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所在地 岐阜県高山市城山
主祭神 大山咋神(おおやまくいのかみ)
社格 県社
創建 1141
本殿の様式 流造
機能 寺社
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日が暮れ始めて、完全に疲れが見えてきた両親と妻に「あと、二つ、すぐ見てくるから」といって辿りついた中心部南部に位置する日枝神社。
東京にも日枝神社があるが、この日枝神社というのは、山王信仰に基づき比叡山の麓に位置する日吉大社より勧請を受けた神社の社号であるという。
すでに疲労から車から降りてこさえもしなくなった三人を残し、うっそうとした森に埋もれるような急階段を上っていくと、上空に「ケケケケケケケケ・・・・」という蜩の声が反響する。暮れ始め、トワイライトの時間に入り、昼と夜が半分ずつになっていく曖昧な空気に包まれ、確実に神域に入っていくという感じを受けながら、きつい階段を小走りにあがっていくと、巨大な杉の樹の間を抜けて辿りつくのは開けた境内。
上がった息を整えながら眺めると、前方の二の鳥居の先の階段に上に鎮座する拝殿に向けて静かに参拝する人の姿が。そしてその足元にはこの空気にぴったしに見える高貴なボルゾイ犬。長い首をグルリと回してこちらを眺めるその姿と、じっと動くことなく静かに祈りをささげるその人の姿に少々圧倒され、空気を乱してはいけないという雰囲気に飲み込まれ、動かずにその方のお参りが終わるのを待つことに。
その姿を眺めながら、上空では反響する蜩の音が更に強く、そして何重にも重なり合い、朝から巡ってきた場所場所で取り重ねてきた写真は既に400枚近くになっており、つまりは400回近く集中して利き目ではない左目を強く瞑っていたことから、すでに左目は疲労からか焦点を合わせることが難しく、目に入る風景もなんだか曖昧模糊としている。
そして昼と夜が半分ずつに溶け合い始め、気温も随分低くなり、空気が澄みだし、闇の中に姿を消そうとする森に覆われたこの神域に身を置いていると、この空間が今まで足を運んだ寺社仏閣の中でも最高レベルに自然と融和したまさに特別な空気を作り出していることを肌で感じることが出来た。
その間も主人の祈りの時間を邪魔させないようにと、主人の足に自らの身体を寄せ合い、頭だけをこちらに向けて警戒を解くことの無い猟犬としてのDNAを身体から発するようなボルゾイ犬の視線がふと緩んだと思ったら、数分間に渡るお参りを終えたその方が山に沿うように配された表参道へと帰っていく。
チラリチラリとこちらを振り向く犬を横目に二の鳥居をくぐり再度きつい勾配の階段を上りたどり着く拝殿。そして目に入ってくるのは拝殿右脇の樹齢1000年を超えるという神木の大杉。上空の蜩の声は更に強く耳に届き、神域感は一段階上がった感じを受ける。
拝殿に参拝し、囲われているが出来るだけ近くによりエネルギーを受け取ろうと神木に寄り、長い年月を感じさせてくれる木肌に見とれると、ふと目に入ってくるものが。
「一体誰がこんなところにぬいぐるみのキーホルダーをかけていったんだ・・・・」
と一瞬判断した20センチほどの動物のぬいぐるみ。木目と同化して一見気づかないその物体。ぼぅっとする左目を擦って再度しっかり見てみるとどうもぬいぐるみでは無さそう。じっとこっちを見る目。
「朝から走り回って疲れてしまって、幻覚でも見ているのだろう」と本当に思う。
目をパチパチしばたたかせて、再度そこに目をやると、「お前は何だ?」を言わんばかりの驚いたような表情をしている小さな梟かミミズクの姿が。恐らく子供なのだろうか、真ん丸の黄色の目の真ん中に、真ん丸で黒い瞳孔をこちらに向けながら、なんとも品格を感じる表情でこちらをじっと見ている。4本の足の指でしっかりと樹の幹を掴み、ピクリともせずにただただこちらを見ている。
