会津に足を運んだ目的といわれればこの建築が見てみたかったといっても過言ではないほど、雑誌やネットで見る姿は独特の趣を持ち、まさに常識を覆して新しいものを作り出したその作り手の心意気を感じずにいられない作品。
そんな訳でこの作品が見たいが為に、大雪の予報を無視してまでレンタカーを飛ばしてやってきた会津若松。本来なら朝ごはんも食べずに早朝から喜多方の願成寺、熊野神社長床、勝常寺と廻って日の低いうちに寺社を回ってしまおうと淡い期待を胸に迎えた朝だったが、雪国以外から来たものにとってはあっけないくらいの高さに積もった雪は、タイヤと大地の接点にかかる摩擦係数をどれほど軽減してしまうかを学ぶのに十分だった。最寄駐車場に車を入れるのさえ冷や汗をかきながら、「ここを見なければ、何のために会津くんだりまで足を運んだのか分からなくなる」と心に決めて上る参道。
途中の土産屋のおじさんに「今度は桜の季節に来てくなんしょ。」と、大河で聞きなれ始めた会津弁で少しだけ心を暖かくしてもらい、なんとか気持ちを振り絞りながら上りきった先に見えてくる雪に埋もれたさざえ堂。
先日、埼玉で見つけたさざえ堂で既に学習済みであったように、江戸末期に何故だか流行りだしたお堂建築の一様式。仏教の礼法である右繞三匝(うにょうさんぞう)に基づいて、右に巡りながら上がっていくと沢山のお寺を代表する仏像に参拝することができ、ぐるりと上がって降りる間に参拝することで、沢山のご利益をうけることができるという効率を高めたお堂形式。
そのさざえ堂の中でも、二重らせん構造をもつのはこの会津のさざえ堂(旧正宗寺円通三匝堂)しか無く、日本の建築史上で言っても得意な空間が生み出されている。
という訳で、その内部空間を見ることが一番の目的だったが、その降りしきる雪の中、恐らく後2時間はやってこないであろうお堂を空ける係員を待つことは命に関わることになると判断し、先ほど簡単に登った坂道に足をとられながら、何度もお尻をぬらしつつ駐車場まで戻ることにする。
ぜひとも、次は桜の季節に訪れて、内部をじっくり歩くことにしたいものである。
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所在地 福島県喜多方市慶徳町新宮字熊野
宗派 真言宗
寺格 準別格本山
創建 1796
機能 寺社
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