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Production: National Centre for the Performing Arts
Composer: Gioachino Antonio Rossini
Libretto: Angelo Anelli, Luigi Mosca
Conductor: Gianluca Martinenghi
Director: Giancarlo Del Monaco
Set Design: William Orlandi
Costume Design: William Orlandi
Lighting Design: Vinicio Cheli
Chorus: NCPA Chorus
Orchestra: NCPA Orchestra
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という言葉を発するようになった状況に驚きを感じると共に、来年も引き続き舞台芸術を日常の中で接するようにしていくだろうと確信して過ごす師走。
日本から戻ってきたばかりの週末。少しゆっくりした時間の最後を締めくくる為に電動スクーターで肌の切れそうなくらい寒くなってきた夜の北京の街を抜けて妻を後ろに乗せて向かうオペラハウス。
今回もメンターの薦めによってチケットを購入してやってきたのだが、このオペラ。イタリア人作曲家のジョアキーノ・ロッシーニ(Gioachino Antonio Rossini, 1792年1868年)の代表作だという。
「ロッシーニ、ロッシーニ・・・」とオペラ素人の自分でもなんだか聞いたことがある名前だと思えるくらいの有名人。これはぜひとも海馬に覚えこませようと画像も一緒に検索してみる。ちなみに次の日にオフィスでイタリア人を捕まえて、「先日見てきたよムッソーニ」と間違いを犯し、「ムッソリーニ?」と言われてしまい、まだまだ海馬への定着率が低い事を認識する。
とにかく数多くの人気オペラを作曲した天才らしく、「セビリアの理髪師」や「ウィリアム・テル」などのどこかで耳にした事のある演目もまたロッシーニ作だという。「セビリアの理髪師」といえば、「フィガロの結婚」と並び、フィガロの生涯を描いた3部作の一つであり、これもいつかぜひ観劇してみたいものである。
そして演目である「アルジェのイタリア女」。英語では「The Italian Girl in Algiers」であり、イタリア語では「L'Italiana in Algeri」。「幕間が一度しかないな?」と思っていたが、2幕からなるオペラということを知り納得。
調べてみるとこれは「オペラ・ブッファ」と呼ばれる形態のオペラだという。「オペラ・ブッファ?」と調べてみると、世俗的な内容の喜劇オペラであり、庶民が主人公となる事が多く、その代表作としてもやはり「セビリアの理髪師」などが挙げられるという。
その内容は?というと、どのオペラも基本的にはエロの権力者が若くて綺麗な女性を追い回すが、あれやこれやでうまくいかないという流れなのかと思ってしまう。今回の舞台はイタリアの南に位置するアフリカ大陸の国・アルジェリアの首都アルジェ。そしてエロ権力者の役はそのアルジェの太守であるムスタファ。自分の妻をなんとか追い出し、若くてセクシーなイタリア女を手に入れようとする強欲ぶり。
そんなところに本来なら地中海で船が難破して囚われることになるイタリア女のイザベラやその連れであるタッデオ。そしてなぜか先にアルジェで奴隷の身に落ちているイザベラの恋人であるリンドーロなどがあれやこれやの手を尽くしてムスタフォの手から逃げ仰せ、無事にイタリアの地へと戻っていくというお話。
オペラの大ホールではなく、小さなホールでの上演で、3階席でも十分に近い距離で演者とオーケストラを感じる事ができる。しかもオーケストラの周りをキャットウォークがぐるりと取り囲み、オーケストラピットに演者が下りていったり、観客席から登場したりとなんともミュージカル的な演出も見られて飽きる事は無い。
素人でもこれが随分現代的にアレンジがされているプロダクションだと分かるように、難破する船ではなく墜落する飛行機の設定で、かなり時代設定がめちゃめちゃのようである。ベースボールキャップを被りダンベルで男らしさを演出するムスタファ。
イザベラはイタリア女を強調するかのように、腰に手をあて、いたるところでポーズを決めて格好つけるが、どうもその姿が片桐はいりを思い出せ、心の中で「まめぶ・・・」とつぶやいてしまって、どうも美人という設定に入り込めないまま演目は進む。
とにかく舞台の様々な場所で、様々な人が同時に色んなことをする。黒子役が仮面舞踏会のマスクを被り、なんとも可愛らしい衣装に身を包みながら舞台のあちこちでポーズを決めていたりと、何とも楽しげなオペラである。
音楽と服飾と踊りと歌が一体になって、独自では描けない壮大な芸術作品を作り上げているのが良く分かり、「これがオペラの醍醐味か・・・」と納得するのに十分なスペクタクル。これらの同時進行する複雑な芸術をいったいどうやって作曲し、作り上げていったのかとても想像できないが、とにかく眠りに落ちることなく幕間を迎える。
同じく楽しんだ様子の妻と一緒に階下のカフェに向かうとメンター夫妻も出てきた感想を伝えると、「とにかく過剰。酷い。オリジナルの設定もあったもんじゃない」と少々お怒りの様子。「過剰かもしれないけど、我々には十分楽しめたけどね」というと、なんともにこやかな笑顔を返してくれる。
その過剰感が徐々に分かるようになってきた後半ではあるが、それでも飽きることなく、かつアルファ波にやられることなく最後まで終えて外にでると、メンターが「分かった、ダイレクターがゲイに違いない。セーラーの格好でぴんと来た」となんだか嬉しそう。
兎にも角にも我々夫婦の知的レベルの低さのお陰か、十分に感覚的に楽しめたオペラ。オリジナルからは随分離れてしまっているかも知れないが、これはこれでいいと思える内容。いつか別のプロダクションを見て、その時に違いを感じればいいと思いながら来週の期待大のオーケストラでの会いましょうと挨拶をして、極寒の街を飛ばして家路に着くことにする。
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