2014年6月26日木曜日

「弱者の居場所がない社会――貧困・格差と社会的包摂」 阿部彩 2011 ★

格差、貧困、孤立、孤独死、限界集落、極点社会、無縁・・・

この10年にわたる様々なキャンペーンのお陰ですっかり社会に定着したこの言葉たち。建築という社会を向こうにがっつり組み合って毎日の業務をこなす職業についていると、どうしても現代社会の抱える問題に目を向けなければならない。

細切れにされたそれぞれのテーマについて、少しずつ本を読み理解を深めて、やっとことの本質がおぼろげながら見えてきたこのごろ。また流行り言葉の一つとして、先進国であると叫ばれるアメリカからの言葉の輸入である「包括」「包摂」をテーマにしてこの一冊も、現代の社会を感じる必須本かと想い手にとって見る。

しかし・・・

アメリカでの研究が長かったのか、あまりに論点があやふやで、文章が稚拙に思えてしまったその内容。「承認」「排除」「包摂」に「包括」という、アメリカで使われ始めた言葉たちを、そのコンセプトとともに日本に紹介するという方式が全面に出すぎて、今まで様々なところで語りつくされた現在の貧困や格差に関する考察ばかりで、これといってなんら新しい現象も分析も提案も見られない。

やはりそれだけこの問題が複雑で一分野からの分析では捕らえられないのだろうと再認識してページを閉じる。
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■目次
プロローグ 社会的包摂と震災
第1章 生活崩壊の実態
/衣食住の崩壊
/公共料金、保険料、借金
/貧困は健康を蝕む
/震災の長期的影響

第2章 「最低生活」を考える
/「貧困」ってなに?
/貧困の定義
/「最低限の生活」に必要なおカネ
/ミニマム・インカム・スタンダード

第3章 「つながり」「役割」「居場所」
/社会的排除と社会的包括
/関係からの排除ーつながりがあるということ
/仕事からの排除ー役割があること
/場所からの排除ー居場所があること

第4章 本当はこわい格差の話
/排除と格差
/格差と人間関係
/格差とコミュニティ
/格差と健康
/格差の増幅
/日本の格差は海外でどう考えられているか?

第5章 包摂政策を考える
/ホームレスのかっちゃん
/これまでの社会保障を考える
/社会のユニバーサル・デザイン化
/ユニバーサル・デザインな働き方は夢か?

第6章 インクルーシブな復興に向けて
/阪神・淡路大震災の教訓
/震災後の社会政策を考える
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