい・・・」とは言い出せず、「ありがとうございました」と店を後にした後に、かろうじてまだつながるその店のWifiをお借りして情報を調べることに。

なんでも、随分有名な古い家具を扱う店が集まっている一帯で、北京の東に位置するらしく、その地名を言えばその家具ストリートというくらいに有名らしい。その中でも一番大きいと思われる店に電話をして開いているか、何時にしまるかを確認し、その前にと南锣鼓巷の別のお茶屋さんで月光白というお茶をいただき体力を回復し、久々にのるタクシーで高碑店へ。

中心地からちょっと離れるとこんなにも荒涼としてるのか・・・と思うような横に広がる風景の高碑店。タクシーを降りる場所をちょっと間違えただけで、20分近く歩く羽目になり到着する高碑店古典家具街。入り口近くを工事中とあって、「ほんとうに開いているのだろうか?」と不安になりながらぐるりと回ると見えてくる小さなお店たち。その店の店頭にはいかにもな木製家具が置いてあり、その風景に「そういえば、昔誰かに連れられて来た事あるな・・・」と古い記憶が蘇えり始める。

目星をつけていたお店に入り、早速覚えた単語「小的多宝阁有没有?」と聞いてみると、一種類だけあるというので見せてもらう。丸い形でそこそこ可愛らしく350元というので、とりあえず第一候補として他の商品も見て回る。

とにかく広い店舗で、雰囲気のいいカフェなどに置いてありそうな古い伝統的な木製椅子や家具などがレイアウトされ、さすがにIKEAとは違った雰囲気で楽しめる。「これは」と思うような椅子の値札を除いてみると10000元を超えるものもあり、これはどっかで製作したほうがよっぽど安いな・・・と思いながら連なる他の店舗も覗いていく。

始めの期待値よりも、小さい多宝阁は売ってなく、「大きいのならあるんだけどね・・・」とか、「はす向かいのお店ならあるかもよ」という回答ばかりで、結局高碑店であるのは、最初に見つけたあの一点だけ。その店に戻り再度見てみるが、どうも素材が安っぽく、色味が「これっ」という感じでないと妻と意見が一致し、それならば無理に購入しなくてもということで、その代わりではないが、妻が探していて春らしい色合いの茶器と、丁度よいサイズのお盆を購入し高碑店を後にする。

「確かあの店にも多宝阁が置いてあったはず・・・」という妻の記憶を頼りに、休みの最終日に向かった家の近所のお茶屋さん。円形をちょっと崩したその形も素材の色合いも文句なしで、値段も想定していたよりも随分安く、しかも今なら五一优惠で茶葉がプレゼントされるという。

そんな訳で家の窓際にやっと鎮座することになった多宝阁。春にはこの茶器で・・・と買ったはいいが、なかなか開ける事ができなかった茶器のセットもやっと置き場所ができ、これからは春夏秋冬にぴったりの茶器を探して、この多宝阁に飾ることで季節を感じる日々を楽しみ加える2013年の五一。


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