ハッピーエンドではないが、非常にラストシーンが心に残る映画である。
普通の家庭に育ち、団地に住まい、クラスでも決して目立つことの無い、これと言って取りえの無い女の子。まさに主演の蒼井優の為のような役柄。
目立つ派手な綺麗さではないが、顔が小さくスタイルが良く、よく見るととても可愛く見える。クラスで皆の共通認識となるモテかたは決してしないが、良く考えると気になる存在。そんなどこの学校でもいるような存在。その微妙なポジションを描く素晴らしい演技。
ひょんなことから生まれ育った街にいることが難しくなり、自分のことを誰も知らない街に行き、そこで次の引越し代と生活を始めるための準備金として100万円を貯めるまで滞在する。それが貯まったらまたそこで貯められた自分という記憶を断ち切るかのように次の街へと姿を消す。
そんなふわふわとした存在の姉を地元につなぎ止めるのは弟の存在。そしてその弟は不条理ないじめを受け、これもまた日本中どこでもあるような、ただただターゲットとなってしまったために出口が無く、エスカレートするだけのいじめを永遠と受け続け、どうすればいいのか全く分からない日々を送る少年。
戦うのか、逃げるのか。
そんな部分を切り取れば、日本中に溢れかえっている物語。
将来に希望を描けない姉と弟。そんな何とも無い物語。
そんな漂う姉をその場所に留めるための理由となる希望としての存在として現れる森山未来。
これがまた秀逸。何ともダメ男の演技が上手いと思わされていたら、どっこい。
お互いが投げかけた視線が、交差したものと思わされたいたら、まさか交わることなく過ぎ去っていくとは。日常とは映画の様にドラマチックではないと現実と突きつけてくる、まさに映画的なラストシーン。悪くない。
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スタッフ
監督 タナダユキ
脚本 タナダユキ
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キャスト
佐藤鈴子:蒼井優
中島亮平:森山未來
鈴子の弟(佐藤拓也):齋藤隆成
海の家の主人(黒澤祐三):斎藤歩
海の家のおかみさん(黒澤広美):安藤玉恵
海の家でナンパする男・ユウキ:竹財輝之助
桃農家の絹さん(藤井絹):佐々木すみ江
桃農家の長男(藤井春夫):ピエール瀧
喫茶店のマスター・白石:笹野高史
仕事先の小暮主任:堀部圭亮
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