2014年12月16日火曜日

「オール・ユー・ニード・イズ・キル」 ダグ・リーマン 2014 ★★★★

あと少しで2014年も終わりということで、あちこちで2014を統括する記事が目立ってきた。その中の一つとして、「2014年ベストSF映画10本」も発表されたようである。

「LUCY ルーシー」が入っていないのはやや疑問が残るが、確かに今年は今までとは次元の違うSF映画に恵まれた年と言っていいほど、今まで見たことのない未来のイメージが映像として描かれた作品が多かった。

そして見事その1位に選ばれたのがこの映画。原作が桜坂洋のSFライトノベル「All You Need Is Kill」ということで、日本でもかなり話題にあがっていたが、如何にも「マンガ」的な未来を向上したCG技術にて実写化した作品なのだろうと想像していたが、そんな想像を吹き飛ばすくらいの衝撃を与えてくれる。

「ギタイ」と呼ばれる謎の侵略者と人類との戦いが続く近未来が部隊。その前線にかなり地位の高い広報担当官であるトム・クルーズ扮するケイジ少佐が配置されそうになるが、臆病風に拭かれその命令を反故しようとしたところ、兵士として前線に送り込まれる羽目になり、なれない戦闘の中で、偶然にも「アルファ」という中ボスを倒してその返り血を浴びたことで、タイムループを起こせる能力を実につけてしまう。

状況が把握できないままに、何度も戦闘に参加するのを繰り返しては見事に殺され、ループによってまた最初からやり直すのを繰り返すなか、かつて自らもループの能力を手にした戦場の女神と呼ばれる女兵士・リタと出会い、その能力を利用して人類へ勝利をもたらすべく特訓を開始する。

何度何度も戦場で様々なパターンを繰り返すことにより、「先に進める」行動パターンを見つけ出し、死んではリセットを繰り返す往年のRPGゲームのような体験をしながら、「アルファ」の後ろに潜んでいる「オメガ」を倒すべく糸口を見つけていくという内容。

「ボーン・アイデンティティー」の監督を務めたダグ・リーマンのスピード感のある映像と、文官から何度も戦闘と特訓を繰り返すことにより、屈強な戦士へと成長を遂げていくトム・クルーズ。そして、その脇で彼の成長を見守る最強の女戦士に「プラダを着た悪魔」のエミリー・ブラント(Emily Blunt)。アン・ハサウェイも今年を代表する「インターステラー」で主演を演じたことを考えると、8年の時間を感じずにいられない。

タイム・トラベルを題材にした物語は古今東西、使い古されてきた感があったが、「タイム・トラベラーに取っても、知らない未来はあるのだ」ということを描き、それを知っていくためには何度も何度もタイムループを繰り返さなければいけないという、まさに暗黙の中に隠されていた部分に光を当て、それをゲーム感覚で描き出す手法は、今まで見たことのない未来の姿として十分に評価できる。

もちろん、「インターステラー」の様に、ハリウッドで映画にするために各分野の専門家を集め、裏を取りながら詳細を詰めて、一寸の隙もない物語にされたものとは違い、日本の一人の小説家の想像に生み出された物語であるだけに、人類とギタイの戦いの背景や、アルファの返り血を浴びることでタイムループの能力が移ってしまうという安易な設定と、それならば何人もの人間が同時にその能力を持ってしまう可能性と、その時にいくつもの時間が同時進行的にループをしてしまう時にどこに戻ってくるのかという問題点など、細かな詰めが行われない無い感は否めないが、それがこの物語の主題を弱めているかといえばそうでないこともまた事実である。

始めの30分は、「なんて詰めの甘い映画なのだろう・・・」と不安を感じながら見ていくが、そのうちにこのタイムループの妙が分かりだし、映画というか、何かのアトラクションを体験しているような気分に浸れる。ぜひともDVDでじっくりを見直したい映画である。
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スタッフ
監督 ダグ・リーマン
原作 桜坂洋
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キャスト
ウィリアム・ケイジ  トム・クルーズ
リタ・ヴラタスキ  エミリー・ブラント
ファレウ軍曹  ビル・パクストン
ブリガム将軍  ブレンダン・グリーソン
カーター博士 ノア・テイラー 
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作品データ
原題  Edge of Tomorrow
製作年  2014年
製作国  アメリカ
配給  ワーナー・ブラザース映画
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