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第51回(2005年)江戸川乱歩賞受賞作
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人が作る社会の秩序を守るために作られる様々な法律。社会が変わり、その中で生きる人も変われば求められる法律も変わるべきだが、性善説、性悪説と人類の歴史と同じ長さを持つ「人が人を裁くこと」への矛盾。そしてその線引きを何処におくかによる葛藤。その揺らぎによって傷つけられる人々の物語。
その社会と法律の矛盾に光を当てて、現代の抱える問題を浮かび上がらせようとする作者の試み。そのライトが当てられるのは、少年事件と少年法の問題点。
子供は純粋であるはずだ。
子供はまだ分別がつかないだけだ。
ちゃんと更正させれば、まともな大人になれるはずだ。
という性善説に支えられた思い込み。それに反比例するように頻発する少年犯罪。現代を代弁するかのようなその事件が「なぜ起きたのか?」に注目してやりだまにあげられる「郊外」や「ネット世界」。それに対して、犯罪を起こした子供に対する「刑罰」をどうするかを対処するのが「少年法」。
現行の少年法では、未成年者の人格の可塑性、つまり「更正すればまともになる。こうなってしまったのは、それまでの環境のせいだ!」という建前とも呼んでいいような人類の飽くなき願いに沿って制定されており、刑法41条によっても「十四歳に満たない者の行為は、罰しない」とされている。
そしてそれを裏手にとって、14歳まではなにをしても刑罰に処されないと開き直る子供がいたらどうするのか?
そして少年事件に巻き込まれ、妻を殺された被害者である主人公。少年Aや少年Bと名づけられた子供達。更正施設からあっという間に社会に戻され、過去を消して生きていく彼ら。その周囲で起こる殺人事件とかつての被害者の主人公の姿。そして徐々に明かされる過去の事実。
「目には目を」
ではないが、人が人を裁くことの永遠なる人類の葛藤。そして社会を構成する一員として現行の法令に縛られる自らの感情。その網の目を潜り抜けていく子供達。その矛盾を見事に描ききった傑作といってよいだろう。
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