「あ、神様だ・・・」
と想い、とっさにカメラを向ける。上空の蜩の鳴き声は更に音響を上げて、「ケケケケケケケケ・・・・」と空間を歪めるほどに強くなる。
少し角度を変えるために場所をずらすと、首だけクルリと回して珍しいものでも見るようにじっとこちらを見続ける。
恐らく夜になるのを待ちきれず、まさかこの時間に誰かが上がってくるとは思いもせずに少々早めに降りてきてしまって、更に誰か来たけどまさかこんなに寄って来てしかもじっくり神木を眺めて自分に気づくとは、きっと思いもしなかったんだろうと考えながらも、きっと神域めぐりのポイントも随分溜まったそのボーナスのようなもので神様も降りてきてくれたんだろうと勝手に思うことにして、相変わらずびっくりしたような表情の神様に向けて「ありがとうございます」とじっくりと手を合わせ願い事をする。
広い境内にはいくつもの末社が鎮座する。まるで何人もの神様からこの瞬間を見られているような気配を感じながら、それぞれの末社にも参拝するために、拝殿左に位置する天満神社へ。そしてその横の稲荷神社。その間も意識は神木の方へ向いてしまう。
今度は右奥の末社に参拝に行こうと再度神木に近づき、今度は前方を通りかかるとやはり、先ほどの神様はまだそこにいて、愛嬌のある姿で首を90度曲げてこちらを見ている。その足はしっかりと幹を掴み、じっとこちらを眺めているので再度フォーカスを合わせて写真におさめさせていただく。
拝殿右の位置する富士神社。そしてその横に位置する産雲神社に参拝。周りは既に昼と夜のバランスが夜側に傾き始め、徐々に闇の中に沈んでいく。そして「ここにいてはいけない」と警告を発するような強烈な音になる蜩の鳴き声の反響。
光と闇の両面を持つ神域の怖さを感じ、「早くここから出ないと」と思いながら帰り道に。そうすると今度は後ろから神木にアプローチすることになり、その気配を感じ一度右から首を回そうとするが回りきらず、左からぐるりと首を回してこちらを眺める神様の姿に少々笑みをこぼしながら、再度手を合わせ、「またいつか来ますので、また降りて来てください」とお願いをし、かける様に階段を下りる。
先ほどは裏参道に当たる階段から上がってきてしまったので、折角だからボルゾイ犬が帰っていった長い表参道をかけるように戻りながら、山肌に沿うような参道を体験し、やはり自分の経験の中で最上位に位置する寺社であることを再確認し一の鳥居を潜って一礼。
そのお陰で離れてしまった駐車場に駆け足で戻り、汗だくの姿で冷房で冷えた車内でくつろぐ両親と妻に、「神様に会った」と興奮気味で報告し、自分でも自分が見たものが現実だったのか少々疑問に思いながら写真を確認する。
神木の姿を見せて、「この中で何かおかしなところ無い?」と聞くが、3人とも何も気づかず、しょうがないのでズームインしていくと、それでもなかなか気づかない。「ここに何かいない?」とまさにそのものにズームインすると、「おーーーー」と。
「何、これ?」
「鳥?」
「ふくろう?」
「みみずくじゃない?」
「梟とみみずくって何が違うの?」
「耳があるかないかじゃない?」
と喋りだす3人。
「神様です」と、一連の流れを紹介する。
「それはいいもの見せてもらったねぇ」と老人らしいリアクションをしてくれる母親。
恐らく宮崎駿も小さいころに同じような体験をして、それで「トトロ」が生まれたんだろうと革新し、本当に日が暮れる前に本日最後の目的地へと車を飛ばす。
神様の姿をこんな俗な場に載せるのは忍びないのでアップロードはせずに、携帯に入れては疲れた時にその愛らしい姿を眺め一人癒されることにする。
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