2006年4月27日木曜日

マイ・ヒーロー


建築を学び始めた頃、なぜか学校でコンピューターを使うことを禁じられた。

そんな訳で膨大な時間をかけ、製図版に向かう生活を続けていた。自分の手を使って図面を引くと、それぞれの個性なるものが浮き出しにされる。

その頃は昔の建築家の図面を見て、なんて美しいんだと一人興奮していたのをよく覚えてる。

そんな中でも一番のショックを受けたのが、ポール・ルドルフ。コンクリートを使ったかなりブルータルな表現をする建築家なのだが、彼がすごいのはその断面パース。

つまり建築を切って、遠近法的に内部空間を表現する図面なのだが、これはかなり労力と時間を労する。

しかしその分、その建築家が思い描く空間がはっきりと描かれる。その密度たるやものすごいもので、彼は一度製図室にはいると、何十時間も出てこなかったといわれている。

そっから設計始めるもんで、普通の建物と違い、断面が折り重なり、複雑な空間をつくるのが彼の特徴。そこには高さの違ういろんな関係性が作られ、まさに異なる空間経験が図面の中で既にできる訳だ。

またこの図面がかっこよくて、美しくて、影のつけ方一つから何度も何度もトレースしていた若かりし頃のマイ・ヒーロー。そんな彼の実作にまさか遭遇することができようとは思っていなかった。

イェールの建築学部学長をしていた彼によりその学部棟は設計された。

エントランス部分からかなり長い階段を上らされ、既に自分がどのレベルにいるかが曖昧化される。

天井仕上げも荒いコンクリートの打ちっぱなしで、しかも高さはかなり低く抑えられている。そこからメインの空間にでると、真ん中が吹き抜けの回廊型の空間に出くわす。この回廊にもいちいち階段がつけられていて、常に違うレベルから抜きぬけを見下ろすことになる。

そんなのをみて、いちいち一人で「うぉ」、「すげぇ」って感動する自分。ファイナル・レビューが近づいてる学生さん達にかなり白い目で見られていたこと、まちがいない。

ちなみにメインホールでは、ロンドン時代に働いていたザハ・ハディドの展覧会をやっていた。かつての同僚のアナとティアゴが手がけたらしい。

ま、相変わらず、ザハはザハでなんか嬉しかったりして。

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