UCLAの大学院卒のインテリで、ドゥルーズやデ・ランダについてよく話をしたオフィスに4年以上も在籍したアメリカ人スタッフがオフィスを離れる事になり、旅立つ前にと妻と二人で日本料理のお店で送別会を開く。
中国人の彼女が上海近くの街出身で、現在はイギリスで修士号を取得中だが、それももうすぐ終えて帰国後は上海で就職が決まったという。
それを受けて彼自身も彼女との、そして自分自身の将来を考え、北京を離れる決断をしたという。
LAという土地柄をその彼を通してよくよく理解出来たが、「10時にいるように」と言っておいても、10:30にも現れず、電話は通じない。「チームが月曜までに仕上げなきゃいけないタスクがあるから」と言うと、「OK、サー」と言った割に全く姿を現さず、もちろん電話も通じない。どうもそれが問題だと思っている様子もなく、申し訳ないと思っている様子も無い。
最後だからと日本酒を一升瓶で頼み、酒癖が悪いとの噂はほっといて、どんどん注いでは呑ませ、その「LAタイム」とやらを問いただすと、「OhーYaー」と悪びれるようしもなく、アメリカの中でも特集なんだと他人事のように説明する。
これ以上この話を引っ張ったところで得るものは何もないと見切りをつけて今後の予定を聞いてみる。
まずはアメリカの実家に戻りその足で弟の住んでいるテネシーに行き一週間過ごすと。その後ヨーロッパに渡り、アムステルダムじゃら二ヶ月彼女と一緒にヨーロッパを巡るという。その後は彼女と別々に行動し、一人で更に東部のヨーロッパをめぐり、半年間は旅でいろんなものをみてまわるという。
その後は上海に移り、自分でオフィスを始めようと考えているという。
30歳を超えて、10年近く建築の世界に身をおき、建築の実務と現実の厳しさも十分に分かり、自分でできることと足りてないこと。そして今後の向かう先をはっきりさせることがその年齢の建築家には必要で、往々にその時期に長く勤めた事務所をやめて、長い時間を旅に費やす建築家は比較的多い。
純粋にそういう時間を持てる彼を羨ましくも思いながら、また過ごした時間を懐かしくも思いながら話を進める。
ウイスキー好きの彼だけあり、「テネシーといえばジャック・ダニエルだろ」と話を振ると、「ジャック・ダニエルがどう死んだか?」について話をはじめ、「酒癖の悪い自分も気をつけないと」と笑い飛ばしている様子をみると、あまり気を遣って生きる日本人は損をしているなと思わずにいられない。
またどこかで会うだろうなという予感と、また会ってもきっと今と変わらずに飄々としているんだろうなという確信と伝えてフェアウェルを終了する。
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