2012年11月20日火曜日

伸びきったゴム

「I'm very stretched....」

stretch;〈神経などを〉極度に緊張させる, 張りつめる;((〜 -selfまたは受身))〈人が〉能力[限度]いっぱいに働く

頭の中に思い浮かべるのは、ダラダラに伸び切ったゴムのイメージ。これ以上どんだけ引っ張っても何も出てこない感じか。


朝一から大連市の海辺に計画している新しい文化複合コミュニティアイランドの打ち合わせを、チームとパートナーと一緒に行う。約一時間かけ大きく二つの方向性を確認し、チーム内で各メンバーがどうやって進めていくか、フルタイムのスタッフがスタディをし、インターンがリサーチをしていく。30万平米の敷地に35万平米の延床面積の巨大プロジェクトで陸地からの見え方や高さ方向の決定方法など、検討項目は山ほどになる。

いくらオフィスでこなすプロジェクトが増えようとも、同じメンバーでこなさなければならず、出来るのはその効率を如何に向上させれるか。オフィスにいるすべてのメンバーがやることが無い時間をなくすこと、何をやっていいか分からずに無為に過ごす時間をなくすこと、それが至上課題。多くのプロジェクトが同時に進行中なので、少ない人数で明確な進行をはかること、それがオフィスを回していく上で非常に重要になる。

一時間の打ち合わせを終えると、昨日(日曜)の夜に、こちらも二人のパートナーとチームと一緒にレビューをした南京で進行しているプロジェクト、38万平米の敷地に、こちらも38万平米の延床面積という都市計画レベルのプロジェクト。夏に行ったコンペを勝ち抜き、来年度の施工開始に向けてものすごい勢いで進んでいくプロジェクトには、フルタイムが5人とインターンが2人の計7人体制。商業、オフィス、住居、文化と機能的にもかなり複雑であり、更に空中都市を夢見るクライアントの要求に応えるべくさまざまな挑戦が求められる。明日の夜までにまとめないといけない資料に向けて、誰が何と担当して進めていくか?それを明確にして、誰もが悩まないように、どんなダイアグラムを作り、どんな図面を作成し、何を3次元で立ち上げ、どんな角度で、どんな色合いのパースをつくるのか、一人一人に指示を出していく。

それが終わるとこれもハルビンで現在建設中の文化施設周辺のランドスケープデザインのための照明を担当する照明コンサルタントに、プロジェクトの概要を説明し、どのような照明効果を期待しているかを共有していく。質疑をあげてもらって問題が無いようにしたら、求める資料をいつまでに、どのように仕上げてもらうかを協議する。

それが終わると、アモイで進行中のアパレル会社の新社屋のプロジェクトのプロジェクト・アーキテクトとマネージャーと一緒に、迫ってきているSDパッケージの提出について、どのような進行状況かを確認して、何を準備するかを指示。それと共に、プランニングと平行して進んでいるファサードのデザインの方向性がオフィスとして固まってきたので、再度パースを作り直し、ファサード、構造、環境の各コンサルタントに伝えるようにお願いする。

下階の会議室では、ハルビンで建設中のオペラハウスのクライアントが来ていて、ランドスケープ・デザイナーの進行中の案を精査しており、オペラハウス周辺を担当するオーストラリア人のデザイナーと、全体を担当している中国の会社との調整をいsている。各コンサルタント会社から担当している3-5人が来ているので総勢40人近い人数になってしまうのだが、昼食時になったので打ち合わせの状況を知る為に、オフィスの担当マネージャーを連れ出して一緒にランチに。

ランチを食べに行く間も、注文する間も、食事が運ばれてきて食べている間もずっとそのマネージャーの携帯はなりっぱなしで、「こういうコミュニケーション関係の仕事は本当にしんどい・・・」と愚痴をこぼすのを、「君しかこれはできないからさ。」と励ましながらランチをかきこむ。

つかの間のランチを終えてオフィスに戻ると、そのマネージャーはまた始まっているオペラの打ち合わせに消えていき、こちらは毎週月曜日の恒例行事となってしまっている、応募して来てくれているインターンのポートフォリトとCVをチェックし、どの国のどの学校のどの学年で、どのレベルの学生が精査し、現在進行中のプロジェクトのスケジュールと、彼らが来れる時期を考慮し、現在いるインターンとこれから来るインターンの男女比や国籍比などを考慮して、返事を送る数人をオフィスのマネージャーと一緒になってピックアップしていく。

それが終わると日本で始まった保育所兼住宅の設計のために、中国で進行するような大きなディベロッパーがやる大規模のプロジェクトではなく、数百平米で内装まですべてを手がけて、法規的な理解も必要になってくるので、元フォスター事務所で細かいところまで手の届くドイツ人のスタッフを担当にして、日本人のインターンを翻訳担当として入れて、もう一人ハンガリーからのインターンと一緒にチームを組んで、プロジェクトの概要を説明し、最初のリサーチと設計の前段階になる資料の準備をお願いする。

このくらいの時間になると、午前に打ち合わせをした各プロジェクトごとにテーブルを回って、進行を確認し、方向性に間違いが無いか確認していく。スケッチや言葉ではどうしても逸脱していってしまう方向性を画面を指差しながら修正してもらう。各チームは3-7人構成なので、それを5-7プロジェクト見ていたらそれこそ数時間後とに様々なデスクを走り回ることになる。

それが終わると、今度はオペラハウスの外装材とランドスケープデザインに関して、二人のパートナーと一緒にプロジェクト・アーキテクトとマネージャー、そしてファサードを担当している担当者を交えて議論をする。どうしても、中国の現在の施工精度を考慮して、その現場施行性の悪さすら飲み込んで、滑らかなファサードを実現するディテールを作り出そうと、何が一番いい方法かそれこそ言い争うように必死に議論する。

最後は8時からまた二人のパートナーと一緒に、昨日レビューをした南京のプロジェクトの進行状況を再度確認し、デザインの方向性をまた決めていく。明後日の上海でのプレゼンのために、どういう資料を揃えていくか議論し、再度打ち合わせを踏まえてチームメンバーと誰が具体的に何を作っていくのか話し合い、それが終わったらほぼ10時前。

こんな時間の過ごし方をした一日は、「どのプロジェクトのどのコンサルタントに連絡しようと思っていたのか?」すら分からなくなり、「どのプロジェクトのどのことを話し合って、何を変えなければいけないのか?」それすら分からなくなる。

苦しいといっても何も解決されないわけだから、ただただ出来るのは、自分の能力が足りないからだと自らに言い聞かせる。さっさっと指示して、みんなにスムースに動いてもらって、正確に無駄なく、良い設計を作っていける。そんな一個の生命体の用に事務所が動いていけるように何をできるか、考えながら完全に神経のゴムを伸びきらせて、また頭を働かせながら自転車を飛ばして家路に着く。

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