2013年12月14日土曜日

コンサート 「Hüseyin Sermet Piano Recital Piano Virtuosos」 NCPA 2013 ★★★★

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Programme

Papillons, Op. 2 Schumann
Scottish Fantasy in F sharp minor Op. 28   Mendelssohn
   
 ——Intermission——  
Pictures at an Exhibition   Mussorgsky
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今年最後のNCPA。

そして何度も足を運んだ中で今年一番だったと思えるコンサートで最後を飾れたのはとても幸福だと思う。

今日はコンサート・ホールにてピアノ・ソロ。なので調べる情報も比較的シンプル。まずは何と言っても、主役であるピアニスト。フセイン・セルメット(Hüseyin Sermet、1955年-)というトルコ人のピアニスト。随分前にメンターが、「NCPAのカレンダーの名前表記が間違っていたから気がつかなかったが、彼は凄いピアニストだからぜひチケットを買ったほうがいい」と強く勧めてくれたピアニストである。

イスタンブール出身というセルメット。日本でも何度も演奏を行っているようで、人気も高いようであるが、とにかくトルコを代表するピアニストの一人だという。

前半一曲目は「Papillons, Op. 2 / Schumann」

シューマンと聞けば有名作曲家の一人だとは知っているがそれ以上は・・・となるとあまりにもあやふやな状態なので調べてみる。ロベルト・シューマン(Robert Schumann, 1810年 - 1856年)はドイツの作曲家で、ピアノ曲の作曲家として世に出たという。その作品番号の1から23番まではすべてピアノ曲。顔を見る限りかなりのイケメンだったようである。

そして今日演奏されるのは、そのシューマンの作曲した「蝶々(Papillons)」。「Op. 2」が何を意味するか良く分からないので放っておくことにする。「蝶々(Papillons)」はシューマンの作曲したピアノ曲で、全12曲からなるという。「曲の中にさらに12曲??」と思ってしまうが、「12曲が合わさって一つの全体を作っている」ということだろうと理解する。


前半二曲目は「Scottish Fantasy in F sharp minor Op. 28   Mendelssohn」

シューマン同様、メンデルスゾーン(Mendelssohn)についても詳しいことは知らない。調べてみるとフェリックス・メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn 1809年 - 1847年)、ほとんどシューマンと活動時期が被っている。しかも同じドイツに生まれたユダヤ人作曲家。恐らくライバル関係にあったか、良き親友だったに違いないと想像する。写真を見る限り、シューマンとは打って変わってなんとも優しい顔をしている。

そして演奏されるのは「Scottish Fantasy in F sharp minor Op. 28」とプログラムには書いてあるのだが、これがうまく見つからない。恐らく表記ミスではないかと思う。調べるとメンデルゾーンでは「Fantasy for piano in F sharp minor, Op. 28」というのはあるようだが、それがスコットランド幻想曲(Schottische Fantasie)として呼ばれているのか?それとも、スコットランド幻想曲(Schottische Fantasie)はマックス・ブルッフの作品で、表記の間違いであるだけなのか、こういうのがクラシックを聞くのを億劫にする要因であるのだな・・・と思いながらとにかく先に進む。


そして幕間を挟んでなんといっても今日のメインは後半。「Pictures at an Exhibition   Mussorgsky」

モデスト・ムソルグスキー( Modest Mussorgsky, 1839年 - 1881年)の名は恥ずかしながら今日の今日まで聞いたことが無く、上記の二人に比べてもマイナーなのでは?と思わずにいられないが調べてみるとそうでもないらしい。

ロシアの作曲家であるムソルグスキーはシューマンやメンデルゾーンに遅れること30年。1世代下の作曲家となる。「ロシア五人組」の一人というらしいが、それもまったく知らない。ロシアへの距離の遠さを改めて感じつつ、コンペもやっていることだし、この機会にロシア文化を少し調べないとと心に決める。

そして演奏されるのは代表作であるピアノ組曲「展覧会の絵(Pictures at an Exhibition)」

「タン・タン・タン・タララン・タララン・タ・タン・タン・タン」

何とも心地よいメロディ。どこかで聴いたことがあると思うその調べはやはりコカ・コーラの『紅茶花伝』やキャノンの『IXY600F』など、日本のCMでも多く使われて日本人なら一度は耳にしたことがあるのではないかと思う一曲。これほどメジャーな曲なのに、なぜ今まで作曲家の名前に出くわさなかったのだろうと頭を抱えて写真を見てみると、流石はロシア。凶暴な熊のような風貌で、そのどこにこんな繊細な音楽を生み出す感性があったのだろうと思わずにいられない。

この「展覧会の絵」。特徴的なそのタイトルの通り、ムソルグスキーが友達の画家であるハルトマンの展覧会に足を運び、10枚の絵を歩きながら見て回った時の印象を音楽にしたというピアノ組曲。オープニングで流れる、一番耳に残っている部分でもある「プロムナード(Promenade)」は絵の間を歩いている様子を描写しているらしく、10枚の絵の間を歩くように、曲中に何度も何度も表れて句読点の様に作用する。


