印象的だった建築家の自邸を考えていくと、やはりこれは外せないと思うのがゴールドフィンガー(Erno Goldfinger)の2 Willow Road。かつて一度スケッチし纏めてみたが、今回改めてじっくりと考えてみることにする。
改めてこの住宅を考えてみると、記憶に残るのは、ダイニングから横長の窓で切り取られた敷地の北に位置するハムステッド・ヒース(Hampstead Heath)への眺望。ピクチャー・フレームとして機能するこの横長窓は、図面をよく見ると、一階にある柱が2階では無くなっているのに気が付く。逆の南側では一階の柱がそのまま2階を貫通し、3階まで到達していることから、構造的にはこの北側の柱もあった方が合理的だったにも関わらず、ダイニングからスタディまでの一続きの空間がこの住宅の中心となる空間であり、そこからこの住宅を決定づけるハムステッド・ヒースへの眺望には風景を三つに切ってしまう2本の柱はどうしても取り除きたかったのだという執念を感じる。
同様に、建物の顔をなる北側のファサードを見てみると、Willow Roadに面したこの建物は住所で気には1から3までの3つの住宅が一つになったテラスハウスであり、中央の2 Willow Roadだけが、スパンを広くとられている。1から3までを貫くようにして2階に設けられた水平窓を横長のフレームとして立面の中で現代性を表現するために、各住戸を分ける場所の柱は2階部分でも残されるが、それ以外の柱はどうしてもこのフレームを貫かないようにしたかっという意図だろうと推測する。
更に北面立面を詳しく見ると、2階部分の解放できる窓は中央と両端に設けられ、他の部分はサッシすらない横長の一枚ガラス。1と3は縦のサッシが見受けられるから、自身が住まうこの中央住戸の2階からの眺望をどうしてもサッシレスのフレームに収めたいというゴールドフィンガーの執念が染み出しているようである。
その他にこの住居を印象深くしていたのは、なんといってもこれだけ北と南に眺望を確保できるとともに、開放的な窓を設けて生活をできる周辺環境であろう。片側に公園を持つだけでなく、南にも自らの庭を十分なプライバシーを確保して設けられるとは、なんとも羨ましい限りである。
そして、二階部分の書斎側の壁を一面占める本棚と、その前にこの空間の主人として君臨するかの雰囲気を醸し出しているデスク。これもゴールドフィンガーのデザインであるのだが、そのデスクの上においてある、ゴールドフィンガーが愛用していた文具などが、これまた素晴らしいデザインのものばかり。どれだけモノに愛着を持ち、デザインに向き合っていたか、そしてこのデスクでスケッチなどをして時間を過ごしていたかが分かる素晴らしい家具達である。
次に北側と南側の間に設けられた30センチほどの段差。部分的に収納をして使われているが、中央の円形階段が矩形の部屋に有機的な場所性を加えているのと同様に、この段差がとても良い形で北と南に違う場所を作りながら繋げている。ギャラリーと呼ばれる空間はさらに天井高を下げられて、少しニッチの様な空間として落ち着ける溜まりの空間になっており、そこだけ温かみのある木で仕上げられており、イームズハウスのソファの空間を彷彿させる。
もう一つは三階の寝室レベルにおいて、様々な場所に設けられた天窓とそこから降り注ぐ自然光。円形の階段室やその壁の後ろの浴室など、曲線の壁と円形の天窓からの光がとてもよく融合し、空間に彩を添えている。
毎日の生活の中で、視線を向ける風景があること。
窓を開放しても、プライバシーに支障のない周辺環境との距離感。この二つさえ得られれば、複雑なことはせずに、じっくりと地に足の着いた設計でこれだけ豊かな日常生活のための空間が得られるのだと改めて勇気をもらえる秀作である。
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