2014年5月24日土曜日

「まひるの月を追いかけて」 恩田陸 2007 ★

出張で戻った実家で、折角だからと立ち寄ったブックオフ。そこで見つけた久々の恩田作品。紹介にあるのが、橿原神宮、藤原京跡、明日香と奈良の地名。古都と言えば京都が多いが、それ以前の奈良はなかなか取り上げられる機会は少ない。

平安以前のより古代の香りを残す奈良の都。藤原京に平城京。昨年、高野山まで奈良を縦断した際に、立ち寄り地として最後まで候補に挙がっていた橿原神宮(かしはらじんぐう)。初代天皇とされている神武天皇を祀る神社として奈良県内屈指の神社に数えられるこの神社。まさに万葉の時代の中心地である場所である。

そんな訳で、京都を舞台とした小説とはまた別に、様々な神話や歴史を重ね合わせる物語が描かれているのだろうと勝手に想像して購入した一冊。

しかし、残念ながらまったく期待とはかけ離れた物語。

古の都・奈良。京都には無い広がり、大らかさのある土地で、様々な土地を徒歩で巡り、ゆったりとした時間の中で物語が重なり合い、読み終わった後には、また奈良の足を運び、今度は車ではなく、じっくりと歩いてかつてそこに流れた時間を身体に感じたくなるのかと期待した。

恐らく作者も、奈良の地を旅し、ゆっくりと各地を巡り、東京とも京都とも違う、ゆっくりと、そしてゆったりとした時間の流れ方、風景の在り方に、なんとかそれを小説の世界の中で表現したいと筆をとったのだろうと想像する。

しかし、あまりに物語が練られていない。そして奈良の時間、風景の大きさがまったく表現されておらず、つっこみどころ満載のまま、なんどもつっかえながら読み進めることになる。恐らく一時期あまりにも短期に多くの作品を発表した時期に発表された中の一冊であるのだろうと想像する。多作な作家の作品は、やはり注意して手にとる事にしようと思わされる一冊である。

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