2013年4月28日日曜日

「ボーダー ヒートアイランド 4」 垣根涼介 2010 ★

いわゆる「シリーズもの」。第1作の「ヒートアイランド」が2001年だから、4作で10年近くということになる。

圧倒的なインパクトを残した1作目で描かれたのは、如何にも現代らしい若者の街「渋谷」。その街を舞台に、二人の少年がそれぞれの特殊な能力を駆使し、大人たちに迎合せず、自分たちの世界を築いて痛快なスピード感から、まるで脳内で花火が打ち上がるような爽快なクライマックスで引き起こされる事件と、その後ろに見え隠れする二人のプロフェショナル。

渋谷を引退した二人の少年のうちの一人・アキが、そのプロフェッショナルに弟子入りし、裏家業の新たなる仲間として様々な技能を身につけていく二作目。裏金として世の中には決して数字として現れないものだけを狙うプロの強盗。暴力のプロを相手にするだけに、傭兵ばりにストイックで効率的な時間の使い方から確実に何段階も成長するアキの姿。

とことん気分屋でそれでも魅力的なコロンビア人の出稼ぎ売春婦に振り回され、かつての仲間に頼り大金の強奪を画策する日系ブラジル人高木の姿を描く3作目。

そして6年ぶり描かれたシリーズ物は、あっち側の世界に行ってしまったアキに対して、その頭の良さを活かし大検から東大に入り過去を隠しながらひっそりと大学生生活を送るカオル。その同級生つながりより知ることになる、現在の渋谷でかつての自分たちのチーム名と名前をかたり、同じようなファイトパーティーを行っている偽者の存在。そして連絡を取り合うかつての仲間たち。

そんな訳でやっぱり読んでしまうのが魅力的なシリーズものであり、それはしっかりとつくりこまれた魅力的な登場人物がなせる業であり、一流な人間は何をやらせても一流なように、魅力的な登場人物が繰り広げる物語はやっぱり魅力的で疾走感に溢れる。

という訳で、とりあえずこの人物たちを描いておけばそれなりの売り上げになるのは間違いなく、ある程度読めるということだろうが、やはり一作目の圧倒的なスピード感と「ワイルド・ソウル」で描かれた圧倒的な新しさに比べると、続編の宿命を感じずにいられないというところか。

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