2013年7月22日月曜日

「銀色の髪のアギト」杉山慶一 2005 ★

ここ10年くらいのジャパニメーションをざーっと見ることにしている今年だが、その中でどうしてもリストの中に入ってくるようであるこの一作。なんとも深い意味が込められているのかと期待してしまうそのタイトルに重い腰を上げて見始める。

なんでも、300年後の未来の世界は人間の遺伝子操作の失敗によって自然が意思を持ち、人と都市を襲うようになってしまったという設定で、その中でも森と対峙することなく友好的に暮らしているある都市が舞台。

そんなある日、森の中でかつての自然と人類が対立する前の時代に生きた人間が、未来に向けて送り込む希望として冷凍睡眠状態で保存されていた美少女が目を覚まし、そこから自然をコントロールしようとする人間のエゴと、自然と共存しようとする人々との争いがテーマとして描かれていく。

が、様々なところで書かれているように全編を通してどうも既視感が拭えない。科学技術によって自然を支配しようとする人間のエゴと、その反作用としての森の反抗。時間を越えて蘇る高度な技術を持った古代の文明。自然とどうかしてパワーアップし髪の毛の色を変えて飛び回る主人公。

アニメの世界にまったく新しい世界観を生み出した宮崎駿。その影響を受けて思春期を過ごし、アニメの世界に入ってきたであろう製作者達。しかし、宮崎アニメがかつて見せてくれたように、実写でなくてアニメだからこそ描けるファンタジーの世界の魅力である、「誰も見たことのない世界」というのが、とてつもない創造力が下敷きになっていたということを返って浮き彫りにしている。

建築の世界でもそうであるが、まったく新しいことを始めるのは確かに難しい。新しいことがいいのかどうか、それは別にして、誰も見たことのない新鮮な価値観を想像することは、まさに天才のひらめきが必要であろう。

それでも想像された新しい価値観の上の延長線上でも、何かを更新していくこと。やり続けることのその先にきっと何か新しいことがあるのだろうと信じていること。外から見れば、小手先のパクリや、真似事の様に見られても、自分の中で新しい何かを見ていればそれはそれでいいのだと思う。

が、その何かがこの物語の中に、この映像の中にあるのかと問われれば言葉に窮する。同じように建築を設計しても、一度完成すれば必ず社会性を持ってしまう建築物だけに、背間は好き勝手にものを言い始める。その時に同じように自分達の中で見えている何かを持っているかどうか、そのことに思いを馳せずにいられなくなる一作。

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スタッフ
監督 杉山慶一

キャスト(出演(声))
勝地涼 アギト(声)
宮崎あおい トゥーラ(声)
遠藤憲一 シュナック(声)
古手川祐子 ヨルダ(声)
大杉漣 アガシ(声)
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作品データ
原題 Origin Spirits of the past
製作年 2005年
製作国 日本
上映時間 95分
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