2021年9月15日水曜日

Villa Sarabhai サラバイ邸_Le Corbusier ル・コルビュジエ _ 1956 ★ ★ ★




ル・コルビュジエ(Le Corbusier)

アアルト、ロース、イームズ、ライト、ミース、バラガンとモダニズムの巨匠たちの設計した住宅を見てきたが、そろそろだろうと手を伸ばしたがのコルビュジェ。3年前の春、ドーシのプリツカー賞受賞をいい機会だと、弾丸ツアーで訪れたインド。ドーシの師匠であるコルビュジェもいくつか建築を残したアーメダバードで訪れることができたサラバイ邸について書いてみる。

国際連合本部ビルの設計にフランス代表と招待されるほど、世界的知名度を得ていたコルビュジェの建築を、何とかインドにもと画策したドーシの力もあり、チャンディガールとアーメダバードに公共性の高い建物が出現する1955年のその前段階として、まずはインドを訪れたコルビュジェにこのアーメダバードで設計を依頼されたのがこのサラバイ邸。完成したのが1951年なので、同じアーメダバードで1956年に完成したショーダン邸よりも先に、コルビュジェが感じたインドの環境、そしてそれにどう住宅が対応するべきかの考えがより濃く反映されている建築であろう。

そんな訳でなんとか訪問を画策するのであるが、インドという土地柄なかなか情報がアクセスしやすく整理されておらず、またこのサラバイ邸は当時の施主であるサラバイ家の子孫がそのまま住んでいるということもあり、見学へのハードルがかなり高い。どうやって見学を申し込むことができるのか、またどこに連絡をするのかも分らぬままに現地に到着してしまったために、宿泊していたホテルのスタッフや、オフィスのインド人スタッフなどに手伝ってもらうが、どうにも突破口が見えない。

その為に直接現地に行き、入り口脇の門番の人に聞くと、「この番号に電話しろ」 と渡された番号に電話すると、どうやら持ち主の関係者で、見学の差配をしているらしい人に繋がり、国籍と見学の目的などを伝えると、改めて次の日に来てくれと言われる。本当に見学できるのかとよく分からないまま、言われた時刻に次の日に訪れると、入り口で登録を終えて、敷地内に入れてくれる。敷地は広大な森の一部となっており、敷地入り口から建物に到着するまでに、のどかに歩くクジャクなどを見ながら敷地の東の端まで到着し、そこから南に折れて暫くすると建物が森に埋もれるようにして見えてくる。

他にも数人同じような外国人の姿が見え、どうやらこの時間に内部の見学ツアーを開催しているようで、内部は撮影禁止だということを伝えられ、ツアーが開始。コルビュジェが考えていた、戦後の住宅需要に対応すべく、規格を統一することで工場生産により質の高い住宅を大量に供給できるようにと考案されたフラットルーフ型のシロトアン型住宅と、ヴォールト屋根を持つモノル住宅だが、パリの街中に設計された住宅は前者のフラットルーフを持つタイプが多いが、この敷地は周囲に自然たっぷりの環境であるためか、後者のモノル型のヴォールト屋根タイプが採用されたようである。

建物には北側からアプローチしてくるのであるが、ヴォールト屋根が10スパン連続して設けられ、東側んお5スパンがメインの居住スペースで、西側の3スパンがダイニングなどのサブスペースとなっており、その間の2スパンからアプローチするのだが、このスパンでは北から南に遮る東西の要素がないために、風が吹き抜けて、内外の境界線が非常に曖昧に作られている。

インドの強い太陽の日差しの下での生活は、どのように日よけを行い、風を通すかが重要だと考えたコルビュジェは、広大な公園に面した南にプールを設け、長く張り出した庇によって風を作り、冷やされた空気が北に流れるように環境を整えたのであろう。

梁の下で揃えられた空間の高さに、床から天井までの大きな回転扉や、微妙に場所を変える構造壁によって単調にならずに空間の奥行きを感じながら、様々な家具によってシステムの中に場所が程よく作られている。

一階の南を東には日陰になった屋外スペースが設けられており、室内と外部とのよい干渉スペースとして機能しており、ヴォールとの方向性に沿うようにして、壁に対して行ってこいの階段を階段を上がると、二つの寝室が面白い形でヴォールトを分け合って配置されている。

テラスに出ると、南側へのプールへと滑り降りることのできるかなり急な滑り台があったりと、ユニットの組み合わせではあるけれど、とても豊かで異なる空間があちこちに配置されている豊かな住空間となっている。


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