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所在地 埼玉県熊谷市妻沼
宗派 真言宗
寺格 準別格本山
創建 1179
機能 寺社
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百体観音成身院で「ぜひとも」と勧められたので、地元情報ほど正しいものはないと、これはなんとしても見逃すことができないと車を向かわせると、近づくほどに門前町の雰囲気が感じられ、「これは間違いない」と確信しながら駐車場へと車を滑らせる。すったもんだの末で、16時過ぎについたので余裕を持っていたらそれは歓喜院の本坊で、聖天山は道を渡った方だということで急いで境内に向かうと、如何にもここから有料です的なところの扉を閉めようとしているおじさんの姿を発見。
「ちょっとまった」と近づいてみると、「16時閉門だよ」というので、「国宝見れずに帰れません」と頼み込むと、「一人?700円ぴったりあるの?」というので、海外からの一時帰国者特有の小銭が多くなってしまう状況だったのも助け、「あそこで説明始まってるからすぐに追いついて!」という言葉に押されダッシュで合流。
いかにもこういうものが好きそうなボランティアガイドのおじさんが、お婆さんと娘さんという体の二人組みに説明をしているところに参加。
説明によれば、東照宮を手がけた同じ職人グループが、東照宮から100年後の江戸の安定期に仕事を発注され、より遊び心満載の名作を掘り出したのがこの聖天山で、その修復が終わった2012年に本殿が見事に国宝に指定されたという。
ちなみにここは日本三大聖天に数えられるらしく、他の二つは台東の本龍院と、奈良の宝山寺だという。これはこれはぜひとも行かないといけないところが増えてしまったとほくそ笑む。
ちなみに似ているのはその彫刻だけでなk、建物の造りも権現造といい、日光東照宮と同じ拝殿と本殿が一体化された寺社の形式であり、建築士試験の時に頭の痛くなるほど覚えこんだ知識を引っ張り出すことになる。
そんなことを思い出しながら続いて説明を聞いていくと、兎にも角にもこの彫刻は「阿吽」でできており、南面の上部に掘られた鳥は口を開けており、北面に彫られた同じ鳥は今度は口を閉じているという。南面は基本的に冬から春を表現し、桜や梅などのモチーフが散りばめられる。そして七福神の面々が季節ごとに様々なアクティビティを見せてくれる。
本殿を支える垂木を支える猿の彫刻が、4 x 3のはずがなぜか13体になってしまっており、それはしっかり観察して答えを見つけてくださいね、などとなかなか聞き入ってしまう説明に耳を傾ける。
北面まで見終えて今度は拝殿正面の唐破風の下の彫刻へとぐるっと廻ってくる。寺の正面を守るだけあり、ここも「阿吽」が散りばめられており、掘り出された様々な動物の目が、境内にどこにいても見つめているという説明もなんだか納得してしまう。梁を加えた鬼は、ちゃんと耳で阿吽を表現。
唯一阿吽になっていない魚の謎を説明してくれるのだが、最初は出世魚の一種である龍が、鯉から姿を変えて最後は龍になるので、口を閉じている鯉と口を開けている龍でやはり阿吽になっているという。時間軸を利用しての「阿吽」という解釈もなかなかにくいが、その前は別の説明をしていたという。
そちらの解釈もなかなかとんちが聞いていて好きなのだが、口を閉じている鯉の口をあけるには、どうしたらいいですか?というので、「お賽銭ですか?」というと、「鯉に餌、寺にお賽銭。お賽銭を入れてくれることがお寺を守ることになるということで阿吽だったのでは」と説明していたらしいが、「不謹慎だ!」というクレームが入ったらしく先ほどの説明に変えたという。
どんなエンターテイメントよりも、こんな話のほうがよっぽど面白く、いくらネットで同じ文章を読んだとしても、結局頭には入ってこずに、現地でこのようにして海馬にひっかかっては物語として記憶化されていくのだろうととても納得しながら、ここも忘れずにと言われていた貴惣門の彫刻を堪能して最後の目的地へと足を向ける。
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