建築家として日々実務に追われていると、どうしても目の前の仕事だけに視界を覆われてしまい、日常手がけている内容の範囲にだけ頭を奪われ、その他の多くの分野に関して知識や技術を得ることなく過ぎてしまいがちになる。
そんな避けがたき日常にある楔を打つためにも、現在国がどの様な知識を求め、どのような新しい事象が浮かび上がってきているのか、それを知るためにも一年に一度、国家資格である一級建築士製図試験の出題問題と、その要求されている機能の内容、そして模範解答を見てみるのは、非常によい勉強になるものである。
という訳で今年は問題はというと、「市街地に建つデイサービス付き高齢者向け集合住宅」。超高齢化社会の現代日本において、これ以上は無いんじゃないかと言える現代の社会問題を内在した出題。
設計課題の内容を見てみると、今後はこのような高齢者向けの施設が、建物の中でも住宅と一体化したり、また郊外のひっそりとした場所に隔離されるような存在になるのではなく、街の中で包括していこうという、そんな大きな意図を感じ取ることができるようになっている。
機能室を見ていくと、デイサービスにおける機能訓練質や機械浴室など、家庭の中で介護が必要な家族がいる人には、馴染みとなっているスペースが高齢者な要介護者の動線を考慮して配置されている。この様な施設に対する要求は今後より一層増えていくことが容易に想像がつき、と同時に、これらのことを全く知らずに設計に関わることを避けるためにも、それらの求められる機能と、解答に見られる配置方法を見ながら、今後の日本の風景を想像することにする。
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