2014年6月3日火曜日

「ドミノ」 恩田陸 2004 ★

貫井徳郎による「乱反射」を思い出させる群像劇。

一見無関係な人々が、些細なことで繋がって、ある事件の一点に収束していくその求心力。無関係な人々がそれぞれが主役として自らの日常を生きている大都市で生活をしていたら、何かのきっかけで横をすれ違うまったく接点のなかった人たちが巻き込まれていく物語を書きたくなる衝動はなんとなく理解できる気がする。

それが都市の魅力でもあるから。まったく接点を持たない人と、ある日突然関係を持つことになる可能性があること。それが良い関係も悪い関係もあるのが都市。

だからこそ多くの作家がこの群像劇に引かれ、それを題材として自らの想像力を駆使し、今まで誰も描かなかった収束点、個として散らばっていた点をつなげ、物語の中に徐々に線を引いていき、最後には広大な面を展開してみたい。その欲求は非常に理解できる。

しかし、群像を関係づけて、バラバラに見ていた事象を物語として昇華させる。その点が主題になってしまい、決して強い物語の背景がある訳ではなく、作家としてテクニックを競う舞台となってしまうのがこの群像劇の難しさ。

そしてこの一作もまた、これだけ多く関係性の無い登場人物を、最初から最後まで頭の中で理解し、使い分けで読み進めろと読者に共用するのはあまりにも自分勝手な振る舞いなのではと思わずにいられない。

そりゃ自分はそのアイデアに興奮し、妄想し、何ヶ月もかけて登場人物を作り上げ、それぞれを結ぶ線を作り出し、徐々にそれらの線を編みこんで面にしていく作業を繰り返しているからこそ、各登場人物を把握することが可能だが、それを真っ白なところからいきなり理解してついて来いというスタンスはやはり好きにはなれないと理解する一作である。

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