プロジェクトがきっかけで、今までまったく縁の無かった場所に関わることができることは建築というものを生業にしているものとしての喜びであると同時に、その土地の歴史や文化、そして現在の人々の生活を少しでも理解することが、少しでも場所に根付く建築を作るための基礎であり、建築家としての責任でもあるだろう。
そういう訳で縁ができそうな沖縄の地。米軍基地や観光地としての側面だけではなく、日本の最南端として独特の文化を培ってきたその歴史を文化を少しでも基礎知識として持っておくために何冊か手にとった中の一冊。
様々な場所の地名として残るグスクの意味や、琉球王国時代と明などの周辺諸国との関係、そして薩摩藩による侵攻と江戸幕府による取り込み政策、戦場となった近代と、戦後における統治時代と本土返還後。
本土における日本史という教育ではまったく捉えきれないその歴史は、やはり馴染みの無い言葉が多く、改めて日本人として知っておくべき事なのだと思わされる。
オモロや御嶽(ウタキ)など、信仰や世界観などもその起源や流れを説明し、如何に日本の中でも独特の文化を形成してきたのか、そして現在にどう残されているのかというのが見て取れると同時に、このような土地に染み付いた文化というのは、融合政策によって簡単に消し去られるものではなく、また多中心に移りつつある現代においてこそ、じっくりと見つけなおし、伝承していくことが大切なのだろうと思わされる。
ぜひともこの知識を元に、次回はより深く、沖縄の辿ってきた時間や歴史を感じられるような場所に足を運び、現地の人の話を聞くことができればと思わずにいられない。
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目次
序章 太平洋文化圏の中の沖縄
沖縄文化のマクロ的視野
従来の沖縄文化系統論
第一章 沖縄歴史のあゆみ
1.先史沖縄
旧石器時代
新石器時代(貝塚時代)
グスク時代(前半)
2.古琉球
グスク時代(後半)
第一尚氏時代
3.海外交易の発展
明
南方
日本
朝鮮
16c以降の貿易の衰退
4.近世琉球
・第二尚氏時代(後期)
5.近代沖縄
琉球処分(明治12年)
奈良原県政
そてつ地獄(大正末~昭和初め)
沖縄戦
6.戦後沖縄
米軍統治時代
第二章 沖縄の言語と文化
1.日本語の中の沖縄語
沖縄語の歴史
沖縄語の特徴的音韻変化
2.沖縄文学の全体像
古代文学
近代文学
古代文学の分類
3.オモロとウタの世界
オモロ
琉歌(ウタ)
4.神観念と世界観
創世神話
『おもろさうし』にみる神観念と世界観
(1)ニライ・カナイ
(2)アマミヤ・シネリヤ
(3)オボツ・カグラ
祭祀と年中行事
(1)御嶽
(2)年中行事
各地の祭り
(1)シヌグ
(2)ウンジャミ
(3)イザイホー
(4)祖神祭り
(5)プーリィ(豊年祭)
(6)アカマタ・クロマタ
民俗芸能
(1)ウスデーク
(2)エイサー
(3)クイチャー
(4)巻踊
(5)アンガマ
(6)京太郎
5.宮廷芸能
古典音楽
古典舞踊
古典劇(組踊)
6.沖縄の美とかたち
美学
美術
第三章 神歌にみる宮古・八重山の歴史
1.宮古島の歴史と英雄たち
開闢伝説
先史時代~古代
宮古の英雄たち
14c末~15cの宮古と八重山
王府の宮古支配と人頭税
2.八重山の歴史と英雄たち
創世の説話~先史時代
八重山の英雄たち
八重山統治と人頭税
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外間守善
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