スカルパの至極の中庭を満喫し、細い路地を抜けて展示会場となるアーセナーレ(Arsenale)に向かう。我々MAD Architectsが進行中の南京でのプロジェクトを展示している北京市パヴィリオンはアーセナーレ会場の北側に位置している為に、通常の南側の入口ではなく北側の入口から向かうことにする。
というのは、アーセナーレは海洋大国として繁栄したヴェネツィア共和国の重要な役割と果たした施設であり、それは造船所であり海軍の施設としても使われてきた場所である。その為に施設の中心には外部の海が引き込まれている為に、南のエントランスから入場すると中央の水に沿うようにしてL字に配置される空間に展開されるメインの展示会場。そして水を渡った先の倉庫の様な空間にいくつかのパヴィリオンが配置されている。
展覧会が正式に開幕した後は、南側の岸から30分に一度連絡線がこの北側の岸へと無料で渡ることができ、そしてこの北側からは更に海沿いに船を進め、ジャルディーニ会場まで移動することが出来るようになるのだが、如何せん準備期間は船が出ていないためにどうしても北側からの入場となる訳である。
お陰で普通見ることの無いアーセナーレの外壁に沿った北側は、壁から持ち出した簡易な足場の様な道となっており、なかなか貴重な体験をすることができる。造船所と言うだけに、天井もかなり高く設定されており、その一番奥に位置する北京市パヴィリオンへと足を進める。手前はBeijing Design Weekが中心となって北京市についての展示が行われており、その奥にMADの南京市プロジェクトの展示空間となっている。
中国で制作して輸送し、こちらで設置をした大きな模型とその周囲に天井から吊るす紙のスリットも巧く設置できており、前入りして地元の業者とやり取りをして設置をしていたイタリア人スタッフの苦労に思いを馳せる。
ビエンナーレは各国パヴィリオンが立ち並ぶジャルディーニがメインの会場としての役割と持ち、そこから徒歩で10分の位置にあるこちらのアーセナーレは各国パヴィリオンとは離れ、メイン・キュレーターが直接手がける展示が大きく展開するのと共に、開催国であるイタリアもこちらの会場で独自のパヴィリオンを確保して展示を繰り広げる。ジャルディーニで自国パヴィリオンを持たない中国なども、こちらの会場で展示を展開し、その中国パヴィリオンとは別に今回我々が参加した北京市パヴィリオンなどの独自パヴィリオンなどもこちらの会場に集まっている。
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そんな訳で二日目に再度足を運んだアーセナーレ。今度は南のエントランスから入り、クールハースが直接キュレーションを担当した「モンディタリア (Monditalia、イタリア世界)」と名づけられた展示を見ていく。入口近くではクールハースがテレビのインタビューを受けていたりと、明日に迫ったメディア用のオープニングへの雰囲気が高まっているのを感じることが出来る。
今年は建築展の開催期間を延ばし、開幕を夏前にして同時に開催されるダンス・ビエンナーレとの融合を図るというだけに、準備が進む会場の中ではところどころでダンサーの人の姿を見ることが出来る。
会場を見ていくと、6年前のビエンナーレはもっと模型が多く、大掛かりな展示が多かったのに対して、今年の展示は比較的データを見せるような紙媒体やプロジェクターを使った映像での展示が多いのに気がつく。パートナーとも、「今年はスポンサーが集まらず、資金が乏しかったのだろう」と勝手な想像を言いながら全体を見て回る。
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滞在三日目。メディア用のオープニングの初日に新ためて会場に足を運ぶと、昨日とは違い多くの人の姿も見られ随分華やかな雰囲気に包まれる。どの展示も見事に完成しており、昨晩遅くまでかかって準備をしていたのだろうと想像しながら再度会場を歩いて回る。
このアーセナーレ。L字の先に更に奥まったところにイタリアと中国パヴィリオンがあり、更に船で岸を渡ったところに北京市パヴィリオンなどもあるので、炎天下の下歩いて回っていると相当な疲労を感じることになる。
その疲れを癒すのに丁度いいのが、会場中心に位置するオープン・カフェ。丁度その手前を歩いていると、パートナーがすれ違うMVRDVのヴィニー・マース (Winy Maas)に声をかけ、せっかくだからと一緒にお茶をすることに。
MVRDVとは昨年行っていたロッテルダムのコンペティションで最後まで争い、結局ごたごたがあった後に彼らが一等、我々が二等という結果になったこともあり、「おめでとう。その後あのプロジェクトは進んでいるの?」なんて話をする。パートナーのマーは、様々なところでのイベントで一緒になる機会も多いらしく、随分親しい様子である。
思えば学生時代に怪しいバイトをしながら渡ったヨーロッパで親友と共に見に行ったのが彼らの最初のプロジェクトであるVilla VPRO。建築の可能性を追求しているその姿に、どうしても日本の建築との違いを感じずにいられず、折角建築の世界に身を置くのならそういうワクワクするような建築を設計できる事務所で働いてみたいとヨーロッパに渡ったのだが、結局応募することなく巡りめぐってこうして話ができるようになったのも何かの縁だろうと思いながら暫しの休みを満喫する。
そうしていると一人の建築家が親しそうにヴィニーに話しかけてくる。よくよく話すと、ザハ・ハディド事務所に在籍している時に担当していた北京でのコンペの仕事で、協同することになったMVRDV事務所の担当者として来ていたチリ人建築家で、マーも一緒になって「懐かしいな」と再開を喜ぶ。
今はチリに戻って自分で事務所を開いているというが、今回はチリの展示に関係している為にやってきているのだという。こうして懐かしい顔に合えるのもまたベニス・ビエンナーレの醍醐味でもあるだろうと思いながら、熱い夏の足音を楽しむことにする。
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二日目
モンディタリア (Monditalia、イタリア世界)
取材を受けるクールハース
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三日目
ヴィニー・マース (Winy Maas)
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