2014年5月10日土曜日

「1973年のピンボール」 村上春樹 1980 ★

青春三部作の二作目と言われるこの作品。

デビュー作品の「風の歌を聴け」と、三部作を締めくくる「羊をめぐる冒険」にはさまれるようにして書かれたこの作品。

最初から三部作としての構想があって書かれたのか、それとも書いているうちに物語がつながって三部作になったのかは気になるが、どちらにせよ、他の二作に比べこの一冊はどうにも好きになれなかった。

恐らく刊行された当時の雰囲気の中では、とてもカッコいい、まるで外国の小説を飲んでいるような軽やかさとユーモアの含まれた小説だったのだろうと想像する。それを手に取った若者は新しい時代の到来を感じていたに違いない。

しかし「羊をめぐる冒険」の様にこちらは決して目次を自ら打ち込もうとは思わない。その差が何かは微妙なのだろうが、それが小説の面白いところでもあるのだろう。

主人公と鼠のダブル主役。ピンボールの「スペースシップ」をやっと探し出し、広い倉庫で暗い照明の中でプレイする場面はやたらと鮮明に目の前に浮かぶ感じであるが、物語を読み終えて何かを覚えているかと言われたら非常に微妙である。

「風の歌を聴け」を読んだ後に感じる風が吹き抜けたような爽やかさも、「羊をめぐる冒険」の後の疾走感も無く、ただただ断片が並べられたような印象を受ける一冊である。


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