2016年10月17日月曜日

パリの顔

パリといえばエッフェル塔。そのエッフェル塔も建設当時は多くの市民から批判の声を浴びた。しかし長い時を経て今ではすっかりパリの顔をなっている。

パリは塔の少ない、平べったい都市である。その為に少し高い場所に上ると北からモンマルトルの丘にそびえるサクレクール聖堂から市の中心部に位置するサン・トゥスタッシュ教会。そして遠くには凱旋門の遥かかなたにラ・デファンスの高層ビル群が見えて、視線を南に振っていくとスクッと立つエッフェル塔。更に視線をすすめると、パリの街並みとは相容れない黒い高層ビルが見えてくる。

これがパリの南、モンパルナス地区の顔となっているモンパルナスタワー(Tour Montparnasse)であり、現在フランスでもっとも背の高い建物(210m)であり、建設された1972年にパリの街並みにふさわしくないと激しい景観論争を巻き起こしたことで有名となった建物であり、この建物以降パリ市内では高層ビルが建てられない条例が制定され、皮肉なことにこのモンパルナスタワーの最上部にある展望デッキからの眺めが、このモンパルナスタワーを視界に捉えることなくパリを一望できるからということで、パリでもっとも美しい夜景スポットとして知られるようになったという曰くつきの建物である。

そんなタワーもすでに40年の試用期間を過ぎ、アスベストの問題や様々な面において現在の社会要請に見合わなくなり、長く取り壊して新しく建てるか、それとも大規模の改修をするかの議論が交わされてきたが、この度その改修の為に大々的な国際コンペが行われることになり、世界中から多くの応募があった中で、MAD Architectsも参加設計事務所の一つとして選ばれた。


パリという都市だけでなく、エッフェル塔がそうであったように、パリに住まう人々にとって大変重要な意味を持つこの建物をどう更新していくかもさることながら、こうして社会劣化を起こした高層ビルがどのようにして新しい活力を取り戻していくことが出来るか。これもこれからの社会全体が向き合う大きな問題になることは間違いないので、このコンペをきっかけにパリの都市を深く理解することと共に、新しい高層ビルの更新のあり方について深く学んでいければと思わずにいられない。

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