「建築」を学ぶには様々な方法がある。
実際に建築に足を運び、どの様に空間が構成されているか、自らの身体を使って理解し、細部がどの様に設計されているのかを実物を目の前にして学ぶこと。
実務について、日々行われる様々な検討や施主や各専門職とのやり取りにおいて設計を組み立てていく方法を時間の中で学び、そして自らが描いた図面が現実の世界においてどのように立ち上がるかを現場にて学ぶこと。
専門知識を身に着けるために様々な書籍に目を通し知識を深め、実務能力の向上と共にそれらの知識の見えなかった部分が違った意味で理解できるように本での学び。
そんな「本」の中でも、学問としての建築の素晴らしさを学んだのが、学生時代に何度も何度も読み返し、線を引き、出てくる建築を別の書籍で調べた「建築意匠講義」。今でもたまに見直してみるが、その度に当時の自らの思いを嗅ぐ様な気持ちになれる一冊である。
その著者による最新の一冊。本を通して自らの職に対する「先生」と思える人に出会うことは喜ばしいことで、その人の本を読むことはまるで授業に出席するような気持ちになれるのもまた、息の長い職業に就いている上で、初心を思い出す貴重な時間でもあろう。
読み終えて改めて、改めて自分が選んだ職業に対しての責任を感じながら本を閉じることにする。
----------------------------------------------------------
/建築ー私の「プロフェッション」
自分の生涯の仕事、すなわち職業(プロフェッション)と決意し、そういう風に生きていくのが「プロ」です。
/「プロフェッショナル」とはどういうことか
建築設計の専門家としての能力によって、社会に奉仕する
「告白」あるいは「宣言」した人 聖職者
間違って用いられれば、社会を傷つけ壊す力を持つということを自覚する
/選ぶということ
人は選ばねばなりません。心を決めて、可能性の一つを選び、他を捨てねばなりません
何が成功か、何が失敗か、簡単には言えないのが人生なのです。
最終的に、自分の中で、自分に話しかけている、静かな、内なる声に耳を傾け、それによって、最後の決断をしている
/才能とは何か
基本的な手法を身につけずに、自由な表現などあり得ない
プラトン「君が、もし、建築や都市の設計者なろうと思うなら、先ず、第一に幅広い教養を身につけたまえ。なぜならば、様々な芸術家の中でも、建築家は、とりわけ広い知識と能力を必要とするからだ」
世阿弥は、能楽者になる為に大切なことは、ひたむきということだ
/屋根と柱
常に登るように作られている屋根に登ることは空しい。それは結局屋根ではなく床だからだ
/床と段
神道の最も古い形を示す、「磐座(いわくら)」が一段高いところを神の座とした
/大地と基壇
大地は常にうねり、隆起し、あるいは陥没し、変化しようとしている。その動きを抑え、静止さえ、そしてそこに水平面を作り出すことが、建築行為の出発点である。ではその水平面をどのように作り出すか。
方法は二つ 基壇を築くこと。
高床を築くこと
構築の基本
高床は大地から離れて空中に軽やかに浮かんでいる、それを支えている柱は、大地の力を受け止めていつも力いっぱい闘っている
伊勢の柱 コルビュジェのピロティ
基壇の上には、平安がある
基壇の上に立つ列柱には、永遠の安らぎと憩いが
/捧げものとしての芸術
大きな決断は個人を通して出なければできない。間違うかもしれないけど、最後は責任を持って自分で決断する。
/教会空間とは何か
シナゴーグが教会動画生み出される一つの母体であった
初期キリスト教の信者たちが作り出した教会堂建築、ふたつの対照的な平面形式に分類で「集中型」と「長廊型」というこの二つの形式は、人が集まる時に作り出す、二つの空間形式に対応している
前者を「囲み型」、後者を「対面型」
ゴシック様式長廊式の、一直線に信仰する空間の運動性を、一つの極点まで高めた
水平方向と、垂直方向という二つの運動性の、極度に強調された構成が、ゴシックの建築空間の特徴
会衆は祭壇から遠ざけられ
朗読も説明もほとんど聞き取れない
ルネサンスの建築家たちは、集中式の建築に注目し、それを復活させようとした
中心を囲んで集まり活広がる力と、中心に直面してそれを熟視する力をいかに統合する
■目次
・建築家という「プロフェッショナル」の意味すること
「プロフェッショナル」とは何か
いかにして「プロフェッショナル」となるか
「いつも喜んでいなさい」
・建築家の日常と仕事
町の家と山の家
人生のみちしるべ
「内田ゴシック様式」の展開
・都市に開かれた新しい門と広場
・内田ゴシック建築の上方への展開
・ルイス・カーンの教え
・フランク・ロイド・ライトの内なる対立
・空間と表現
・建築にしかできないこと 聞き手:長島明夫
・建築の経験 建築の持続
教会堂建築とは何か
必読指南
・若者への問いかけ、あるいは自身への問い直し
----------------------------------------------------------
0 件のコメント:
コメントを投稿