2013年2月13日水曜日

石の美術館 隈研吾 2000 ★★★

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所在地  栃木県那須郡那須町大字芦野
設計   隈研吾
竣工   2000
機能   美術館
延床面積 528㎡
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「石の美術館」と非常に思い切りのいいネーミング通り、「石」を使ってどう空間を作れるか、その一点に特化した建築だけあって、非常に迷いのなさが感じられる。

雪あがりの平日の昼間にこんなところまで訪れてくるのは、仕事の無い建築家か、時間をもてあます引退団塊かのどちらかといことが、中に入っていくと受付の方が、「ひょっとして先ほど電話くれた方ですか?」と。ということは先ほど電話したのが1時間半ほど前なので、その間誰も訪問者がいなかったに違いないと変に勘ぐってしまったが、とにかく周りに気にすることなくゆっくり見て回れることができる良い雰囲気。

石材屋が知り合ったお洒落な建築家に、なんとか良いプロモーションになるように、どーんと好きなだけ石を使って人を呼べるような場所をつくってくださいよ。と豪快に言ったかは知らないが、施主の人柄が感じられるようなおおらかな空間が迎えてくれる。

「敷いたり、貼ったりするような、そんなみみっちい使い方はしたくない。」と言わんばかりに、組積造とルーバーという「石の使い方の常識」を覆す方向で行くとまずは決定事項があったのだろうと想像する徹底した潔さ。

建築家の性格がそうさせるのか、それともミニマルなユニットをリピートさせることがモダン・ジャパニーズ空間を生まれさせる、という設計事務所の方針なのかは知らないが、とにかく潔い。このディテール一点をやって、それだけで空間を作る。ただし、そのディテールにはできる限りの執念を傾ける。そしてそれ以外はそっけないほど、何もしていない、ような表情をつくるデザインをする。

確かに地元の芦野石を、その強度ぎりぎりまで薄くスライスしたと言われるルーバーは鉄板の力を借りてその水平性を強調し、既存の蔵の瓦屋根との差異化のためにと石の直線性を表現するフラットルーフは、軽量化のために細かい木梁がかけられる。石と同様鋭いばかりに直線性を表現するガラスは石倉の中に入れ子のボックスとして隠される。

「石」が表現に成らずに「風景」そのものになるために、様々な近代素材の力を借りる徹底ぶり。「石」を「石」とさせるもう一つの特徴であるテクスチャー。それも場所場所によって微妙に制御されながら表情を変えていく。担当者が何度も何度も、頭の中で壁に指を当てながら歩いた痕跡が感じられる非常に好感の持てる空間。

このくらいの規模で、同じく「石」をテーマにした空間を自分で設計するならどうするか?そんなことを考えさせられてしまう素晴らしい建築作品。






































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