2012年12月31日月曜日

「リターン」リザ・ジョンスン 2011 ★★★


Return

ある場所に戻ってくること。つまりある時間にはそこに居なかったということ。

隊に従軍し、戦場での勤務より帰還する一人の中年女性。
空港で笑顔で迎える家族。
馴染みの仲間と馴染みの場所で過ごす心休まる時間。

の、はずだが、戦場で体験した事柄によって、当たり前に過ごしていた時間、当たり前にそれを過ごし続けている周りの人々、それに感じる違和感。

酒を飲んで、バカ話に興じる女友達。
ヴァラエティー番組をひたすら見続ける夫。
単純労働をただただ繰り返すだけの毎日。

それに嫌気がさして、「やってられない。こんなの無駄だ。」と、
何の理由も伝えずに職場放棄。

戦争というシビアな現実を過ごしたことが、
周囲とのギャップとなって、それがより上位の時間だとすり返られる。

ある場所に居なかったということは、別の場所で時間を過ごすということで、
それはもともと居た場所で同じように過ごしていた人々は、
それでも同じ時間を過ごしている。

違う場所で時間を過ごせば、当たり前の様に見るものも考えることも変わってくる。
違うものを見たからこそ元のものも別の様に見えるのは当たり前。

だからといって偉くなった訳ではないのに、それを受け入れられずに、
マイノリティーであるにもかかわらず、
自分の考え方を強制し、自分の方が優れていると勘違いする。

周囲との摩擦は強まるだけで、
そしてそのギャップに苦しむのは自分であり、
受け入れることができずに、どんどん偏差は広がるだけ。

それが元の場所に戻るということ。

これだけグローバル化が進んだ現代。
生まれた場所から離れて住まうことも日常化してきている中で、
往々にして自分にも訪れうるリターン。

その時に自分が何を受け入れるか、それを強く突きつけられる一本。

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