2004 ハゲタカ ハゲタカファンド
2005 虚像の砦 メディア
2006 バイアウト ハゲタカファンド
2006 マグマ 国際エネルギー
2008 ベイジン エネルギー、中国
2009 レッドゾーン ハゲタカファンド
2010 プライド 期限切れ食材
2011 コラプティオ 政治
2012 黙示 食と農業
こうして見ると、「マグマ」や「バイアウト」を書いている時と同時期の作品。
作者独特な、複数の主人公を追っていく物語の進め方。某テレビ局で報道局に席を置く男。同じテレビ局でバラエティ制作に身をささげる男。そしてそのテレビ局を監督する立場の総務省に赴任した女。
その三人を軸に、時系列に進んでいく物語。それと同時に徐々に暴かれるテレビ局の内実。何百万、何千万という視聴者を相手にするが為に、可能な限りクレームが起こる可能性をできるだけ起こさないようにと、「事なかれ主義」に徹し、誰もが決断の責任を取れなくなった現実。そこに発生するある事件。
憲法の解釈をまげてでも自衛隊を派遣した中東の国で、渡航禁止の政府勧告にも関わらず、平和を願い自ら足を運んだ日本人3人が、現地のゲリラに誘拐されて人質として自衛隊の撤退を要求される事件。
「自己責任」とうい言葉と共に、内閣を転覆させないように、大きな力によって操作されたメディアの報道によって、人質となった三人とその家族への誹謗中傷へと姿を変えていく世論。
同時に張り巡らされるテレビ局への免許再発行の為のテレビ局から総務省への政治的動き。それに対して政治世界からの気に食わない報道をするテレビ局への圧力。その流れを使って、社内政治を勝ち抜こうとする勢力。
誰の為の報道かなんかはそっちのけて繰り広げられる魑魅魍魎たちのパワー・ゲーム。言葉の一つの裏にも、様々な意図と謀略が張り巡らされていることが緊張感をもって描かれる。現場で生きる人間は、どこまでも職能に真摯であるからこその葛藤をし、悩み、苦しみながら、最後に辿りつくのは自分にできることを必死にやるということ。
その財務体制や、こんなことをやっていながらも日本でも有数の高級取りであることなど、現実はそんなに離れていないと思わせるその説得力は、作者の緻密な取材の賜物であろうと簡単に想像できる。ネットメディアの興隆によって、硬直したメディアの世界に少しでも新しい風が吹き込むことを期待せずにいられない。
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<目次>
プロローグ 岐路
第一章 報道迷走
第二章 テレビの使命
第三章 テレビの力
第四章 灼熱の中で
第五章 絶体絶命
エピローグ 決意
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