2016年3月6日日曜日

「0.5ミリ」 安藤桃子 2014 ★★★


安藤桃子
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スタッフ
監督 安藤桃子
脚本 安藤桃子
エグゼクティブプロデューサー 奥田瑛二
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キャスト
山岸サワ(介護士): 安藤サクラ
片岡昭三(寝たきりのおじいちゃん):織本順吉
片岡雪子(自殺する母):木内みどり
片岡マコト(引きこもりの息子):土屋希望
茂(自転車をパンクさせる):坂田利夫
ベンガル(茂の友人の詐欺師):斉藤末男 
康夫(カラオケ店に泊まろうとする老人):井上竜夫
カラオケ店員:東出昌大
真壁義男(元教師):津川雅彦
真壁静江(寝たきりの妻):草笛光子
浜田(真壁家のヘルパー):角替和枝
真壁久子(義男の姪):浅田美代子
佐々木健(マコト引き取り育てる父親):柄本明
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物語としては、安藤サクラ演じる介護士をしている主人公の山岸サワが、寝たきりのおじいちゃんを介護している派遣先で、その娘から、「冥土の土産におじいちゃんと一晩でいいから寝てくれないか?」と頼まれるところから始まる。

介護問題、漂流老人、老後の性欲、引きこもり、痴呆症などなど、様々な社会問題に対して、ネガティブな視線ではなく、明るくポジティブにかつ、等身大の視線で現代の日本の社会を描き出す意欲作。

サワが食事を取るシーンで「なんだか見たことある場所だな?」と調べてみると、やはり高知市のひらめ市場。全編に渡り高知に移住したと言われる監督である安藤桃子の高知愛がじっとり感じられる映画でもある。様々な地方に足を運び、こうして映画などでそのロケ地として選ばれるのもまた、あまたある様々な都市や風景から、魅力的だと誰かが選んだことによるものであるし、そういう風景を共有し、また認識できるようになって行くのは、旅を重ねる楽しみでもあると再認識する。

それと同時に安藤桃子が移住した理由も納得できるほど、高知、特に高知市は海があり、山があり、歴史的な街並みも残り、場所としての豊かさがにじみ出る、そんな場所である。「桐島、部活やめるってよ」でも同じように、この高知市の穏やかな時間の流れと空気感がとても清清しい画を作り出していたのを思い出す。

元々の派遣先の家で依頼された「おじいちゃんと寝てくれない?」という夜に、そのおじいちゃんが暴走することで発生した火災と、その娘が別れた夫との間の現在引きこもりで一言も言葉を発しない息子との生活に悲観しての自殺が重なったことで、主人公は勤め先を失い、家も仕事も金も無い状況で街を漂う。そんな日常から少し外れ、社会にとっての異端からの視線に入ってくるのは、周囲から見るとややおかしな行動をとっている高齢者の男性。

少々痴呆が始まり、糖尿病のインシュリンの投与をしながらカラオケ屋で宿泊できるものだと勘違いして店員の東出昌大ともめる老人。自転車置き場でタイヤをいたずらでパンクさせて、木々に話しかける老人。元教師でプライドは高いが、女子高生への隠しきれない性欲に駆られ万引きをしようとしてしまう老人。そんな老人の後ろめたい気持ちに付け込み、なんとか同居をさせてもらいながら生活をしていくうちに、どの老人とも心を通わせていきながと言われる監督である安藤桃子の高ら、どう人生の最後の時期を過ごすかという大きな社会問題を描いていく。

現代の日本が抱える高齢化社会と独居老人、老老介護の問題などを抱える高齢者たちの問題を解決する方法を描く訳ではないが、分かりやすい悲惨な状況にある人の物語を描くことで世間の注目を浴びようとする作品とは一線を画し、あくまでも明るく、そして親身に人として向き合う若い女性、プラスその女性が飛び切りの美人で世間も「ああ、なるほどね・・・」と別の意図を汲み取るようなキャスティングではなく、絶妙などこにでもいそうという容姿の女優を持ってくることで、あくまでも人間同士の係わり合いのドラマとしているのは、非常に好感が持てる。

なので、途中まで、「これは何か新しい社会のあり方を、路頭に迷う若者と、孤独に苦しむ高齢者とのあたらなるマッチングによって示そうとしているのかな?」と勘ぐってみてしまうが、3人目くらいなると、そのような重厚なメッセージは含まれておらず、ただただ淡々と老人や社会で自分の居場所探しに苦しむ若者の脇を漂いながら生きていく主人公の姿を描きながら、現代の日本を描いているのだと納得できる。

最後にカラオケ屋の店員としてチョイ役で登場する東出昌大は、「ひょっとして高知出身で地元愛で出演したのでは・・・」と思って調べるが、そんなことはなく埼玉出身のようである。

カラオケ店に泊まろうとする康夫


自転車をパンクさせる茂

元教師の真壁義男

真壁家のヘルパーの浜田

マコト引き取り育てる父親の佐々木健
引きこもりの息子の片岡マコト

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