友人の建築家に誘われていたハイキング。近しい友人だけで誘い合い、バスをレンタルして毎週待つごとに行っているというハイキング。メンバーは30人を超え、毎週木曜日に送られてくる招待メールにすぐに申し込みをしないとバスの席が取れないというので、その友人に妻と二人分の席の確保をお願いしていたが、なかなか予約が取れずにいた。
妻が日本に用事で戻っている週末に行われるというハイキングにちょうど席が取れたというので、一人の週末によい気分転換かもということで参加することにする。
早朝8時に近くの集合場所に行くと、総勢25名近いメンバーは皆すでに顔見知りの様子で、おしゃべりをしながら、さすがはハイカー、時間きっかりに皆揃って出発。
北京から北に向かって2時間ほど走り、それぞれにおしゃべりをしたり睡眠を取ったりと好きなように時間を過ごして到着したのは、周囲に何も無いような山に囲まれた一本の道。
降りたらすぐに歩き出すように、ということで、皆しっかりと装備した服装で何の説明もないまま先頭の人に続いて歩き出す。聞けばオーガナイザーの75歳のベルギー人が、15年以上も前に北京にやってきたときに、ハイキングをやりたいがどこにいっていいか分からないので、週末ごとに車を借りては山に行き、自分で道を探して歩き回り、行き止まりにぶち当たれば戻ってくるというようなことを繰り返し、頭の中に良いハイキングコースが叩き込まれているという。なんたるバイタリティ。
その名残ではないが、72歳のイスラエル人のおじいちゃんも、ひざが悪いといいながら、自分よりもよっぽどすいすい歩いていくし、ウルグアイ人という女の子はとれもラフな格好をしながらも、軽そうな身体でとっとと先に進んでいく。
5年前からオーガナイズするのを手伝っていて投資銀行に勤めているというフランス人に話を聞くと、開くまでも友人達が楽しめるようにという意味合いが強いので、費用も最低限で皆気ままに喋りながら歩いたり、休憩を取ったりとして、いちいちコースの説明や、昼食をとる場所の説明などはしないという。それが彼らのハイクだという。
「Dry River」というだけあり、最初の1時間半はひたすら山の間のからからに乾燥した川のあとのような道を歩いていく。これが結構なペース。少しでも写真を撮るために足を止めたら、あっという間に数人に抜かされる。これは気が抜けないな・・・と暫くぶりのハイキングに身体を慣れさせる。
しばらくしてなれてくると、近くに歩いている何人かと会話をする余裕も出てくる。マレーシア人だという男性は、オーストラリアで11年過ごし、今はアメリカで勉強をしているという。「何を勉強しているんだ?」と聞くと、パイロットの勉強だという。よくよく聞けば、趣味でセスナに乗りたいので、一番安くて早くとれるアメリカに行って部屋を借りて、教習所に通っている途中という。その間に一度北京に戻ってきている時に友人にこのハイキングの話を聞いて参加したという。なかなか興味深いじゃないか・・・と思いながら、普段はサイクリングを主にしているから脚には自信があるという彼のペースに遅れないように歩く。
そんなこんなで見えてくるのは万里の長城。その崩れかかったところから上に上り、後続のメンバーと合流し、皆揃ったところでここからは万里の長城の上をあるいていくという。崖のようなギリギリの道を抜け、パラパラと崩れる長城の上に上がり、風が吹き付ける中みんなひょいひょいと狭い長城の上をあるいていく。
聞くと今回は相当簡単な、ビギナー向けのコースだという。せめて目の前に広がる永遠に伸びるような長城のどこが我々のゴールなのかだけでも教えてほしい・・・と願いながらも、せめてこの風景を楽しむことにする。
こういうコースでも、天候によってはこの冬に日本人旅行者に起こった不幸な事件のようなことが起こるのだろうと思いながら、例のフランス人に今まで事故など無かったのかを聞いてみると、2件だけだという。一人はひざを悪くし、一人は壁から落ちてしまったという。基本的には皆それぞれの国でも山登りやハイキングをやっていた人たちで慣れているということらしい。それを聞いて気を引き締めて再度足を前に進める。
少し開けた広場のような場所でランチにすることになり、妻が日本に戻っているので前日の夜から自分で用意した弁当を広げることに。フランス人はサンドウィッチを、日本人はおにぎりを、中国人は餃子をという風にお国柄の感じられるランチの風景。誘ってくれたインドネシア系ドイツ人建築家の友人がめざとくおにぎりを見つけ、「一つ頂戴!」ということで梅のおにぎりを渡すと、「そっちの味がついてそうなやつのほうがいい!」ということで、ふりかけバージョンを目ざとく見つけるので、取り替えてあげることにする。海苔を巻いて、「おいしい」と周囲の友人ともシェアした様子で、次の弁当へのハードルが高くなるなと一人で想像を膨らませる。
午後はひたすら万里の長城の上を行く工程。袖壁の立ち上がり具合から、どちらが北京でどちらが匈奴が攻めてくるほうが一目瞭然。それにしても、良くこんなクレイジーなものを建てたなと、あらためて人類の歴史に圧倒される。
「そろそろいい加減に・・・」と思ってきたころに、前方に見えてくる長城の切れ目。そこにたむろする数名のメンバー達。「これはゴールか・・・」と思って降りていくと、今回はここまでというらしい。喜んでいると、長城はここまでだが、車のところまで降りていかなければいけないということで、またブッシュの中を枝で肌を傷つけながらあるくこと1時間、やっと舗装された道に出る。
携帯の電波も届かない場所で、どうやってバスの運転手と連絡を取り合っているのだろう?と思いながらもしばらくするとちゃんとバスもやってきて、おもむろに取り出したクーラーボックスの中からは冷えたビールが。なんて、気の利いたオーガナイズなんだろう・・・と思いながら、極上の一本を喉に流し込む。
このレベルで簡単なコースというので、これは次回どうやって妻を連れてこようかと頭を巡らせながら、久々の自然の中での良い疲労感を身体に感じながら帰りのバスに揺られて眠りに落ちる。
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