2013年10月20日日曜日

龍潭公園(lóng tán gōngyuán)1952 ★


九壇八廟(jiǔ tán bā miào)という言葉がある。

これは北京における重要な場所を示したものであり、壇とは「皇帝が祈りをささげた場所」であり、廟とは「祖先の霊、神仏や歴史上の人物を祭る寺など」である。九壇の中でも極めて重要だった5つの壇・五壇を天壇、地壇、日壇、月壇、先農壇という。これは北京都市的成り立ちを理解する上でとても重要なポイントである。

歴史上最大級の風水都市・北京には風水の概念によって都市を持続させるべく様々な自然エレメントが配されている。その名残が現在も世界的メトロポリスとなりながらも、開発の手を逃れ都市に緑の空間を与えている様々な公園。その多くがかつての壇を起源とする。

都市の中心に南を向かって座す皇帝を取り巻く故宮(紫禁城)。その方向性が作り出す強烈な南北に走る都市軸。天と呼応するために太陽が昇ってくる東を、太陽が沈んでいく西に向かって横方向に直行する東西軸。

その故宮と直行する二つの軸を頭の中に描いて北京を眺める。南北軸からやや東に引っ張られる形で南に位置するのが天壇(tiān tán)。ちなみに壇とは中国語簡易体表記で坛となる。故宮の南北軸をはさんで、その天壇の反対側、つまり西側にあるのが先農壇(先农坛)(xiān nóng tán)。

そして今後は故宮から北に向かい、天壇同様東にすこしずれたところに位置するのが地壇(dì tán)。

故宮から東に向かっていくと、その軸上に位置するのが、日壇(rì tán)。その逆に西側に位置するのが月壇(yuè tán)。

それぞれがかつてはとんでもない聖域であったが、今では先農壇を除く全てが公園として整備されており、市民の憩いの場所として開放されており、先農壇は古代建築博物館の一部として整備されている。

そんな風に天壇地日月農の「壇」で紐解きながら北京の全体像を眺めていくと、どうしても次に目に留まるのが龍潭公园(lóng tán gōngyuán)。中国語表記では「龙潭公园」となる。

しかしこの「潭」という漢字。ややこしいことに「壇」とピンインも四声も同じ。意味は「淵」ということで、「水潭」と書いて「水たまり」。つまり「龍たまり公園」という訳だ。

「これは風水的にも重要な場所に違いない・・・」

ということで、眼鏡城で傷ついたレンズを直すついでに足を伸ばすことにする。

中心から強烈な磁場を発する風水都市なだけに、同心円状に走る環状道路はまさに都市の動脈といえ、排気ガスを巻き上げて走る車に占拠されている。なので、スクーターや自転車、歩行者がこの環状道路を渡ろうとすると結構大変なことになり、北に南に結構走り歩道橋などを探さないといけない。

やっとのことで歩道橋を渡ると、車の交通だけを考え、歩行者がその脇を歩くことを想定しておらず、脇をはしる南护城河沿いに道路より一段下がった川沿いの道へとスロープを下りていく。

橋が見えてくるので渡る為に再度道路レベルまで上がりたいと思って周囲を見渡すが、見えてくるのは歩行者用の階段のみ。「無理だろう・・・」と思いながら、スクーターを持ち上げて登れるか試してみるがやはり重過ぎて断念。

困ったなと周囲を見渡して、散歩中のおじさんに聞いてみると、「南に行くと上がれるスロープがある」というので、言われたとおりに走っていくと、角を曲がって南二环路沿いにスロープを発見し何とか脱出。

そんな訳で冷や汗をかきながら辿りついた龍潭公園。2元の入園料を支払い、中に入って案内を読むと、なんとも1952年に整備された都市公園らしく、地元の人の憩いの場になっているのが良く分かる賑わいぶり。大きな池の周りにめぐらされた遊歩道を歩きながら、やはり「壇」と「潭」では大きな違いだと理解する。






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