2013年3月4日月曜日

面白いのは人

社員旅行でやってきたハルビン市。現在オペラハウスとレイバー・レクリエーション・センターの二つの建物が現場進行中で、近くには最近竣工したチュンリー美術館もあるので、オフィスのメンバーにこの現場を見せてあげることと、ハルビンという街を少しでも理解できるように、有名な観光スポットと合わせて一泊二日の弾丸ツアー。

初日の夕食で円卓を一緒に囲むことになったアメリカ人スタッフ。いつも「ヒュー!!」とか、「ワァオ、ザッツ・クール!」とすぐに大きな声をだす典型的な西海岸出身の性格で、明るく前向きなのはいいことだと思っていたが、そんなに詳しく話す機会は今までなかなかなかった。

円卓に納まりきらず、どんどん皿の上に積み木のように重ねられる東北料理に一向に手をつけないので、どうしたのか聞いてみると、「だって、ベジタリアンなので」とサラッという。「いつからベジタリアンなの?」と聞いてみると、「12年前からで、数年前からは卵やチーズも止めた」という。

「何かアレルギーとかの問題?」と尋ねると、「違う、だってこれ全部動物でしょ?」と。つまり動物の命を摂取するのはポリシーに反するということらしい。野菜の上にちょっと挽肉がまぶしてあるのも、「ああ、それは肉だからダメ」というので、食べれそうな野菜料理を追加注文。となりに座っているアメリカ人も同じくベジタリアンだとういので、二人して野菜の皿のつつくことに。

「アメリカの若者ではベジタリアンになることはある種流行っているのか?」と聞いてみると、「家族でも自分だけだからまだ特別な方だと思うけど、回りでは程度の差はあれ、結構居る」という。たしかにオフィスで一番背の高いもう一人のアメリカ人もベジタリアン・・・恐るべしアメリカ。

そんなこんなで話は他に飛ぶのだが、よくよく聞くと彼女はお母さんがイラン出身で20代の時に渡ったアメリカで彼女のお父さんに出会ってそのままアメリカに残り結婚をしたと言う。その時にイスラム教からキリスト教に改宗をしているので、もしお母さんが故郷のイランに帰ったら刑務所行きになるから帰れないという。自分は母方とは違った名前を持っているので、いつかテヘランに行って自分のルーツを見てみたいと、ガバガバとビールを飲みながらあっけらかんと言う。

「なんて重い話を軽くするんだろう・・・」と思いながらも、個性を尊重するアメリカらしく、人と違ったことがなんの問題も起こさないお国柄で育っただけあって、その人生もまたなかなか興味深いなと思いながら箸を進める。

そんなこんなで白酒をクライアントと乾杯したりとかなり深酒をした様子で、次の日は朝6時起床で7時にスキー場に向かって出発なので、遅れないようにと念を押したが、次の日の朝に案の定そのベジタリアンのアメリカ人が居ないという。それを探すドイツ人・・・

結局夕食後もホテルのバーで飲み続け、朝起きられず、二日酔いだしスキーは嫌いだから別行動をするといい、ホテルで寝続けるアメリカ人三人組・・・日本だったらどんだけの始末書を書くことになるのだろうと思いながら、それでも型にはまった生き方よりもよっぽどインタレスティングかもなと想いを馳せる。

人と違うのは、ただ自分の好きなことがはっきりしていて、それをただ純粋にやりたいだけであり、皆がこれをいいというからこれを着ようとか、こんな仕事についておけば大丈夫だとか、そんなことで人生の何かを決めるのではなく、少なくとも自分で考えて自分で決めていく。その代わり、最後は自分で責任を取ることになるのだろうが、日本人の生き方に比べたらよっぽど無駄がないように感じる。

社会人になっても、周りとの調和を図るために必要のない飲み会やイベントに顔を出し、人間関係に疲れながらも、それなりに楽しめるようになっていき、今度はその状況の中で自分が好きなものを見つけていく。

それに対してこんな自由なアメリカ人は、誰かと一緒にあるグループや集団の中に入っていなくてなんら不安を感じずに、むしろできるだけ無駄な時間を削って、自分の興味のあることに時間を費やそうとする。だからやたら初期のパソコンの歴史に詳しかったり、日本のアニメに対して膨大な知識をもっていたりと、会話をしていてやはり「インタレスティング」だと感じられる何かを持っている。

恐らく自分で決めていくプロセスの中で、様々な場面で自分を成長させることもあるのだろうと想像する。日本人でも外国人でも関係なく、自分が好きなことを明確に持っていて、しっかりとそれに向き合い時間を費やしている人はやはり何かしらの魅力をまとっていくのだろうと思わずにいられない。

いろんな場所に足を運び、いろんな風景や建築を見て感じることももちろん大切だろうが、それでも最後はやはり今、同じ時間を生きている、インタレスティングな人を知り、彼らの考え方や時間の過ごし方を知ることが一番面白いことなんだと改めて理解する。

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