2010年6月16日水曜日

「コールドゲーム」 荻原浩 新潮文庫 2005 ★★★
















高校卒業からはや15年経ち、たまたまあった高校の同級生の結婚式がきっかけで、
この夏に全学年での同窓会を開こうと世話人なるものをやりだした。
改めて卒業アルバムを開いてみると、普段は絶対に思い出すことの無い時間が、
ブワッと目の前に蘇る、そんな不思議な気分になる。


長い登り坂がいつまでも続いている。しかも向かい風。

というシーンで始まる高校3年の夏。
その先にある下り坂をイメージしながら、必死に自転車のペダルを漕ぐ。
地方の高校生なら誰でも自分とオーバーラップできそうな高校の日常。

社会人になる前のギリギリの数ヶ月。
学生という時間に終止符を打つ前に、けじめをつけなければいけない事件が起こる。
それは中学生の時の、どこの教室でもあったかもしれないイジメが発端となっている。

積極的にイジメに参加する悪ガキと女生徒達。
生徒との距離が近い、面白い先生を演じる為に、間接的にイジメを容認する教師。
自分に飛び火しないようにと見てみぬ振りを決め込んだ生徒達。

中学から高校と日常の場所を変えることで、あっさりと記憶から消していたその日々。
その時間が正体の見えない復讐として、突然ブワッと日常に引き戻される。

「もう止めろよ」と言うまでにかかった3年間。
その勇気を持って大人になるために、
取り返しのつかないコールドゲームになる前に、
前を向いてばかりでなく、たまには記憶のアルバムを開くことが、
実はとても大切なんだと感じさせてくれる青春ミステリー。

15年ぶりの同窓会。
いろんな想いがブワッ、ブワッを花を咲かせる、そんな時間を楽しみにして夏を迎えることにする。

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