テュイルリー公園を北に抜け、少し遅めのお昼を取ろうと、マドレーヌ寺院付近の賑わっているカフェに入り、何とか見真似で注文に成功してお腹を満たし、途中で購入しておいたラデュレのマカロンをおやつとして楽しみながら、せっかくだからと北に位置する8区のギャラリー・ラファイエットの地下でつまみの適したお土産を物色し、一気に東に歩いて向かう先は2区に位置するパサージュ・パノラマ (Passage Panoramas) 。前回来た際にはあまりに早朝の為にまだ門が開いてなかったので、「ぜひとも今回は」と思っていた場所である。
建築をやっていれば、「パリといえばパッサージュ」と連想されるが、世界有数の大都市であったパリの雑踏の中に生まれたのが新しい商業空間であり、都市の産物でもあったこのパッサージュ。建物の外部空間にガラスの覆いをかけ半屋外空間として、様々な商店をリニアな空間に沿いながら楽しめることができる。
その後このモデルを一つの建物に押し込んでしまえという発想で生まれたデパート、つまり百貨店が生まれ広まっていくのはこのパサージュが生まれてからおよそ100年の歳月のち。そしてその百貨店の誕生からさらに100年がたった2000年前後には、世界の商業空間の新たなるトレンドとして巨大なショッピング・モールが世界を席巻することになる訳である。
しかし何かしらの建築における空間の祖形が生まれ、それが標準形として世界に広まっていくのには、間違いなく人々が惹きつけられる何かしらの快適性があり、そしてそれを波及させていく使いやすいフォーマットが存在しており、時代のニーズと技術的な発展に支えられていることは間違いなく、その誕生の場に身をおいて、当時この場所に惹きつけられた人々が何を求め、そして感じていたのかを少しでも理解することは、これからさらに多様化しつつも、確実にまた新しい祖形を生み出していく現代の商業空間を理解するうえにおいてもきっと役立つはずである。
このパサージュ・パノラマは子のあたらいに集まっていた切手商や絵葉書商、そして何軒かのレストランがこのパサージュに面して店を開いたことで人気となったと言うが、何と言ってもその名を世に知らしめたのは、パサージュの名前にもなっているパノラマ。今で言えば、iphoneのカメラ機能かと思われるが、当時のパリにおいては、パノラマとは、窓を持たない円形の建物の壁にそって360度展開する写真を展示し、それを中心から眺めることであたかも自分が実際にその場にいるかのような新しい空間体験をさせてくれる見世物小屋ということであり、自分も学生時代に、ある教授がこの建物の説明をしてくれ、その断面図を見せてくれた時のことも今でも鮮明に覚えている。
気になってその画像をgoogleで検索してみるが、見つけることはできず、アナログの記録凄さを改めて感じるとともに、ぜひともあの教授と再会し、このパサージュの魅力について語ってみたいと思いながら、狭い路地の様な空間に張り出した広告や、脇で食事を楽しむ人々の脇を通り抜けながら、何ともいえない心地よさを感じつつ、上部から降り注ぐ日の光を楽しみながら南へと抜けていくことにする。
パリ2区
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