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第4回(1982年) 野間文芸新人賞受賞
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村上春樹の三部作と呼ばれるデビュー作でもある1979年の「風の歌を聴け」。1980年の「1973年のピンボール」、そして1982年の「羊をめぐる冒険」。
三部作だというのは後で知るものであるから、読んでいくと、「あれ、これあの本に出てきた人物だよな・・・」と気になる人物がチラホラ。主人公に、鼠に、バーテンのジェイ。
そこらへんで気になって見てみるとやはり三部作で、「風の歌」の後日談だという。「だよね」と思いながら読みすすめるが、村上春樹の本を読んでいると、ウイスキーも上手く飲めるようにならずに中年になってしまったのがとても恥ずかしく思われながら、冷蔵庫からロックアイスを取り出してウイスキーを片手に先を読みことにする。
村上春樹を読むと、生きることをじっくりと味わうことのない時間を過ごしてしまっている自分に悲しくなる。というよりも、人生の過ごし方というのは、いっぺん通りではなく、本の中の人物のように、非常にマイペースでゆっくりと生きている姿を見ると、それは自分らしく生きるとはどういうことだろうと思わずにいられない。
そしてそれは同時に背筋が伸びる思いをさせてくれる。人間は誰でもこの人に会うと背筋が伸びるという、ある種の尊敬を感じられる人がいるものである。もちろんそういう人がいない人もいるだろうが、そういう人は非常に不幸であるだろう。人生の中で常に背筋が伸びると思える人をそばに置いて時間を過ごすことは何よりも人生を豊かにしてくれる。
常に自分よりも先を行っている
常に自分よりも勉強している
常に自分よりも豊かな人生を送っている
と思えることは自分にとって学ぶことがある
いろいろなことに対して同じレベルで話し合うことが出来う
それは小説でもしかり。
この人の本を読めば背筋が伸びる。
ウイスキーと背筋。
マッチしないように見えるがそれが村上春樹。
ダラダラとした印象が3分の2過ぎまで続くが、その独特な世界観を持った章題に惹かれた読み続けると、いきなり物語が展開し始め、独特の世界観が破綻をきたすことなくスピードを加速させる。
素晴らしい。
前作も良かったが、それはデビュー作という今までの鬱々とした長い年月の間に身体の中にたまった言葉と妄想を吐き出した熱さを持った良さであったのに対して、近作は作家として生きていく決意を元に、程よい距離感を保ちながらキザに過ぎない台詞を選び抜いて紡いだ物語。
また別の意味での傑作であろう。
ネットを探しても何処にも目次が載ってない。しかし自分でタイプする価値は十分あるので、物語の復習がたてにとタイプしてみる。そうして再度物語を早足でかけていく。それでもいい。
順番を違えてしまったが三部作の二作目も読まなければと思わせてくれる一冊である。
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第一章 1970/11/25
・ 水曜の午後のピクニック
第二章 1978/7月
1 16歩歩くことについて
2 彼女の消滅・写真の消滅・スリップの消滅
第三章 1978/9月
1 鯨のペニス・三つの職業を持つ女
2 耳の開放について
3 続・耳の開放について
第四章 羊をめぐる冒険Ⅰ
1 奇妙な男のこと・序
2 奇妙な男のこと
3 「先生」のこと
4 羊を数える
5 車とその運転手(1)
6 いとみみず宇宙とは何か?
第五章 鼠からの手紙をその数日後譚
1 鼠の最初の手紙 1977年12月21日の消印
2 二番目の鼠の手紙 消印は1978年5月?日
3 歌は終りぬ
4 彼女はソルティー・ドッグを飲みながら波の音について語る
第六章 羊をめぐる冒険Ⅱ
1 奇妙な男の奇妙な話(1)
2 奇妙な男の奇妙な話(2)
3 車とその運転手(2)
4 夏の終わりと秋の始まり
5 1/5000
6 日曜の午後のピクニック
7 限定された執拗な考え方について
8 いわしの誕生
第七章 いるかホテルの冒険
1 映画館で移動が完成される。いるかホテルへ
2 羊博士登場
3 羊博士おおいに食べ、おおいに語る
4 さらばいるかホテル
第八章 羊をめぐる冒険(Ⅲ)
1 12滝町の誕生と発展と転落
2 12滝町の更なる転落と羊たち
3 12滝町の夜
4 不吉なカーブを回る
5 彼女は山を去る、そしておそう空腹感
6 ガレージの中で見つけたもの 草原の真ん中で考えたこと
7 羊男来る
8 風の特殊なとおり道
9 鏡に映るもの・鏡に映らないもの
10 闇の中に住む人々
11 時計のねじをまく鼠
12 緑のコードと赤のコード・凍えたかもめ
13 不吉なカーブ再訪
14 12時のお茶の会
エピローグ
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