2014年6月4日水曜日

サン・マルコ寺院 (Basilica di San Marco) 1090 ★★★★


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所在地  ヴェネツィア(Venezia)
竣工   1090
機能   教会
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ベニスの中心のサン・マルコ広場。その正面に鎮座するのはその名前の由来となるサン・マルコ寺院 (Basilica di San Marco) 。もちろんその寺院はこの街の守護神でもある福音記者マルコに捧げられるべくして設計された。このベニスで最も有名で最も重要な教会である。

現在は改修中のこの建物。最初のベニス訪問時に内部を見学したが、内部の床がフラットでないことに、コルビュジェのロンシャンの礼拝堂の床の体験を重ね合わせ、移動するたびに反響する自らの足音に、音の空間に感銘を受けたことを強く思い出す。

そんなサン・マルコ寺院であるが、なぜ他の教会と違い「寺院」と呼ばれているのか、改めて考えると分からない。そこで調べてみると、下記の様になっているようである。

教会:キリスト教徒が集まりミサをする場所を呼び、小さなところから大聖堂まで様々である。

聖堂:上記の教会の中で、ミサを行う部分のことを呼ぶ。というのも、教会には聖堂部分以外に、神父の居住空間や信徒の活動に供される空間があるため。

大聖堂:英語で言うと「カテドラル(Cathedral)」と呼ばれるものであり、上記の聖堂の中でも、内陣中央に司教座(司教の座る席)を持つ聖堂のことをいう。つまりは司教が神父を務める教会のことを指すという。

では「司教」とは何かとなると、カトリック教会の位の一つで、ある司教区(教区)を監督する聖務職のことというから、必然的にその司教がいる大聖堂というのは、地域でもかなり位の高い、威厳のある教会ということにある。

寺院: これは仏教同様に、宗教施設の総称に使われるので、上記のどれでも寺院となるようである。

では、なぜこの教会が他と違って寺院と呼ばれるのか?

元々の建設は1084年から1117年にかけておこわなれ、ビザンティン建築を代表する建物であったという。長い年月の後の1807年からはヴェネツィア大司教座が置かれることになり、正式には「サン・マルコ大聖堂(Basilica Cattedrale Patriarcale di San Marc)」と呼ばれているというが、800年近い年月に渡り司教座聖堂(大聖堂)ではなかったために、歴史上の呼称に合わせ、「寺院」と呼ばれているという。恐らく日本語に訳する時に寺院というのが定着したが、上記の流れていけば、「サン・マルコ教会」と呼ばれていてもおかしくはなかったのかと思われる。

さらっと流してみたが、ビザンティン様式として、東ローマ帝国の首都コンスタンティノープル(現在のトルコの都市イスタンブール)にあった聖使徒大聖堂を模して、建てられたといわれている。

1090年代に建設された聖堂は十字形平面であり、平面を見ても分かるように、十字の各腕の長さが等しい形をしている。このタイプの十字形はギリシャ十字と呼ばれ、真ん中に重心を持つ安定した形状として主に、正教会やビザンティン建築の聖堂で多く見られる形状である。

その中心部には円蓋と呼ばれるドームを持つクロス・ドーム形式と呼ばれる建築構成であり、この形式は由緒正しいビザンティン建築と呼ばれているという。同じタイプの建築としては先日訪れたロシアのモスクワにある、救世主ハリストス大聖堂(Cathedral of Christ the Saviour) がこのギリシャ十字の聖堂となっている。

ギリシャ十字が安定した対称形に対して、下部が長く延びているのがラテン十字であり、アプローチから長い身廊を通って辿りつく先に十字の交差部が置かれているという、奥行きのある構成であり、主に西方教会(カトリック教会・聖公会・プロテスタント)で多く見られる形式である。
 
サン・マルコ広場に面した5つのアーチ。近づくとさらにスケールを変えて見えてくる様々な装飾。1000年以上もの歴史を経ても、多くの教徒がこの場所に足を運び神の存在を感じるというのが分かるような力を持った建築である。








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