以上が本日の基本知識。という訳で何ヶ月振りにオフィスに足を運ばない日曜を過ごし、少し早めの夕食を済ませて妻を後ろに乗せて電動スクーターで中心道路を走っていると、全ての交差点に赤い棒を持った警察が立っている。中心に近づけば近づくほどその数は増えて、ついに停められてしまう。なんでも「車道は走るな。歩道を走れ」と。恐らく超VIPの人物が訪中しており、中心部で会議などをしている為に警戒を高め、少しでもテロなどの恐れがありそうだと思うものは取り締まっているのだろうと想像する。

しょうがないので少し歩道を走って次の交差点に到着するとまた停められて、今度は「スクーターは二人乗りは禁止されているから、下りなさい」と・・・。「はぁ・・・」と思い、妻を降ろし、スクーターを引きながら少々歩く。恐らく重要施設が面する中心道路は、とにかく今日は規制を厳しくしていて、天安門前を通ることは叶わないだろうと判断し、かなり遠回りになるが、天安門を迂回して裏の下町を抜けていく事にする。

暗闇の中に潜む数々の警察官の姿。その行動原理が自分達の常識とは違っていると理解すると、街中に張り巡らされた緊張感が直接身体に伝わってくるようで、風景も違って見えてしまう。なんとか迂回し、無事にオペラハウスに到着したのは予定よりも20分ほど遅れた開演20分前。

いつもの様にメンターご夫妻と合流し、中に入ってみると偶然にも別々に購入したチケットにも関わらず、たまたま隣の席に。「こんな偶然あるんですね」なんていいあっていると徐々に照明が落とされ会場のザワツキが少しずつ小さくなっていく。

日常からコンサートの空間へ変わるこの瞬間。人々がまだお喋りや携帯などをいじっている普段の振る舞いから、コンサートを楽しむ静かな観客へと会場全体が空気を変えていくこの瞬間はなんとも言えない時間である。徐々に緊張感と期待感が会場を包んでいく。それに応えるかのように音楽家が登場する。「さて、今日はどんな音に出遭えるのか?」と。

前半。いつもの様にアルファ波に包まれて半分眠りの中でもなんとか意識の中で音を捉えていたらいつの間にか終わってしまいやってきた幕間。メンターの大好物のジェラートを食べながら後半に備えながら、「寝てたでしょ?」と妻に突っ込まれる。

そして眠気も吹っ飛び、集中して聴けたからではないだろうが、とにかく素晴らしかった後半。ピアニストの鍵盤の下に手を隠すような仕草や、激しく上まで糸を引くように手を持ち上げる様子。空間の中で徐々に小さくなるが、確実に「音」が漂っているのを観客に確認させるようなものすごい「間」。

その自ら創り出した緊張感を会場全体と共有させる。通常数百人の観客がいるのだから、誰かがどこかで咳き込んだり、ガサガサと動いたりとするのが当たり前のコンサート・ホール。そんな中で確実に数十秒間ほどの時間、会場から全てのノイズが消える瞬間が何度も訪れた。錯覚なのかもしれないし、自分が集中していてノイズを聴こえないように脳が働いていたのかも知れないが、全てのノイズが聴こえなくなる。もしくは会場の誰もが緊張感の為に身動きが取れないのか、いずれにせよ凄い瞬間を何度も体験する事ができた。

ビリビリとした会場の緊張感が感じられる、素晴らしい演奏。その度に違った風景が頭の中に見えてくる。「アバター」と「チャーリーとチョコレート工場」、「ビッグフィッシュ」を足したようなオドロオドロシイ風景。巨大な植物が色とりどりに咲き誇るようなジャングルの中を歩いていて、それでいて心地よいファンタジーの世界。

そんな世界を見せられて後にふと訪れる「プロムナード(Promenade)」。まるで現実に引き戻すかのような作用を感じながら次の曲。次の絵に意識を向ける。とにかく素晴らしい演奏。アンコールで披露したのは声が聞き取れなかったので何の曲か分からなかったが、「小さいころに良く演奏した曲」らしく、短いがとても印象的な曲であった。

とても幸せな気分になり、「タン・タン・タン・タララン・タララン・タ・タン・タン・タン」と口ずさんで会場を出ようとすると、横で妻がまたまた悪意のある笑顔で笑っている。「外れてた?」と聴くと、「別に別に」と・・・

厳しい取締りの為に余計な遠回りを強いられた為に、家まで残り3km程のところで残念ながら電池切れ。妻はタクシーに乗って先に帰り、自分はキックボードの様に地面を蹴りながら最後のともし火で動くスクーターを押しながら家に帰って早速インターネットで「展覧会の絵(Pictures at an Exhibition)」を検索。

便利な世の中になったものだと思うが、権利の問題などもクリアしてフリーでダウンロードできるサイトが幾つかあるようで、さっそくパソコンに取り込んで「タン・タン・タン・タララン・タララン・タ・タン・タン・タン」と足湯をしながら口ずさむことにする。



シューマン

メンデルゾーン

ムソルグスキー



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