2015年1月1日木曜日

Ninetree Village 九树公寓 David Chipperfield 2008 ★★★★


今回、杭州で見る現代建築の中で最も期待していたのがこの建物。先ほど訪れた博物館の設計者である、イギリス人建築家David Chipperfield(デイヴィッド・チッパーフィールド)。彼らの中国で二作目となったのがこの杭州南西部の山を越え、海からの逆流が見られるという珍しい川である銭塘江(せんとうこう、Qiántáng Jiāng)に面すように建てられている高級アパートメントプロジェクト。

「チッパーフィールドの建物を見に行きたいんだ」とメンターに伝えると、「マジシャンみたいな名前だね」とかつて日本でもかなり取り上げられていた壮大なマジックショーを行うマジシャンを思い出させてくれる。「そういえば、同じ名前か?」と調べてみると、こちらはデビッド・カッパーフィールド (David Copperfiel)で、アメリカ出身のロシア系ユダヤ人だという。

「この建物は木製のルーバーで覆われていてね」と話していると、女性人二人が「ルーバー?」とどうも理解に苦しんでいるようなので、「建物の外についている細い材での目隠し機能などに使われるあれ」と伝えてもどうにもピンとこない様子。

そんな訳で杭州北西部の見学を追え、西湖の西に広がる有名な龍井茶(ロンジン茶、龙井茶、Lóngjĭngchá)の産地である山々を突っ切り、銭塘江沿いをさらに南下し明らかに高級住宅地という感じの良さげな竹の生い茂る山の麓へと到着する。

「ひょっとしたら入れてもらえないかも」と思いながら、なんとわなしに妻と二人でエリアの入口に向かうが、オシャレな制服に身を包んだガードマンが止めに来て、「ここは住宅エリアだから部外者は入れない」という。「どうして部外者だと分かるんだ・・・」と思いながら、「見学したいのでマネージメント・オフィスはどこです」と聞いてみる。

プロパティを管理しているそのオフィスに行き、「見学をしたいのだけと」と申し入れるが、「プライベートな物件なので見学は不可」とつっけんどんな対応。「購入を検討しているんだ」と言ってみるが、「既に2007年に売り切れている」とあっさり切り返される。

しょうがないという訳で、敷地に入らず周囲から見えるだけ見学していこうと、横の坂道を上がっていき、竹やぶの隙間から見える雰囲気良いアパート達とその間の空間を観察する。普段はあまり建築に興味を示さない妻も、「ここは雰囲気いいのが伝わってくるね」と。

その名から分かるように敷地内に9つの棟が微妙に地形に対応しながら、間の空間を構成しつつ配置され、各棟は5階建てでぞれぞれの階が400平米の一つのアパートとなっているという何ともゴージャスなプロジェクト。

入口から出てくる人たちも如何にも余裕のありそうな雰囲気で、先ほど鬼の様な形相で追ってきたガードマンとも顔見知りらしく挨拶を交わしていく。「そりゃ止められるわ・・・」と理解しながら、我々も進めているプロジェクトでしばしば参考にするこのプロジェクトの設計の仕方。その配置計画と、シンプルな施工でありつつも、新しい建築の見え方を獲得しながら、この地での施工レベルでも対応できる工法とデザインのバランスをとった非常にスマートな設計に納得しながら、再度坂を下りていくことにする。












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