2013年10月26日土曜日

バレエ 「LAC 白鳥の湖 モンテカルロ・バレエ 」 NCPA 2013 ★★

NCPAの秋のスケジュールで見つけたダンス・フェスティバル。その中でも何とも魅惑的な衣装で目を引いたのがこの演目。文化に関するメンターお勧めのコンサートとオペラのリストには入ってなかったが、バレエといえば「白鳥の湖」と言う事で、購入を決意したチケット。

同時に同じ劇団の「ロミオとジュリエット」も購入したが、平日ということもありやはり打ち合わせが伸びてしまい、オフィスを出た時には既に21時半過ぎ。後ろ髪を引かれるようにオペラハウスに向かうが途中までやってきた時に既に10時近く、行く手を阻むかのように強くなる風にも心が折られて引き返す。

そんなことを二度と起こさないようにと土曜日に夜の今回は、夕食も早めに済ませて準備万全で会場に到着する。

さてこの演目。バレエ初心者の自分には訳の分からない言葉が並んでいる。まずはモンテカルロ。そもそもモンテカルロとは何なのか?「ヨーロッパのどこか国の有名な都市」というイメージはあるものの、ではどこの国でどの規模の都市?というとまったく分からない。それでもなんだか文化的なイメージは持っている。モンテネグロでもないしどこなんだ?と調べてみる。

モンテカルロ(Monte Carlo)は、モナコ公国の地区の名前だという。F1などで有名な、フランスの右下に位置する小さな都市国家であるモナコは、その中に4つの地区を抱えており、行政の中心であるモナコ市街区に対して、カジノ・リゾートなどが集まるモンテカルロ区の二つの区がメインとなっている。

そんなモンテカルロを拠点とするのが今回演じるモンテカルロ・バレエと言う訳である。個人居住者に対して所得税を課さないタックス・ヘブンとしても有名なモナコだけに、この国に集まる多くの富裕者を楽しませるためにも、さぞやレベルの高いバレエ団なんだと勝手に想像する。

ちなみにモナコと同じく都市国家としてごっちゃになりやすいのが、バチカンやサンマリノ。バチカンはお馴染みのローマ市内にあるカソリックの総本山であるが、サンマリノはイタリアの真ん中の東に位置する小さなサンマリノ市だけの国。

そんな訳でサンマリノ・バレエは理解するが、その芸術監督でもあり振付を担当するのがジャン=クリストフ・マイヨー(Jean-Christophe Maillot)という何とも有名な振付家だという。確かに何度か名前は聞いたことがあると思いつつ、鬼才と呼ばれるその振付も楽しみにしていた。


次にタイトルを見てみると、「LAC」というのが良く分からない。ほかで見るとそれが「白鳥の湖」を表すことは理解できるが、本当に白鳥に湖をやるのか?と心配になり調べると、LACとはフランス語で「Le Lac des cygnes (The Lake of Swan)」という事で、のつまりは「白鳥の湖」という訳のようである。

HPでは

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Audiences often associate Swan Lake with its Act II, a stalwart of the classical repertoire so powerfully identifiable by the whiteness of its choreography accompanied by Tchaikovsky’s legendary score that the story itself seems to have evaporated from the work. As such, Act II of Swan Lake can be considered as one of the first abstract ballets. A ballet to be contemplated without worrying about what is being said. The audience member no longer needs to interpret, just simply abandon themselves to the pure aesthetics of the Lake and the beauty of a movement that is enough in itself. 
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とあるので、今度は「Act IIってなんだ・・・?」と心配になり、普通に「第二幕が有名」ってことか、それとも「色んなバージョンが演じられてきてその中の2番目バージョンをやるってことか?」などとバレエ初心者丸出しの心配をしながら会場へ。

19時前には会場に到着するが、流石は人気演目。今まで経験した事がないほどの観客。やはり小さな女の子を連れた家族連れが多いようである。人の群れを抜けて、いつもの三階席のバルコニーへ。

定刻にきっちり開演するが、下を覗き込んでもどうもオーケストラがいないようである。なんでかは分からないが録音に合わせて演じているようである。

「白鳥の湖」自体を見るのが始めてだったということもあるだろうし、この演目自体がかなり抽象的なバレエだということもあるだろうし、モンテカルロ・バレエ団とマイヨーの振付が相当に抽象的だということもあるだろうし、自分があまりにバレエ初心者で、どこまでが一幕で、どこからどこがそれぞれのシーンなのかも良く分からないというのもあるだろうが、それでも美しい衣装は素晴らしかったがどうにもゾクゾクする感じは結局最後まで感じることなく終わってしまった。

音楽は素人でも、直接的に身体に訴えてくるので自分なりに感じる事ができるが、オペラやバレエは見る側にもある程度の準備としての教養が必要となり、それがヨーロッパから離れた日本で生まれ育った人間に対しては判断を難しくさせる原因である。

そういう諸々を加味しながらも、それでも今日のバレエは自分の好みではなかったなと、自分なりの価値判断を下して開演前に購入した数週間後のバレエ「ドン・キホーテ」ロッシーニのオペラに心を馳せながら、そこかしこから聞こえてくるチャイコフスキーの曲を口ずさむ鼻歌に囲まれながら会場を後にする。




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